
世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする、「Steenz Breaking News」。今日は、水リスクが及ぼす世界遺産への影響についてご紹介します。
増え続ける水に関する災害やリスク
世界的に、自然災害が増加傾向にある昨今。とくに、水に関する災害が増えています。世界気象機関(WMO)によると、1970年以降は洪水や干ばつ、暴風雨など、水災害が世界の主要災害の90%以上を占めているとのこと。被害も大きく、これまでに200万人以上の死者と、3.6兆米ドル以上の経済損失が出ていることもわかっています。
この問題は日本も例外ではありません。例えば、2025年8月に起きた九州地方の記録的な大雨では、土砂崩れや川の氾濫などが発生。各地で甚大な被害が出ているとして、内閣府は今回の大雨を「激甚災害」に指定する方針を発表しました。
世界遺産の4分の3近くが水リスクの危機に直面
水不足や水質の汚染、洪水など水に関する問題で影響を受ける可能性があることを「水リスク」といいます。経済的および人的被害を及ぼすといわれていますが、。近年はその他の分野にも猛威をふるっているようです。なかでも問題視されているのが、「世界遺産への被害」です。世界資源研究所(WRI)の「Aquaduct」データによると、地球上にある73%の世界遺産が、少なくともひとつの水関連災害に、21%は複数のリスクに直面していることが明らかになっています。
具体的にどのようなリスクを抱えているかというと、水需要のひっぱくによる「水ストレス」は40%、干ばつが37%、河川の洪水が33%、沿岸の洪水が4%だそうです。地域で見てみると、中東や北アフリカ、南アジアの一部、中国北部などの影響が顕著になっています。これらの土地では、河川規制やダムの建設など大規模なインフラ開発がおこなわれることが多く、気候変動の深刻化に拍車をかけているのです。
また、高レベル〜極めて高いレベルの水ストレスにさらされている世界遺産の割合は、2050年までに40%から44%に増加する、とも予想されています。
実際にどのような被害が発生しているのか
ここからは、実際に世界遺産にどのような被害が起きたのかを見ていきましょう。
https://www.nps.gov/nps-audiovideo/audiovideo/6c5f5741-1930-4ff6-9740-f24e571e4501720p.mp4
アメリカ合衆国にあるイエローストーン国立公園では、2022年6月に大量の雨が降り大規模な洪水、岩盤崩落、土砂崩れなどが発生しました。道路や下水道管など園内のインフラにも重大な被害を及ぼし、2,000万ドル以上の修理費がかかったそうです。
その他にも、タイでは、2011年の9月に発生した豪雨と長雨の影響によりアユタヤなどで大規模な洪水が発生。世界遺産リストに登録されていたアユタヤ遺跡群も広範囲にわたり浸水しました。
南アフリカに位置するモシ・オ・トゥニャ/ビクトリアの滝は、膨大な水が落下する様子が圧巻なことで知られていますが、2016年や2019年、2024年に干ばつが発生。加えて、本来であれば10月に始まる雨季が年々遅くなっているそうです。この滝は、観光産業の安定に欠かせない存在であるため、干ばつが長引くほど経済や農業、人々への影響が大きくなると心配されています。
世界遺産を守るために、わたしたちには何ができる?
洪水や干ばつなど、世界で起きている水災害。その原因のひとつが気候変動であり、人為的要因で加速していると考えられています。そのため、わたしたちが環境配慮型の製品を選んだりマイボトルを持ち歩いたりするなど、小さなアクションを積み重ねることで気候変動を抑制できる可能性もあるのです。先人が残した価値ある遺産を次世代へ残すために、自分にできることを考えてみましょう。
Reference:
Nearly Three-Quarters of World Heritage Sites Are at High Risk from Water-Related Hazards|unesco
Growing Water Risks Threaten World’s Most Cherished Heritage Sites|WORLD RESOURCES INSTITUTE
Flood Recovery & Operations|Yellowstone National Park
【大雨被害】九州で1人死亡 2人が心肺停止 住宅浸水も|NHK
水に関する環境・経済統合勘定の推計作業報告書|経済社会総合研究所
加速する気候変動 私たちの未来のために今できること|ecojin|環境省
タイ・アユタヤ遺跡群における洪水被害調査|東京文化財研究所
Text:Yuki Tsuruda