Steenz Breaking News

「ひとり全役」で映画を吹き替え。アフリカで愛されるビデオジョッキーの仕事とは【Steenz Breaking News】

「ひとり全役」で映画を吹き替え。アフリカで愛されるビデオジョッキーの仕事とは【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、アフリカの独特な映画の楽しみ方について紹介します。

アフリカの漫画喫茶?

日本で映画館と言えば、大人から子どもまで気軽に楽しめるもの。筆者の住むウガンダでは、首都のショッピングモールに行けば映画館がありますが、チケットは700円〜1200円ほどで富裕層向けです。

そこで、庶民がどう映画を楽しむかというと、街中のあらゆる場所にあるレンタルDVD屋です。ウガンダにはたくさんのレンタルDVD屋があり、誰もが知るハリウッドの名作から中国映画やインド映画、アフリカの映画、世界で話題の最新作まで取り扱っています。アクションやコメディ、ホラー、アニメまで、種類もさまざまです。

レンタル料は、日本円にして40円ほど。家に持ち帰ることもできますが、パソコンが備え付けられていてその場で映画を鑑賞できる店が多く、日本の「漫画喫茶」のような感覚で楽しめます。

億万長者も夢じゃない「ビデオジョッキー」の仕事とは

取り扱われる映画のほとんどは現地語の音声で訳されていますが、いわゆる「吹き替え版」とはまた異なります。ウガンダには、世界中の映画を現地語に翻訳するビデオジョッキー(以下VJ)と呼ばれる職業があるのですが、なんとVJは、声のトーンを変えながら、映画に出てくる役の全員をひとりで演じるのです。

中国映画やインド映画では、VJがその言語を理解しているとは限らず、適当なアフレコをしていることもあります。そのため、役者が話してないときにすら音声が入っていたり、明らかに映画の内容と異なる音声が入っていたりとユニークさが満載なのです。

ときには、沈黙が恐怖を際立たせるホラー映画でVJが喋りすぎたり、独自の解説をしてしまったりと、やりたい放題な作品と出会えることも。

VJによって翻訳・アフレコされた映画が人気のウガンダには、VJの収録を専門におこなう会社もあります。また、人気のVJには、日本でいう芸能人やインフルエンサーのようにたくさんのファンがおり、莫大な資産を持つミリオネアとしても知られる人もいるそうです。

さらに、41種類の言語が話されるウガンダでは、地方の民族言語で翻訳するVJもいます。たとえば、ウガンダ東部出身のVJのEmmanuel は、彼の民族言語であるテソ語で映画を翻訳しています。

ウガンダの公用語はルガンダ語と英語で、英語を母語とするウガンダ人も多くいますが、VJが翻訳した映画を目当てに、あえてルガンダ語で映画を鑑賞する人もいるほど。筆者もこれらの映画を鑑賞したことがありますが、ひとりで全ての役を演じることで躍動感が増して、たしかに面白い!

世界中の映画を、ウガンダのどこからでも鑑賞できるように翻訳し、ひとりで何役もこなすVJ。オリジナリティが問われるユニークな仕事です。アフリカは娯楽のひとつをとっても文化の違いが見られて、興味深いですね。

References:
Ethnologue「Uganda」

Text:Hao Kanayama

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Hao Kanayama

ライター

16歳、初アフリカ大陸上陸。19歳、アフリカ10か国放浪。20歳、ウガンダ移住。ウガンダの現地の会社とNGOの職員として、ストリートチルドレン、シングルマザー、薬物中毒者、孤児の支援を行う。不条理で不都合な世界だけど、その先にある希望を求めて歩き続ける、アフリカの人々の暮らしをわたしの目線から伝え続けたい。少数民族と木登りとテクノがスキ。

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