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人口減少すると生物多様性も減る⁉︎ ビッグデータがもたらしたおどろきの調査結果を見てみよう【Steenz Breaking News】

人口減少すると生物多様性も減る⁉︎ ビッグデータがもたらしたおどろきの調査結果を見てみよう【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、人口減少と生物多様性に関する調査についてご紹介します。

人が減ったインパクトは人間社会だけのものじゃない

日本の社会問題の代表的なものとして、人口減少が挙げられます。人口が減少することにより、働き手が不足し公共サービスやインフラの維持が困難になったり、消費者が減少することで経済が縮小したりと、さまざまな問題が引き起こされます。

そのような中で、人口減少によって生物多様性にも影響が出るのではないかという調査研究の結果が、東京都市大学、英国シェフィールド大学、公益財団法人 日本自然保護協会(NACS-J)、近畿大学の研究グループにより発表されました。

人口が減少すれば、生物多様性は増加しそうなもの。従来は、人間の活動によって自然が破壊され、生物多様性が減少すると考えられてきました。実際に、1970年以降、世界の野生生物の73%が失われたとされています。ですが、今では逆に生物多様性が減少すると言われているのはなぜなのか、見ていきましょう。

そもそも里地・里山ってなんだっけ?

今回の調査研究で扱われた場所は、日本全国158地点の里地・里山です。里地・里山とは、自然度の高い森や山と、都市の中間に位置する地域のことです。人の住む集落や、それを取り巻いている農地、ため池などを里地、それに草原や雑木林を加えたエリアを里山と呼ぶことが多くなっています。

童謡に歌われる情景といったらわかりやすいでしょうか。「ふるさと」や「赤とんぼ」といった歌には多くの生き物が登場し、それらが身近であったことがわかります。

人口減少が生物多様性にもたらす影響とは

これまで、世界の人口増加に伴い、生物が多く生息している場所の生物数が減少しているという調査結果が多く報告されてきました。しかし、日本においては、人口減少が進んでいるものの、人口の空間的・時間的変動と生物多様性の関係を詳細に調査して分析した研究は不足しているのだそう。

そのため、今回、生物多様性と人口動態に関する大規模なデータセットが統合され、地域ごとの人口、土地利用、地表温度の変動とともに、生物多様性の変化(種の豊富さ・個体数)が、ビッグデータとして分析されました。それによると、現時点では、日本の人口減少は種の豊富さや個体数の増加につながっていないことが明らかになったのです。特に鳥類とチョウ類では、人口減少している地域で個体数が減っていることがわかりました。

田んぼや畑はもちろん、あぜ道や用水路、雑木林といった里地・里山の環境維持は、数百年もの間、そこに住む人によって行われてきた営みです。長い年月の間に、その環境に生き物たちが馴染み、人が管理するスケジュールを織り込んだ生き方をするようになり、多様性を育んでいっていたと考えられます。

そのため、人口減少地域であっても都市的な土地利用をする開発が続いていたり、管理放棄され草地や農地が森林化したりした結果、生物の個体数が減少したのではと推察されています。

共に生きる場所が減っていく。人口減少は人間社会だけの問題じゃなかった!

多くの生き物と共生ができていた里地や里山。人口減少により、その関係が崩れれば、生物多様性が減少する可能性があるという研究結果でした。これは日本だけではなく、東アジアの水田農業地帯でも、人口減少と土地利用の変化が起これば同じような減少が起きると考えられ、重要な視点となります。

里地や里山には所有者がいるために、すぐに解決する問題ではありません。しかし、ネイチャーポジティブな社会の実現に向けては、まず、多くの人と問題意識を共有することが大切になっていくでしょう。

Reference:
環境省自然環境局 里地里山の保全・活用
Nature Sustainability Biodiversity change under human depopulation in Japan

Text:Itsuki Tanaka

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Itsuki Tanaka

ライター

フリーランスのライター。食、農、環境領域 /博物館好き/コーヒー、アイス、チョコも好き。

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