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生成AIでゲームはもっとおもしろくなる? ゲーム業界のAI活用に注目【Steenz Breaking News】

生成AIでゲームはもっとおもしろくなる? ゲーム業界のAI活用に注目【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、いまゲーム業界に起こっている生成AI活用の波についてご紹介します。

急速に存在感を増している生成AI

昨今、社会の中で急速に存在感を高めている生成AI。分からないことを質問したり、文章の作成を補助してもらったり、理想の音楽やイラスト、動画を作ったりと、日頃から活用している方も多いかもしれません。


総務省の『令和7年版 情報通信白書』によると、日本で「何らかの生成AIサービスを使ったことがある・使っている」と答えた人の割合は、2023年度調査では9.1%だったのに対し、2024年度の調査では26.7%に増加していたことが明らかになりました。さらに、2024年には20代の44.7%が生成AIを使っているとのデータもあり、若い世代を中心に、生成AIが仕事や生活に欠かせない存在となりつつあります。

AI活用の波は、ゲーム業界にも

そうしたAI活用の波は、ゲーム業界にも広がりを見せています。

今年7月22日から24日にかけて、パシフィコ横浜で開催されたゲーム開発者向けの大規模カンファレンス『CEDEC2025』では、AI活用をテーマとした講演が多数おこなわれました。

業務効率化の文脈では、大手ゲーム会社のセガが、ローカルLLM(※1)を使ったツールを開発。オンラインゲームのチャット機能などでプレイヤーの不適切な発言がないかどうかをチェックしたり、ローカライズ(※2)作業でセリフ字幕と音声が一致しているかを確認したりする際にAIを使っているといいます。

モバイルゲームの開発に強みを持つコロプラでも、AI活用を積極的に推進しています。生成AIツールを利用する際の料金を福利厚生で補助しているほか、AI活用を推進する専門部署を設置し、知識・理解を深めるための研修なども開催。結果としてAI活用率が2025年4月、約80%に達したことが社内アンケートで分かったそうです。

※1:自社のPCやサーバー上でのみ使える大規模言語モデルのこと
※2:ある国の言語や文化に基づいて作られたゲームを他の国や地域で提供する際、その国の言語や文化、習慣などに合わせてゲーム内容を調整すること

AIを使ってつくられたゲームも登場

生成AIをゲームづくりのさまざまな工程で活用する開発者も増えてきました。

例えば、大手ゲーム会社のカプコンでは、ゲームの世界に登場するポスターやステッカーなどの造形を制作する際、アイディア出しにGoogleの生成AI「Gemini」や画像生成AI「Imagen 2」を活用しているそう。

また、PCゲームの配信プラットフォーム「Steam」では、生成AIを活用して作られたゲームの配信が2025年7月時点ですでに7000個を超えているといいます。Steamで配信されているゲームでは、コンセプトアートやプロモーションアートなど、ゲームを彩る一部の画像に生成AIでつくり出したものを活用しているケースが多かったようです。また、生成AIを使って音声を合成したり、プレイ中のさまざまなシーンやアクションに関するコメントをAIがリアルタイムに生成してくれたりするタイトルもあったそう。

大手ゲーム会社から小規模なゲーム開発者まで多様な関係者が、よりおもしろいゲームを提供するために生成AIを活用する姿が浮かび上がりました。

ゲームシステムに生成AIを組み込んだ作品も話題!

さらに今年は、ゲームの仕組みの中に生成AIを組み込んだ作品もリリースされ、ゲームファンを中心に話題を集めています。

いま大きな注目を集めているのが、5月7日にリリースされたスマートフォン&PC向けゲーム『神魔狩りのツクヨミ(以下、神ツク)』。先述のコロプラが開発したタイトルで、ゲームの仕組みの中に画像生成AIを活用しています。

『神ツク』は、タワーマンションのようなダンジョンを探索しながら、魔物のような敵をカードバトルで倒していくローグライクゲーム(※3)。バトルで使用するカードのイラスト作成に画像生成AIを活用し、プレイヤーがゲーム内でとった行動をもとに、オリジナルのカードイラストができあがります。

この作品は『真・女神転生』や『ペルソナ』シリーズに携わってきたゲームクリエイターの金子一馬さんが世界観の設計やキャラクターデザインなどに携わっており、金子さんの絵を画像生成AIに学習させることで、ゲーム内でまるで金子さんが描いたかのようなイラストを自動生成させています。

自分だけのオリジナルなカードが手に入るほか、プレイヤー同士でお互いに生成したイラストを評価し合う仕組みも導入。これまでにないゲーム体験に、2025年8月時点でAppleのアプリストアでは「★4.7」、Googleアプリストアでは「★4.4」と、多くのプレイヤーから支持を集める作品となっています。

※3:決められたマップがなく、プレイするごとにゲームのアルゴリズムによってマップが自動生成されるゲームジャンルのこと。

生成AIでゲームの未来が変わる?

ゲーム業界で活発化しているAI活用の動き。ゲーム開発をおこなう各社がAI活用を進める部署などを設置し始めるなど、AI活用の流れは今後も止まることなく、さらに深まっていくものと思われます。

ゲーム開発やゲームの中の仕組みそのものに生成AIを活用することには、ゲームファンや専門家などの間で賛否両論がありますが、工夫とアイディア次第で、さらにおもしろいゲームや全く新しい体験をつくり出すことにもつながるのではないでしょうか。

生成AIが大きな進化を遂げたことで、高精細な画像・映像処理なども可能になったことから、最近ではVRやウェアラブルカメラなどの分野も進化しつつあります。こうした技術がさらに進歩すれば、現実世界と地続きになったゲームの世界を楽しめるなど、まだ誰も見たことのない遊びが生まれてくるかもしれません。ゲーム業界のAI活用の動向に、今後も注目必至です。

Text:Teruko Ichioka

References:
総務省『令和7年版 情報通信白書』

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Teruko Ichioka

ライター・編集

フリーライター。好奇心の強さは誰にも負けない平成生まれ。得意領域もスタートアップ、ビジネス、アイドルと振れ幅が広い。

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