
― 誰かが、「日本は平和だから、若者が、政治に興味を持たずにすむ」とか⾔っていたらしい。でも、政治は未来の国を良くするためにあるのなら、きっとホントは僕らのもの。なんでもいいから、興味を持とう。政治の話はそれからだ。
政治をポップに発信していく連載企画「政治POPS.」。フリーライターの中村眞大がナビゲーターとなり、10代の皆さんを楽しくわかりやすい政治の世界へと誘います。今回は、この春にオープンしたばかりの「民主主義博物館」をご紹介。一体どんな博物館なのか?裏話も含めてお伝えしちゃいます!!
黄色いタコがお出迎え!民主主義博物館に行ってみた。
渋谷から東急線に揺られて15分。多摩川駅の改札を抜ければ、目の前にせせらぎ公園という大きな公園がある。子どもや犬がキャンキャン遊んでいるのを横目に住宅街を進むと、やがて現れるのが「民主主義博物館」だ。ちょっと堅苦しい名前だけど、どんな博物館なのか。
テーマカラーの山吹色が目立つ館内に入ると、同じく山吹色のタコのぬいぐるみが僕たちをお出迎えしてくれる。
政治や社会への参加が低迷する日本。
でも実は学ぶ機会がなかっただけで、
興味はあるかもしれない。
そんな書き出しから始まる「ごあいさつ」を読んだ後は、政治や社会問題にまつわるいろんなワードが学べる「単語カード」のコーナー。「民主主義とは?」「保守とは?」「政治家って普段何してるの?」……。聞いたことはあるけど、意外と知らない言葉たちが壁一面に並んでいる。しかも、自分からカードをめくって裏面に書いてある答えを読む形になっているから、自分から学びを獲得しに行ってる感があって楽しい。

カードで基礎知識を身に着けた後は、芝生エリアで寝ころびながら映像を観れるコーナーも。
学校じゃ教えてくれない社会の変え方がここにある
と、ここまでそれっぽ~い感じで始めてみたけれど、実はこれを書いている僕がこの博物館をつくった張本人のひとりだ。
民主主義博物館は、日本若者協議会という若者団体が「政治」や「民主主義」について気軽に学べる場所をつくろうと立ち上げた日本初の博物館で、今年の4月にオープンした。

ぜひみなさんのご意見も残してほしい。
それまでは「若者の声を政治家に届けよう!」と、いろんな政党を回ったり、政治について気軽に語り合える「民主主義ユースフェスティバル」というフェスを開催したりしていたのだけど、若者と政治の距離はなかなか縮まらなかった。それもそのはずで、日本の学校の多くは、「参議院の定数」とかを暗記する授業はやるけれど、具体的な政治の話や社会の変え方までは教えてくれず、どこか「触れちゃいけない話題」的なイメージが強いのだ。
「やっぱり普段から政治について楽しく学べる場所を作りたい!」と思っていた矢先、若者協議会のメンバーが訪れた台湾で、民主主義博物館につながるヒントが見つかった。
ペンキもタイルも!手作りすぎる博物館の誕生秘話
世界で唯一の「生理」について取り扱っている博物館だ。どんな性別の人にとっても知っておきたい生理の話。でも正直、日本でも台湾でも、まだまだ触れづらいテーマなのは間違いない。そんな生理について、月経博物館では、可愛くておしゃれなデザインで展示している。

台湾にある「小紅厝月経《しょうこうさくげっけい》博物館」
「これを日本でもやりたい!」。日本若者協議会の室橋代表は、同じくタブー視されていて、団体がずっと取り組んできたテーマでもある「政治」「民主主義」に置き換えて、博物館を作ることにした。
とは言え、当たり前に誰も博物館なんて作ったこともないし、お金も全然ない。そんななかで、建設費を極限まで削って、いろんな博物館を参考に見よう見まねで作り上げたのが、この民主主義博物館だ。名前については、いろんなアイデアが出たけれど、「民主主義」にもっと親しみをもってほしいという願いも込めて、あえてド直球「民主主義博物館」にした。

英語では”Democracy Museum”
さすがに、ロゴや展示デザインの部分は、プロのデザイナーさんにお願いしたけれど、それ以外は全部若者協議会の手作りだ。展示内容はもちろんのこと、天井のペンキも、床のタイルも、トイレの壁紙も全部自分たちでやった。でも、その手作り感を逆にいいねと言ってくれる人もいて嬉しい。

開館準備の様子
こうしてなんとか開館してから、老若男女幅広い世代が訪れている。記事で読んだという人もいれば、友達に教えてもらったという人もいる。最初は「怪しい組織のアジトなんじゃないか…」と様子をうかがっていた近所の人たちも何人も来てくれた。来館者が途絶えてちょっと寂しい時間帯もあるけど、炎上して一気に知名度が上がるよりも、口コミでじわじわと広がっていけたらいいなと思っている。
いつでも来れる、政治をゆる〜く学ぶ場所
受付に座っていると、「なんで山吹色なんですか?」「なんでタコがいるんですか?」とよく聞かれるけど、あんまり深い意味はない。山吹色は、特定の政党のカラーとして使われていないカワイイ色という消去法だし、タコのぬいぐるみに至っては、本棚を買いに行ったIKEAで、メンバーの一人が一目惚れして買ってきただけだ。でも、そんなゆる~い雰囲気で運営されているからこそ、政治や民主主義という堅苦しいテーマについても、安心して気軽に学ぶことができるのだ。
社会になんとなくモヤモヤしてるなら、政治について知りたいけどどうしたら良いかわからないなら、ぜひ民主主義博物館に遊びに来てほしい。一人でじっくり展示を眺めても良いし、友達とワイワイおしゃべりしながら見ても良い。

さまざまな展示がある
この国の歴史をつくってきたのは、総理大臣やノーベル賞を獲った人だけじゃない。民主主義を使いこなして社会を変えてきた名もなき人々だ。あなたが歴史をつくる……ほど大げさじゃなくても良いけど、少なくとも何かにつながる新しい発見を得られることは間違いない✨
「政治POPS.」はまだまだ続きます!お楽しみに~!

ぜひ一度訪れてほしい。
今回訪れたのは…
民主主義博物館
〒145-0071 東京都大田区田園調布1丁目35−9
開館日:水曜日・金曜日13:00〜20:00、土曜日・日曜日10:00〜19:00
入館料:学生:無料、社会人:500円