
世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、卵の殻から生まれたサステナブルな花火についてご紹介します。
夏の風物詩、花火はいつから始まった?
夏の風物詩のひとつである「花火」。夜空に大輪の花を咲かせる打ち上げ花火や、小さいながらもきらめきが美しい手持ち花火など、いまの時期は多様な種類を楽しめます。
ちなみに、日本で打ち上げ花火が登場した時期については諸説あるようです。1589年(安土桃山時代)の7月に伊達政宗が観賞したという話や、1613年(江戸時代)8月にはイギリスの使者が徳川家康に花火を見せたという説もあります。そのほかにも1733年(江戸時代)には、享保の大飢饉により亡くなった人々の慰霊と、流行病の消滅を願い、隅田川で「水神祭」がおこなわれました。そのときの余興に、花火が打ち上げられたとも記録されています。
一方、手持ち花火など一般の人でも購入して楽しめるおもちゃ花火は、製造開始日が明確になっていません。一説には、1659年(江戸時代)に、筒状にしたわらに火薬を入れたおもちゃ花火の原型のようなものが庶民の間で大流行したとも言われています。
そんなおもちゃ花火の現代の需要はというと、平成28年(2016年)の国内生産額が9.8 億円だったのに対し、令和3年(2021年)は5.7億円でした。生産額の減少は新型コロナの影響もありますが、昨今の少子化や花火ができる場所の減少、テレビゲームの普及なども関係しているそう。また、今後おもちゃ花火の大幅な需要拡大は難しいという考えもあるようです。
原料は「卵の殻」!老舗花火会社がサステナブルな花火を開発
比較的厳しい市場環境の中でも、魅力的な花火を作り続けている会社もあります。そのひとつが、静岡県島田市の「井上玩具煙火株式会社」です。同社は、2025年6月より「卵の殻」を原材料にした手持ち花火「たまRe:」を発売しました。卵の殻から花火を作るのは、世界的にも初めての試みだそうです。
原材料となる卵の殻は、地元のスーパーや寿司店から提供してもらっているとのこと。スーパーや飲食店の廃棄物量削減にもつながる取り組みです。
もともと花火は、製造過程での電力使用量が少ない上に、廃材となった木材を使用するなどサステナブルな製品です。しかし、手持ち花火の使用後にゴミが出るところに、「花火は環境負荷がかかる遊び」というイメージを抱く人も少なくありません。同社はこのイメージを払拭し、より環境に優しい手持ち花火を作りたいと考え、「たまRe:」の開発に至ったそうです。
組み合わせる金属で色が変わる、3種類の「たまRe:」
花火は全部で3種類。かわいらしい見た目の「卵型花火」は、火をつけると卵の殻に含まれる「炭酸カルシウム」に反応し、オレンジ色に発光しながら燃えます。そして、燃え尽きると真っ黒な卵が現れるところもポイントです。
オレンジ色の棒状花火は、卵の殻に金属である「チタン」を組み合わせたもの。オレンジの光の周りを、白く透き通った光がパチパチと音を立てて散りゆく様子を楽しめます。
そして、シルバーの棒状花火は、卵の殻と「アルミニウム」を組み合わせた花火です。小さな光の粒が勢いよく地面へ落ちていく様子は、たくさんの流れ星を見ているような気分にさせてくれます。燃える様子は上記のInstagramでも確認できますので、気になる方は覗いてみてください。
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観賞用だけじゃない!「たまRe:」の多様な楽しみ方
「たまRe:」の楽しみ方はほかにもあるようです。例えば、自由研究や探究学習の教材として活用するケース。記事の冒頭でお伝えしたように、花火の歴史を辿るのもよいですし、金属の炎色反応について調べるのもおもしろいと思います。
「卵の殻」という、意外なものから生まれた手持ち花火「たまRe:」。楽しい体験ができる上に、廃棄物量削減にもつながるとは、嬉しいですね。井上玩具煙火株式会社の取り組みが多くの人に届くことを願いつつ、今後も注目していきましょう。また、この記事を読み、花火をしたくなったという方は、場所や後始末の方法に気をつけながらぜひ楽しんでくださいね。
Reference:
花火と隅田川の川開き|国立国会図書館
おもちゃ花火の楽しみ|公益社団法人日本煙火協会
花火入門平成30年度版|公益社団法人日本煙火協会
令和5年花火入門|公益社団法人煙火協会
Text:Yuki Tsuruda