
「気になる10代名鑑」の1013人目は、糸永ときおさん(19)。在学中に、農業コンサルティング会社を設立し、収益性のある農業モデルの構築や都市部の農家支援に取り組んでいます。将来的にはテクノロジーで食料生産の仕組みをアップデートすることを目指しているという糸永さんに、活動を始めたきっかけや今後の展望について、詳しく聞いてみました。
糸永ときおを知る5つの質問
Q1. いま、いちばん力を入れている活動は?
「年収1億円を超える「ミリオネア農家」の新しいロールモデルの創出をサポートすることです。そのために、2024年には、農業コンサルティングを行う会社『一般社団法人FEA農研』を立ち上げました。
日本では、農業という業種自体に『泥臭い』『古臭い』といったイメージを持っているひともいると思います。でも実際は、経営や栽培方法を工夫すれば、安定した収入を得ることもできて、毎日採れたての美味しく健康的な食材を味わうことだってできる、非常に魅力的な仕事だと思うんです。会社員以外に、農家という道に進んでも、将来に豊かさや希望を持てるように、一次産業の新しい姿と、農業の本当の価値を発信していきたくて、事業を進めています」
Q2. 活動を始めたきっかけは?
「高校時代に講師をしていたプログラミング塾での出来事がきっかけです。当時、受け持っていた生徒のひとりが、実家の農家の経営が厳しくなったという金銭的な理由で、塾を辞めなくてはならなくなってしまって。
やる気に満ちていた彼の学びの機会が、お金という自分ではどうしようもない理由で奪われてしまったことが、本当に悔しかったんです。
農業経営の厳しさや、好きだけでは乗り越えられない過酷な現実を痛感して、ひとりでも多くの農家さんを具体的な形で支えたいという思いが生まれて、会社設立を決意しました。受験と起業の準備を両立するのは大変でしたが、あのときの生徒の表情が、いまでも原動力になっています」
Q3. 活動にあたってのファーストアクションは?
「農家さんの元を訪ねて話を聞き、実際に農地で研修を受けることから始めました。高校で、アントレプレナーシップを学ぶプログラムで出会ったひとに『まずは現場に行ってみなよ』と背中を押してもらったんです。その言葉で、やるべきことが明確になり、東京都稲城市の農家さんの所で、1ヶ月間の農業研修に参加させてもらいました。
この研修を通して特に見えてきたのは、原体験にもつながる『都市部の農家』が抱える特有の課題でした。例えば、農業が盛んな地域であれば周りも農家が多く、そこまで差を感じないかもしれません。
でも東京は特殊で、クラスの友達が当たり前のように塾に通う中で、自分の家だけが経済的な理由で行かせてもらえないなど、日常のすぐ隣に『格差』を感じることもあるんです。このことに気づいて、まずは首都圏近郊の農家さんをサポートしたいと考えるようになりました」
Q4. 活動の中で、悩みがあれば教えてください。
「いまは、農家さんといっしょにジュースやドレッシングなどの商品を開発し、それをより多くの場所で販売することに挑戦していて。でも、商品の出口となる販売先を見つけるのがとても難しいんです。価格帯や流通の壁に阻まれるなど、さまざまな原因があるので、効果的な解決策を考えていて。
ただ、ビジネスとして当然のハードルだと思うので、失敗ではなく、次の一手を考えるための経験だと捉えています。昔は割と悩むタイプでしたが、いまは自分の学びたいことややりたいことをやっているので、全く落ち込まなくなりました」
Q5. 将来の展望は?
「テクノロジーの力で日本の食料生産システム全体をアップデートすることです。元々SEを目指していた経験を活かし、ベテラン農家さんが持つ「暗黙知」、例えば、天候や土の状態から収穫期や野菜の状態を判断する感覚などをデータ化したいんです。それとAIを掛け合わせて、誰もが高品質な農業を実践できる『AI農家さん』のような仕組みを作りたいと思っています。
将来的には、都市の空きビルなどを活用した『バーティカルファーミング』にも挑戦し、生産や流通の無駄を徹底的に無くしたいとも考えていて。日本全国どこにいても、新鮮で美味しい野菜が当たり前に手に入る、そんな未来を実現することが人生の目標です」
糸永ときおのプロフィール
年齢:19歳
出身地:東京都世田谷区
所属:法政大学
趣味:ドライブ
特技:剣道
糸永ときおのSNS
★TikTok
@noukananitizyou 最近6月なのに真夏日でやばくない?#農業コンサルタント #農家#農業#慶應#keiocean #一般社団法人FEA農研 ♬ チープで可愛い 運動会の定番曲 – きっずさうんど
Photo:Nanako Araie
Text:Mizuki Maeda