
「気になる10代名鑑」の1055人目は、Souさん(16)。逗子開成高校の部活で、能登半島でのボランティアや珠洲焼の販売企画など新しいボランティアのかたちに挑戦しています。現地のリアルに触れながら行動を起こし、同情ではなくWin-Winになる仕組みをつくりたいと語るSouさんに、活動をはじめたきっかけや、能登半島ボランティアで印象に残っている出来事を根ほり葉ほり聞いてみました。
Souを知る5つの質問
Q1. いま、いちばん力を入れている活動は?
「逗子開成高校のインターアクト部で、被災地支援や地域でのボランティア活動に取り組んでいます。インターアクト部とは、地域や海外の社会課題に目を向け、自分たちで企画して行動することを大切にしているボランティア団体です。
その中でも、特に力を入れているのが、能登半島の珠洲焼の販売を通じた支援プロジェクト。地震で窯が壊れてしまった職人さんと連携し、ヒビが入って商品として出せなくなった珠洲焼を文化祭で販売しました。その売上の一部を、能登への支援に充てるかたちにしています。
『助ける・助けられる』という一方的な関係ではなく、支援する側にも新しい発見や価値があるような、Win-Winの関係を目指しています。『募金してください』ではなく、『この商品いいな、買いたい』と思ってもらえるような仕組みをつくっていきたいです」
Q2. 活動を始めたきっかけは?
「高校1年生の4月、はじめて能登半島でボランティア活動に参加したときの経験がきっかけです。
それまでボランティアに対しては、真面目にやるものというイメージがあって。被災地で黙々と作業するような光景を想像していたのですが、実際に現地で出会ったひとたちは、つらい現実を抱えながらも、楽しみながら協力し合っていたんです。『ボランティアって、人間らしくて温かいものなんだ』と感じて、ボランティアに対する価値観が大きく変わりました。
一方で、瓦礫が積まれたままの空き地や、波打ったアスファルトなど、報道では見えない震災の名残も数多く残っていて、『地震はまだ終わっていないんだ』という現実も突きつけられました。
でも。ボランティア活動を経験する中で、ただ『かわいそうだから支援する』という同情だけでは、本当の意味でのボランティアは続かないと感じるようになったんです。だからこそ、自分の目で現地を見て、自分の言葉で伝えられる人間になりたいと感じるようになりました」
Q3. 最初に起こしたアクションは?
「とにかく知ることです。
珠洲焼のプロジェクトでは、職人さんや農家さん、ボランティアキャンプのひとに話を聞きながら、何が足りていなくて、どんな支援が本当に必要なのか。現場で生まれてくる生の声を聞くことに集中しました。
珠洲焼の職人さんとは、地震で壊れた窯の片付けを手伝っていたときに出会って。そのとき、『もう売れないから、よかったら持っていって』と手渡されたのが、ヒビが入って商品にならなくなった珠洲焼の器でした。
こんなに大切なものを、自分のような高校生に託してくれるなんて……となんとも言えない感情になって。この出会いをきっかけに、この魅力をもっと多くのひとに届けながらも、支援につながる仕組みにできないかと考えるようになって、文化祭での販売企画を立ち上げました」
Q4. 印象に残っている出来事は?
「能登のボランティアキャンプで出会った方に、『ボランティアってね、ボランティアする側も学びをもらっているんだよ』と話をしてもらったことです。
田植えやピザ焼きといった共同作業を通して、年齢や立場を超えたつながりが生まれる感覚があります。学生だからこそ築ける関係性もあるし、そうした経験が少しずつ自信にもなっています。
ボランティアは、誰かのために与えるだけじゃなくて、むしろ学び合いの場、コミュニケーション能力を育てる空間でもあるんです」
Q5. 将来の展望は?
「ボランティアとはかけ離れているかもしれませんが、将来は小児科医になることが夢です。
小さい頃に大きな病気で入院したことがあり、そのときにたくさんの医師や先生たちに助けてもらって、命を救われました。その恩を、今度は自分が誰かを支える側として返していきたいと思っています。
医師として知識や技術を身につけたら、日本だけでなく、海外の現場にも足を運んでみたいです。実際、今年の夏はフィリピンのゴミ山に行き、現地での炊き出しや生活の現状を見てくる予定です。
残念ながら、気持ちだけではひとを救えないこともあります。でも、だからこそ確かな知識と行動をあわせて、自分なりの支援のかたちをこれからも探していきたいと思っています」
Souのプロフィール
年齢:16歳
出身地:福岡県福岡市
所属:逗子開成高等学校インターアクト部、模擬国連
趣味:映画鑑賞、美術館巡り、水族館で海中生物を見ること
特技:マッサージ
大切にしている言葉:「わたしひとりでは世界を変えることはできません。しかし、水に石を投げることで、多くの波紋を作り出すことはできるのです」(マザーテレサ)
Photo: Nanako Araie
Text: Serina Hirano