
「気になる10代名鑑」の1103人目は、大津里穂さん(16)。アフリカ・ルワンダでの留学経験をきっかけに、途上国への楽器寄贈や平和教育の普及、政策提言まで幅広く活動を続けています。NPOなどさまざまな機関と連携しながら、平和を“特別”にせず、日常で語れるものにしたいという大津さんに、活動のきっかけや実現したいことについて聞いてみました。
大津里穂を知る5つの質問
Q1.いま、力を入れていることは?
「音楽や芸術を使った平和文化の振興、政策提言など、幅広く平和活動に取り組んでいます。
これまで、ルワンダに楽器寄贈などの教育支援に携わったほか、NGO『アフリカ平和再建委員会(ARC)』でのインターンを通じて、楽器を必要とする開発途上国への支援をおこなってきました。
また、政策提言では、政党や省庁にアフリカや紛争地などをふくむ国内外各地への教育支援の必要性を訴えたり、地元の群馬県の『リバースメンター制度』を活用して、県知事に県民の平和意識向上を目指した提言をしたりしてきました。
わたしは、若い世代が実際に行動を起こすようにすることがなによりも大事だと思うんです。同世代、行政、専門家との関わりを通じて学びを深めながら、自分が平和構築のために何をすべきか考えている最中です」
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Q2.活動を始めたきっかけは?
「自分はもともと平和という言葉にはどうしても距離を感じてしまっていて……。自分の活動が偽善的と思われたくもないし、どうやって平和というあまりに大きなテーマに関わればいいのか、わからなかったんです。けれど、昨年2024年の夏に『トビタテ!留学JAPAN』という制度を使って、ルワンダを訪れたことで、考えが変わりました。
ルワンダでは、JICAが支援している小学校で学んだのですが、渡航前に楽器が不足しているという情報を聞きつけて。日本でリコーダーを集めて洗浄したのちに、楽器が不足しているという2つの小学校へ40人分近く寄付したんです。
自分にできることなんて限られていると思っていたけれど、楽器を寄付したところ現地の人に『愛してる!』とまで言ってもらえるくらい、喜んでもらえたのが嬉しくて。
『小さな行動でも、人や社会を変えられるんだ。自分にもできることがあるのだ』と実感できて、少しずつ平和のための行動ができるようになったんです」
Q3.活動で大切にしていることは?
「譲れない思いを持ちながら、柔軟であることを大切にしています。
小さい頃からたくさんの種類の楽器に親しんできたり、音楽にゆかりがあって。だからこそ自分は、芸術には人と人とが心を通わせる力があると思っています。なぜかというと、誰のことも阻害しないものだから。
一方で、平和や音楽をテーマに政策提言の活動を進めると、『優先度が低い』と理解を得られない場面もどうしても多くて。だからこそ、その思いを時間をかけて相手に丁寧に説明することを意識しています。それでだめなときは、諦めず直接連絡をすることもありますが……(笑)」
Q4.活動を通して、実現したいビジョンは?
「誰もがごく自然に、平和について語れる場所をつくりたいと思っています。
たとえばルワンダでは、ルワンダ虐殺という大きな出来事を経験していない若者のあいだで、平和式典への参加が減ってきてしまっているという課題があります。それは日本の構図にも共通するところがあると思っていて。だからこそ、みんなが親しんでいる音楽を通じて、平和を『特別なテーマ』ではなく、日常のなかで自然と登場するトピックにしたいんです。
実際に南米ベネズエラで始まった音楽教育を無償で受けられる『エル・システマ』のように、音楽が子どもたちの居場所になって、社会を変える力になった事例はあります。日本でも同じ可能性を模索しながら、平和文化を根づかせていきたいです」
Q5.将来の展望は?
「国の機関に関わって、民間では届かない領域に働きかけたいです。
これまで携わってきたNPOや草の根の活動は大切ですが、影響を与えられる範囲や持続性において、限界も感じていて。だから政策提言や制度設計に取り組み、社会の仕組みそのものを変えることも目指しています。大切なことは、行政、民間などさまざまな存在の限界を知って、それらの橋渡し役を担うことだと考えています。
自分にとって平和とは、国や人々が支え合い、子どもたちが安心して学び、夢を描ける空間のこと。
一人ひとりにできる行動はささいなものかもしれませんが、それが誰かに影響を与え、連鎖が広がり、少しずつ世界をより良い方向へ変えていく力になると信じて、アクションを続けたいです」
大津里穂のプロフィール
年齢:16歳
出身地:群馬県太田市
所属:ぐんま国際アカデミー高等部(IBDP生)
趣味:ダンス、バイオリン、ジャズピアノ、サックス
特技:体が丈夫なこと。ルワンダでの16日間の生活でも一度も体調を崩さなかった!
大切にしている言葉:究極の素人になる
大津里穂のSNS
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Photo:Nanako Araie
Text:Taishi Murakami