
世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は9月29日の「食料のロスと廃棄に関する啓発の国際デー」にちなみ、ブッフェレストランの食品ロスについてご紹介します。
9月29日は「食料のロスと廃棄に関する啓発の国際デー」
食べられるにも関わらず捨てられてしまう「食品ロス」。SDGsのターゲットのひとつであり、世界的に取り組まれている課題です。そこで毎年、9月29日を「食料のロスと廃棄に関する啓発の国際デー」とし、意識を向上させるための啓発活動が世界中でおこなわれています。
環境省の調査によると、昨年度、日本では家庭系約233万トン、事業系約231万トンの計約464万トンの食品ロスが発生したそうです。令和7年3月25日には、食品ロス削減推進法に基づいた「食品ロスの削減の推進に関する基本的な方針」が閣議決定され、2030年度までに2000年度比で家庭系では半減、事業系では60%を削減する目標が掲げられました。
家庭系はすでに目標を達成しているのですが、事業系ではもう一歩というところ。そんな中で、神奈川・横浜にある「ザ・カハラ・ホテル&リゾート 横浜」でおこなわれたユニークな食品ロス削減の取り組みをご紹介します。
ブッフェは楽しいけれど……残った食材の行方は?
「ザ・カハラ・ホテル&リゾート 横浜」は、ハワイ・ホノルルにある「ザ・カハラ・ホテル&リゾート」系列の高級ホテル。海を眺めながらの宿泊はもちろん、レストランやカフェの利用などもできる施設で、館内の「シェフズダイニングブッフェ」ではブッフェ料理が提供されています。
ブッフェ料理はその性質上、食べられる分以上の料理が用意されるため食品ロスが出がちです。同ホテルでは、食材管理や盛り付けの工夫でロスを出さないようにしていますが、それでも、多少のロスは出てしまうのだそう。
そこで、ブッフェで残った野菜や果物を、「よこはま動物園ズーラシア」のインドゾウやチンパンジーのおやつにする取り組みがおこなわれました。動物園の動物たちが高級ホテルのブッフェを食べるという素敵な取り組みについて、広報担当の旭岡さんに経緯を伺いました。
カハラ・ホテル&リゾート 横浜とよこはま動物園ズーラシアの取り組み
ホテルのある横浜市では、市によって積極的に食品ロス削減に向けた取り組みが進められています。
「横浜市から食品ロスに関するヒアリングを受け、その時に市内の動物園で餌として果物を利用していることや、夏のイベント計画を伺いました。ホテルが抱える食品ロス問題を解決する手がかりとして、地域での循環にお役にたてればと思い、『横浜市資源循環推進プラットフォーム』を通じて連携することを決めました」(旭岡さん)
提供するのは、よこはま夜の動物園「ナイトズーラシア」という夜の特別プログラムと、「ドリームナイト・アット・ザ・ズー」という、障害のある子どもたちとその家族を招いたイベント時。園への運搬の約1週間前から、ブッフェで残った野菜とフルーツを保管し始めました。しかし、動物とはいえ、傷んだ食品を提供するわけにはいきません。
「回収の際に日付を記したビニール袋へ1品ずつ保管して、動物が食べられる品質を保つようにしました」(旭岡さん)
保管された6kgのドラゴンフルーツやブドウなどは、暑い季節に冷たいおやつが楽しめるようにと氷漬けにされ、ズーラシアの動物たちに提供されました。
また、食品がホテルから動物園に届くまでのエピソードがパネル展示にされ、ブッフェ料理の残りであることも紹介されたそうです。いつもと違うおやつを食べた動物の感想は残念ながらわかりませんが、ズーラシアの担当者からは「分別の正確さに対して高い評価をいただき、今後もご一緒する機会があればとの言葉をいただいている」のだそう。
今後も、よこはま夜の動物園「ナイトズーラシア」や「ドリームナイト・アット・ザ・ズー」のようなイベントが開催される時には参加したいと考えている、と旭岡さん。
「多くのホテルや飲食店が同じ悩みを抱えていると思いますので、こうした取り組みが広がって、多くの食品ロス削減に繋げる事が出来ればと願っています。食品ロスだけではなく、一般廃棄物・産業廃棄物は全てリサイクル可能な時代。ゴミという表現ではなく、全てが資源であることを伝えていきたいです」(旭岡さん)
快適なサービスと、食品ロスの間を埋める取り組み
ブッフェレストランにおいて、食品ロスの削減は一見、達成が難しそうに思えます。しかし、適切なマッチングがおこなわれれば、ロスを減らせる可能性があることがイベントを通じてわかりました。今後の取り組みにも注目していきたいですね。
Text:Itsuki Tanaka