
世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、シンガポールにある統合型リゾート「マリーナベイ・サンズ」のサステナブルな取り組みについてご紹介します。
インフィニティプールが大人気! 「マリーナベイ・サンズ」でのサステナブルな取り組みをチェック!
シンガポールといえば、有名なラグジュアリーホテル「マリーナベイ・サンズ」のインフィニティプールを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。ホテルの屋上にあるプールは、端が海や空と一体化して見えるように設計されていて、まるで空に浮かんでいるかのような錯覚を楽しめます。
この投稿をInstagramで見る
実はこのホテルでは、サステナブルな取り組みも盛んにおこなわれており、日本に暮らすわたしたちにも参考になることがたくさんありそう。そこで、現地に訪問した筆者がレポートをお届けします。
そもそもシンガポールってどんな国?
東南アジア、マレー半島の先端に位置するシンガポール。東京23区より少し大きい面積の国土に、600万人を超える多民族が暮らしています。古くから近隣のマレー、中国、インド南部の人々が集まる交易都市で、イギリスの植民地であったことも、第二次世界大戦時に日本に占領されたこともあります。1965年にマレーシアから独立してシンガポール共和国という独立国家になりました。
近年では、半導体などの製造業や金融サービス業などが盛んで、東南アジアのビジネスの中心地と言える国になっています。日本との交流も多く、近年は双方の企業がお互いの国へ出資するなど、両国間の往来も活発です。

多くのタンカーが入港待ちをしている
シンガポールの象徴となった「マリーナベイ・サンズ」とは?
長らくシンガポールの象徴といえば、1972年にお披露目された「マーライオン像」でした。それが変化したのは、15年前のこと。2010年に「マリーナベイ・サンズ(以下、MBS)」が開業すると、そのデザイン性が話題に。マリーナ湾を挟んで、マーライオンの対岸に建てられた統合型リゾートは、3棟の高層タワーにの上に船のようなスカイパーク展望台があり、その奇抜なデザインで世界の注目を集めました。現在では、シンガポールを象徴する建物のひとつとなっています。

「マリーナ ベイ サンズ」外観
MBSはシンガポール国内でも、世界でもトップクラスの統合型リゾート。宿泊施設に加えて、ショッピングモールやライブショー、ミュージカルを楽しめるシアター、ミュージアム、会議やカンファレンスのための展示・コンベンションセンターなどもあり、広大な敷地を持っています。
そんなMBSは、建築デザインの中心にも、ホテル運営の中心にもサステナビリティを掲げているそう。そこで今回、筆者はMBSを訪れ、マリーナベイ・サンズ サステナビリティ担当 エグゼクティブ・ディレクターのメレディス・ボージャンさんに取り組みの内容を伺いました。
熱帯で水と光をどう操るか? MBSのサステナブルな取り組み
シンガポールでは、地形の関係で水の自給が長年の課題であり、マレーシアからの輸入でまかなってきました。近年では、政府が雨水を貯める池の設置や再生水の利用、海水の淡水化など、水の自給政策をおこなっています。
そんな中、MBSのショッピングモール「ザ・ショップス」には、アートの要素を兼ね備えた雨水を溜める装置「レイン オキュルス」が設置されています。雨季にはスコールが毎日のように降るシンガポール。レイン オキュルスは、雨を半球状の構造物へ貯め、1日5回、中央から滝として下の水路へ落とす大がかりなアートとなっています。水路を流れた雨水は地下のタンクに貯められ、再びワールプールへと循環されています。

「レイン オキュルス」上の球状の設備から、下へ滝のように水が落ちる仕組み
また、「ザ・ショップス」で印象的なのが、ガラス製の天井です。建物内に入ってくる日光の量に応じて、敷地内に設置されたセンサーが室内照明を調整します。125か所のデータポイントが館内環境を常時測定し、最適な明るさになるように制御しているため、照明による電力消費を削減できるようになっています。
ホテルのロビーでは、ウィンドアーバーとよばれる日よけ機能により日射をコントロール。このアート作品は日光を遮ることで、建物内が熱の影響を受けにくい仕組みになっていることはもちろん、冷水を利用したエアコンシステムの全館配備で、通常のエアコンを利用するより電力消費を40%も削減することに成功しているのだそう。また、ホテルのエアコンから出る排水は1日平均8万リットルにものぼるため、これを回収し、ホテル内の水路や植物に再利用する仕組みも構築されています。

ショッピングモール「ザ・ショップス」。センサーが建物に差し込む日光の量に応じて、室内の照明を調整します。
そして、インフィニティプールの屋根には、ソーラーパネルが利用客からは見えないように設置されています。デザイン性によって、ラグジュアリーさとサステナブルを両立させているのです。全536枚のソーラーパネルが、年間16万KWの電力を生んでいて、イルミネーションに利用されているそうです。

インフィニティプール
隣接の新施設でも、持続可能性がさらに追及される見込み
「持続可能性が事業運営の核心にある」と語るのは、MBSの親会社である米ラスベガス・サンズのパトリック・デュモン社長兼COO。先述のような取り組みを積み重ね、MBSでは2015年以降、二酸化炭素排出量を19%削減することに成功しました。さらに2025年までに17.5%削減するとしていた当初の目標を大きく上回り、2018年比で30%削減へと目標をほぼ倍増させているそうです。

起工式で発表されたIR2の外観
また、MBSの隣接地に、80億米ドルをかけた新たな統合型リゾート(IR2)の建設が予定されており、2025年7月15日には起工式がおこなわれました。MBSを上回るラグジュアリーなリゾートホテルが作られる見込みですが、その建築と運営の中心にも持続可能性があるのだそう。
華やかな面だけが語られがちなMBSですが、ラグジュアリーさ、楽しさだけを追求するのではなく、サステナビリティについても前面から取り組んでいました。IR2についても、どのような取り組みが行われるのか、2030年の完成、2031年の開業予定を要チェックです。
References:
Go Green SG
https://www.gogreen.gov.sg/
マリーナベイ・サンズ
https://jp.marinabaysands.com/
Text:Itsuki Tanaka