Fashion&Culture

僕らにとっての「東京」、ってなんだったっけ。 故郷の田舎へ。【Unraveling the paradigm of Tokyoism】

僕らにとっての「東京」、ってなんだったっけ。 故郷の田舎へ。【Unraveling the paradigm of Tokyoism】

東京を代表するファッション団体Keio Fashion Creatorが、“未完成であること”そのものを肯定する、新しい都市感覚をテーマに東京をファッションで再解釈する新たな試み「Unraveling the paradigm of Tokyoism」。

第二回は、忘れられない記憶、自分のルーツに還る僕たちにとっての「田舎」。

昔からこの場所が嫌いだった。

退屈で、皆がレールに沿って進むことを求められる、絶対的な「正解」が決められた人生。少しでもズレると、たちまち向けられる冷たい視線の矢に射抜かれた。

不良品として取り除かれる前のライン部品のような自分。ここを離れたら、こんな気持ちからも解放される。そう思って、上京した。1年半が流れ、生活にもようやく慣れてきたところに、家族から連絡が来た。

久し振りに地元に帰ることにした。

ピンクのタイトトップス、軽やかに揺れる青のギンガムチェックスカート、そして足元には情熱的な赤のハイヒールパンプス。さらに、パステル調のポップな色使いが、表情をいきいきと彩るメイクアップ。

東京の喧騒を離れ、懐かしい故郷の地に足を踏み入れた瞬間、記憶の風景とともに、この装いがひときわ鮮やかな輝きを放ち始める。それは、忙しい日々の中で忘れかけていた童心を思い出す、鮮烈なトリガーだ。

全身から喜びがあふれるようなこのスタイリングには、都会ではつい置き去りにしてしまう「好きな自分」を純粋に表現する力強さがある。見慣れた風景が続くいつもの街、変わらない笑顔で迎えてくれる笑顔の幼馴染、ふらりと立ち寄るいつもの駄菓子屋の懐かしい佇まい。

長らく会っていなかった家族は温かくて、家から出たくなかったし、卒業ぶりに会った友だちと昔みたいにくだらない事をして、遅くまで公園に長居した。

ずっと近くにあったんだ。気付かなかった。気付けなかった。

離れて初めてこの街の星空がこんなにも綺麗だったのだと知った。

この、計算されたわけではない、ありのままの自分を楽しむ装いこそ、故郷というフィルターを通して、より一層その魅力を増し、見る人の心にカラフルな刺激を与えるルックになる。

ずっと嫌って、遠ざけていたこの街が、今日ほんの少しだけ愛しくなった。

Keio Fashion Creator プロフィール

2002年設立の服飾学生団体。ESMOD JAPONと提携し、服作りを学びながら毎年テーマに沿ったファッションショーを企画・運営。2012年からはインターカレッジ化し、約200名の学生が衣装制作から広報までを担当。「服」を通じて思考を表現し、社会に発信することを目指している。

昨年度のショーテーマは「愛」。

12月25日に東京タワー麓のSTAR RISE TOWERで「How to Dress LOVE?」を開催し、44体のルックを発表。各デザイナーが自身のルーツをもとに、目に見えない「愛」を服で表現し、装いを通じてその形を探求した。

【関連リンク】
Instagram:@keio_fashioncreator
X:@keio_fc
note:https://note.com/k_fashioncreator
HP:https://keiofashioncreator.com/

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Steenz編集部

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