
「気になる10代名鑑」1060人目は、あおじゅんさん(16)。海岸の侵食問題の解決のため、「エコバイロメントサイクル」という環境保全のあり方を提案する高校生です。今年中に学校のある逗子市での実践を計画しているというあおじゅんさんに、活動のきっかけや将来の展望について聞いてみました。
あおじゅんを知る5つの質問
Q1. いま、いちばん力を入れている活動は?
「環境保全をしながら、経済的な循環を目指す『エコバイロメントサイクル』という仕組みを考えています。エコバイロメントサイクルという言葉は、EconomyとEnvironmentを組み合わせた造語です。
現在考案中のプランは2つあります。ひとつは、海岸のある各自治体でオリジナルカップを販売して、そのカップ利用者のみが使える給水機を設置するというもの。もうひとつは、海岸の侵食問題の解決に向けて海岸の砂がつきにくいビーチサンダルやシートを販売するというものです。
これらは、購入時にふるさと納税が使えるようにすることで行政の収入にもなり、そのお金で海岸侵食対策を進めるという、経済的に循環するビジネスプランとして考えています。今年度中に、自治体への提言と試行を目指しているとことです。
また、最近は学校の環境団体から離れ、Fridays For Future Yokohamaという環境団体にも所属しています。学校のある逗子を中心に活動していて、この前はみつろうを作るワークショップに参加しました」
Q2. 活動を始めたきっかけは?
「たまたま学校が逗子海岸のすぐそばにあって、海洋教育やヨット実習のような海にまつわる勉強の機会がもともと多くて。中学生のときに出会った先輩が磯焼けについて調べていて、逗子の海岸も侵食されていることを知ったんです。
あとは、北海道の中富良野町がふるさと納税を利用して、地元の小学校で開発した万年筆のインクを販売しているというのを知っったことも大きかったです。これなら、ふるさと納税を環境問題に活かせるんじゃないかって。
学校で所属していた環境団体では、個人の意識の変革を目標にしていたのですが、実際多くのひとに環境問題対策を広げていくためには、行政のようなもっと大きな力を動かす必要があるのではないかと思って。
学校で身近にあった海の問題と、このふるさと納税の活用方法が結びついて、『エコバイロメントサイクル』という仕組みの構想が始まりました」
Q3. 活動する中で、印象的だった出会いは?
「ロータリークラブが主催する湘南青少年環境会議に中学1年生の頃から参加しているのですが、そこで聞いた座間耀永さんのプレゼンに刺激を受けましたね。
座間さんは、以前Steenzの取材も受けているノンフィクション作家なのですが、海岸の砂が持ち帰られて海岸侵食が起きているということを調べられていて。とてつもない情報量や語り方、実現へのプランなどはもちろんですが、世界的な海岸侵食問題を経済的・環境的・政治的な視点で分析していたんです。『自分が目指すところはこんなにも遠いのか』と衝撃を受けたとともに、もっと活動を頑張ろうと思うことができました」
Q4. 活動をする中でつらかったことは?
「もともと人前で話すことが苦手で、納得のいくプレゼンができずに、悔しい思いをすることが多かったです。
でも、家族の前で練習したり、話し方の勉強のために落語鑑賞やビブリオバトル大会への参加などいろんな挑戦をしたりして。そんなきっかけで始めたビブリオバトルでしたが、結果的に全国大会まで進むことができたんです。挑戦を通して、プレゼンの苦手意識も少しずつ克服できていると感じます。
また、『エコバイロメントサイクル』の実現可能性についても、家族から何度もダメ出しをもらいました。構想をいちから練り直すときはつらかったですね。でも、構想をブラッシュアップするなかで、ふるさと納税を活用するといういまのアイデアを思いついたんです。もう少しブラッシュアップを重ねて、逗子市での実践を今年中に達成できたらと考えています」
Q5. 将来の展望は?
「将来は医師になって苦しんでいる患者さんを救うことです。いまの活動とは、つながりが見えないと思われるかもしれませんが、わたしの活動の根底には『ひとを助けたい』という気持ちがあるんです。
海岸の侵食問題については、とりあえずいまは活動に専念していきますが、将来的には自分のように問題の解決を目指す若者のサポートをできたらなと考えています。
どんなかたちであれ、誰かを助けることができる職業に就くのが目標です」
あおじゅんのプロフィール
年齢:16歳
出身地:神奈川県川崎市幸区小倉
所属:逗子開成高校
趣味:柔道、料理、落語
特技:プレゼン、スピーチ、モノマネ
大切にしている言葉:生き急ぐ、恩送り
Photo:Nanako Araie
Text:Haru Ninagawa