
「気になる10代名鑑」の1101人目は、tamakiさん(19)。布や糸、粘土など多様な素材を使い、やわらかさや安心感を大切にした立体作品を制作しています。将来は創作の道にとらわれずとも、安心感やワクワクを届ける存在でありたいと語るtamakiさんに、創作を始めたきっかけや印象的だった高校の卒業制作について詳しく聞いてみました。
Tamakiを知る5つの質問
Q1. いま、いちばん力を入れている活動は?
「武蔵野美術大学で彫刻を専攻しながら、自主制作では布や糸を使った立体作品もつくっています。
布や糸は編み物のような作品だけでなく、彫刻作品に取り入れることもあります。彫刻というと粘土や石を思い浮かべがちですが、いまでは『立体作品』という広い意味もあり、素材の自由度も大きいんです。
作品作りでは、枠にとらわれずに、いいなと感じるものを選ぶことを大切にしています。特に、布や糸は生活に身近で、肌に触れるものでもあるので、やわらかさや安心感があると思っていて。そこに惹かれて、自然と多く使うようになりました。粘土の造形力もうまく組み合わせながら、布の曖昧さも取り入れて、表現に取り組んでいます」
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Q2. 創作活動をはじめたきっかけは?
「小さいころからお絵かきや工作、裁縫など手を動かすことが好きでした。母が裁縫をしている姿が日常にあって、よく母の隣でフェルトを触ったり、いっしょに針仕事をしたりしていたんです。自分でも裁縫の本を借りてきて、いろいろ勉強していたけど、当時はどれも遊びの延長で楽しんでいました。
大きな転機は、美術系の高校に進んだこと。習い事の先生から、美術系の高校の存在を教えてもらい、あまり迷うことなく進路を決めました。学校の見学会で、生徒が彫刻作品を作る姿を見て、そのときから自然と彫刻にも惹かれはじめて。
『高校の3年間だけ好きなことをやろう』と思って入学しましたが、高校の仲間や先生と交流したりするうちに、美術にのめり込むようになりました。創作活動をはじめたきっかけとして、はっきりと『これだ!』というような瞬間はないけれど、小さな感動の積み重ねが、いまにつながっていると思います」
Q3. どんなことをテーマに活動をおこなっていますか?
「決まったテーマはなくて、その時々に感じる疑問や感動を作品にしています。自分を含めて、人は誰しも意地っぱりな部分や不合理さがあると思っていて、それが世界の問題から、小さな人間関係まで、ややこしくしていると思うんです。素直になれればいいけれど、それがいちばん難しいことも。
だからこそ、作品を通じて『こんな道もあるよ』と、新しい視点や考え方を伝えたいです。見る人に、わたしの制作意図や価値観を押しつけるのではなく、それぞれの解釈で受け取ってもらえる距離感や余白も大切にしています」
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Q4. 活動をしている中で、印象的だった出来事は?
「高校の卒業制作に取り組んだ1年間が、もっとも印象的な時間でした。布を使って『魚が群れをなして回遊する様子』を表現した作品は、群れを作って身を守ろうとする人間社会の姿とも重なり、自分自身にとっても大きなテーマになりました。
作品のゴールは、子どもが『遊んでみたい!』『楽しそう!』と思える作品にすること。でも当日、子どもだけでなく、同級生もキラキラした表情で作品と写真を撮ってくれて。その瞬間に、『このために作ったんだ』と感じました。高校に通った3年間、一貫したテーマや世界観を持てず悩むことも多かったけれど、みんなの笑顔を見て、一瞬にして苦労が報われたと思えたんです」
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Q5. 将来の展望は?
「具体的な夢はまだはっきりしていないけれど、好きなものや人に関わり続けたいと思っています。高校時代の仲間ともう一度展示をしてみたいし、最終的には個展も開いてみたいです。
卒業制作を見たひとたちがキラキラした表情を見せてくれたとき、『人を喜ばせることが私のゴールだ』と気づきました。これからも、世代や立場を問わず、見ていて楽しいと思ってもらえるような作品をつくりたいです。そして作品づくりに限らず、安心感やワクワクを届けられる存在であり続けたいなと思います」
tamaki のプロフィール
年齢:19歳
出身地:東京
所属:武蔵野美術大学 彫刻学科
趣味:散策、音楽を聴く
特技:絡まった紐を解く
大切にしている言葉:思い立ったが吉日
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Photo:Nanako Araie
Text:Mizuki Maeda