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モザンビークで反政府武装組織が120人の子どもを誘拐。 子ども兵はなぜなくならない?【Steenz Breaking News】

モザンビークで反政府武装組織が120人の子どもを誘拐。 子ども兵はなぜなくならない?【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、モザンビークで子どもが武装勢力によって誘拐され、子ども兵となっている実情について紹介します。

武器をもつ5歳の子ども兵

アフリカ南東部に位置し、インド洋に面する国、モザンビーク。人口は約3500万人で、約40の民族が存在する多民族国家です。

2017年から同国では、アル・シャバブ(ソマリアのアル・シャバブとは別組織)またはアンサール・アル・スナと呼ばれる反政府武装組織による攻撃が続いています。

イスラム過激派組織のひとつであるアル・シャバブ。無差別攻撃や住民への殺害や暴行に加え、子どもを誘拐し、子ども兵として利用していることで問題となっています。国際人権団体のヒューマン・ライツ・ウォッチは2025年6月、数日間で120人以上の少年少女がアル・シャバブによって誘拐されたと報告しました。彼らは戦闘に参加する以外に強制労働や強制結婚、性的虐待などの被害者になっています。

過去にもモザンビークでは、13歳の少年が村や住民を攻撃したり、5歳の子どもが武器を扱っていたりするところが目撃されているといいます。

モザンビークは法律や条約において、子どもの拉致や搾取を禁止しており、2004年に批准した国連選択議定書においても、非国家武装グループが18歳未満の子どもを募集または使用することを禁止しています。

しかし、子どもは従順で洗脳しやすいといった理由から、攻撃した村などから誘拐して、戦争の道具として利用しているのです。仮に、子ども兵が脱走や支援団体の救助で武装組織を逃れられたとしても、元子ども兵のための医療や心理社会的支援といったリソースは不足しており、今まで通りの生活に戻るのは困難だといわれています。

政治への不満を暴力に変える組織

実はモザンビークで活動している反政府武装組織はアル・シャバブだけではありません。そもそもなぜモザンビークでは、多くの反政府武装組織の活動が活発なのでしょうか。

その理由として、国民の現政権への不満が挙げられます。モザンビークでは現在、ポルトガルからの独立解放闘争を率いたモザンビーク解放戦線(FRELIMO)が与党として政権の座を握っています。しかし、1977年からFRELIMOと野党第一党の反政府組織モザンビーク民族抵抗運動(RENAMO)の間で衝突し、16年間内戦となりました。

さらに、人口の46%以上の人々が国の貧困ラインを下回る生活をしており、国民の政府に対する不満は募っています。

そこで、アル・シャバブといった反政府武装組織は、反与党FRELIMO政権の人々を動員し、「彼らは南(およびキリスト教徒)の利益のために北(およびイスラム教徒)の資源を盗んでいる」と主張しているのだそうです。

また、モザンビークでは2000年代から希少鉱物や天然ガスの採掘がさかんになりましたが、外国企業や一部の政府の人にのみ富を生み出していることも不満の原因になっています。実際に2021年には、フランスのエネルギー企業が開発を進める天然ガス事業地に近い町が、武装勢力に襲撃されました。

これは他の国でも見られることですが、豊富な資源は、紛争の火種となってしまうこともあるのです。

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の発表によると、モザンビークでは武装勢力の襲撃により、約70万人が国内避難民となっています。武装勢力の解体には、戦闘員が安全に抜け出し社会に統合できる訓練をしたり、子ども兵に対しても心理的なケアを施したりと長期的なプロセスが求められます。しかし、いまでも多くの命が犠牲となっており、今後の政府の対応と情勢に注目したいです。

References:
Worldometer「Mozambique Population」
CMI「Poorly designed youth employment programmes will boost the insurgency in Mozambique」
HUMAN RIGHTS WATCH「Mozambique: Armed Group’s Child Abductions Surge in North」
Reliefweb「Mozambique: ISIS-linked Group Using Child Soldiers」
UNHCR「UNHCR: New displacement and funding squeeze intensify Mozambique crisis」

Text:Hao Kanayama

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Hao Kanayama

ライター

16歳、初アフリカ大陸上陸。19歳、アフリカ10か国放浪。20歳、ウガンダ移住。ウガンダの現地の会社とNGOの職員として、ストリートチルドレン、シングルマザー、薬物中毒者、孤児の支援を行う。不条理で不都合な世界だけど、その先にある希望を求めて歩き続ける、アフリカの人々の暮らしをわたしの目線から伝え続けたい。少数民族と木登りとテクノがスキ。

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