
世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、トランプ氏のある発言をきっかけに注目を集めた西アフリカの国、リベリアについて紹介します。
アメリカと深い関わりを持つアフリカの国
2025年7月、トランプ米大統領がアフリカ各国と首脳会談をした際、リベリアのボアカイ大統領の英語を賞賛する発言をしました。しかし、リベリアの建国の歴史にはアメリカが深く関わっており、公用語は英語。のちの報道によると、ボアカイ大統領は「気分を害してはいない」そうですが、トランプ氏の発言には波紋が広がっています。
この投稿をInstagramで見る
リベリアは西アフリカに位置し、国境をギニアとシエラレオネ、コートジボワールと接しています。日本の約3分の1の面積に、約530万人が住む国です。19世紀後半、イギリスやフランス、ドイツなどの列強国がアフリカの国々を植民地化する中で、リベリアは1847年の独立以降、植民地にならなかった国でもあります。それには独特な歴史が関係しています。
アメリカで奴隷制度の廃止を訴える声が徐々に広まっていた1800年代初頭、奴隷にされていたアフリカにルーツを持つ人々を、アフリカに送還する動きがはじまりました。リベリアは当時、ヨーロッパの主要な貿易ルートではなく、ヨーロッパ勢力が領有権を主張していなかったことから、彼らの送還先として選ばれました。
この投稿をInstagramで見る
1822年、米国政府の支援を受けたアメリカ植民地協会によって、奴隷から解放された人々がリベリアに到着。その後40年間にわたって、12000人以上が送還されました。1824年には、移住開始当時のアメリカ大統領ジェームズ・モンローに由来して、首都がモロンビアと名付けられました。
この投稿をInstagramで見る
1847年には解放奴隷の入植者が主権を宣言し、リベリア共和国を建国しました。しかし、彼らがアフリカにルーツを持つとはいっても、多くの人々にとってリベリアは「故郷」とはならず、慣れない土地での生活や病気に苦しむことになります。また、入植者に与えられた特権や経済格差などが原因で、先住民族との間には分断が生じていました。
残虐な行為の記録も残る内戦
1980年、先住民族のサミュエル・ドウ率いる武装集団がクーデターを起こし、大統領を暗殺して国家元首に就任しました。平等を求めたうえでの政権の剥奪であったはずが、ドウ政権は一部の民族に権力を握らせ、対立はさらに深まります。1989年から2003年にはさまざまな指導者が権力を狙ってリベリア戦争が勃発し、20万人以上が命を落としました。
内戦の間は多くの子ども兵が生まれました。報道や証言によると、子どもを含む兵士の薬物乱用、儀式として人が人の体を食べる行為や、「子どもの血を飲むと死なない」という迷信によって多くの子どもが殺されるなどの残虐な行為もあったと言われています。
アフリカ初の女性大統領が誕生
2003年にようやく平和が戻り、2005年には紛争後初の選挙が行われ、アフリカで初の女性大統領となるエレン・ジョンソン・サーリーフが選出されました。
サーリーフ氏はアメリカのハーバード大学で学んだ後、リベリアの財務相に就任。ドウ軍事政権を批判したことで投獄されましたが、アメリカに亡命し、1992年から1997年までは国連開発計画アフリカ局長を務めました。帰国後に大統領に選出された後は、紛争後のリベリアで平和と経済発展、女性のエンパワーメントのために尽力し、2011年にノーベル平和賞を受賞しました。
この投稿をInstagramで見る
現在のリベリアはというと、アフリカ中北部から移住した先住民族と西アフリカからの民族、アメリカからの黒人移民という3つの主要民族を含む16の民族で構成されています。宗教の85%はキリスト教ですが、イスラム教徒や神学を信仰する人もいます。
主要産業は農業で、米や、タピオカの原料であるキャッサバ、野菜などが栽培されています。また、豊かな熱帯雨林を持つリベリアでは、ゴムの生産がさかんです。輸出収入の大多数を占めており、「ブリヂストン」など日本の企業も進出しています。
この投稿をInstagramで見る
内戦を乗り越え、現在は少しずつ平和を取り戻しつつあるリベリア。解放奴隷の移住地であるなど、独特な歴史と文化をもつリベリアについて、皆さんも調べてみてはいかがでしょうか。
References:
外務省「リベリア共和国」
Office of the Historian「Founding of Liberia, 1847」
Africa Rebirth「How the Repatriation of Freed African-American Slaves Led to the Creation of Liberia」
United Nations「Ellen Johnson Sirleaf」
Britannica「Liberia」
Text:Hao Kanayama