Steenz Breaking News

アフリカで進む、障害者向けのテクノロジー活用の実態とは?【Steenz Breaking News】

アフリカで進む、障害者向けのテクノロジー活用の実態とは?【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、アフリカで開発・提供されている、テクノロジーを活用した「障害のある人に役立つサービス」をご紹介します。

障害がある人は、アフリカで8000万人以上

昨今、日本では障害や性別、国籍などに関わらず、あらゆる人が暮らしやすい「インクルーシブな社会」を目指す取り組みが、官民の両方で進められています。そうした動きは、筆者の住むアフリカにも。最近、アフリカでは、障害のある人たちがより自分らしく暮らせるよう支援する取り組みやサービスが民間企業から次々と立ち上がっています。

国連によれば、アフリカでは、8000万人以上の人に精神疾患や身体障害などの何らかの障害があるとのこと。この数値は今後も伸びていくことが予想されます。なぜなら、アフリカでは紛争や栄養失調などの課題が未だ多く発生しているほか、高齢化や疾病の流行などの課題も山積しているからです。

アフリカの多くの地域では、障害のある人は教育や生活、雇用など多くの点で困難に直面しています。例えば、筆者の住むウガンダでは、障害のある人は家の中にこもっていたり、街中で物乞いをしていたりすることがほとんどです。

ただ、最近はそうした状況に一筋の光が差しつつあります。障害のある人向けの、テクノロジーを活用した便利なサービスが生まれているのです。

教材の個別カスタマイズで障害者にも学びやすい環境をつくる

その中のひとつ、「Kolibri」はインターネット環境がない中でも学べる学習プラットフォームです。「Kolibri」では、少数言語を含めた173以上の言語に対応。算数や国語といった一般的な科目のほかに、STEM教育(※)、コーディング、公衆衛生といった教材もあり、学習者は動画コンテンツや問題演習などに取り組むことができます。

※STEM教育:科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、数学(Mathematics)の4分野を統合的に学ぶ教育手法のこと

 

この投稿をInstagramで見る

 

Learning Equality(@learningequality)がシェアした投稿

アフリカでは、「Kolibri」が学校で利用されています。また、自宅でも効率的に学習が進められるツールのため、農村部に住んでいて学校に通えない人や難民の子どもたち、移動が困難な身体障害者などの学習支援にも役立てられています。さらに、プラットフォーム上で動画、音声、画像、テキスト、字幕をカスタマイズできるほか、手話動画や補助教材も統合可能なため、視覚や聴覚などに障害がある人にも活用されています。

ここで実際の活用事例をご紹介しましょう。たとえば、ケニアの視覚障害児支援施設やナイジェリアの盲学校では、オーディオブック形式の教材や動画教材のローカル言語でのナレーションが日々の学習の中に使われています。また、ルワンダでは、弱視の学生向けにタブレットのフォントを拡大し、独自にカスタマイズしたナレーション付きのスライド教材が使用されているそう。南アフリカ共和国の特別支援学校では、認知障害のある学生向けに反復型のビデオ教材が活用され、学習内容の理解促進に役立っています。

 

この投稿をInstagramで見る

 

Learning Equality(@learningequality)がシェアした投稿

現在、Kolibriは世界220以上の国と地域で利用されています。UNESCOはKolibriを「障害者にとって有用な教育ツール」として、各国の難民キャンプや特別支援施設に導入しています。

 

この投稿をInstagramで見る

 

Learning Equality(@learningequality)がシェアした投稿

ケニアでは、街中の障害物を細かく表示してくれる地図も

続いて紹介する「MapAbility」は、ケニアのナイロビを中心に展開されている、車椅子利用者や視覚障害者向けのサービスです。具体的には、車椅子利用者や視覚障害者の移動の妨げとなる街中のさまざまな障害物を地図上に表示。ナイロビ市内の道や建物内の障害物の有無、スロープやエレベーター、点字ブロック、音声案内の設置状況、そして建物の勾配、ドアの幅や開閉方式など、非常に細かい情報まで掲載し、障害のある人たちの日々の移動を助けています。また、地図上ではアクセスのしやすさを色ごとに表示しており、車椅子利用者や視覚障害者の利便性を高めています。

「MapAbility」を運営するThe Ability Programは地図サービスのほかに、データを利用した政策提言や、選挙で障害のある人が投票所にアクセスできるよう、情報提供もおこなっています。

The Ability Programは、障害のある人々の生活の質を向上させるための都市設計を目指し、今日も活動を続けています。

アフリカのインクルーシブな取り組みに注目

アフリカにおいて、障害のある人々が住みやすい社会を実現するには、まだ多くの課題が残っています。しかし、近年では障害のある人々の生活を支援するサービスも増加しており、テクノロジーによってこれらの課題が解決できるかもしれませんね。インターネットの普及や技術革新が進む今後、どのようなサービスが生まれるか注目してみてはいかがでしょうか。

References:
United Nations「A double challenge for the disabled」
Learning Equality「Kolibri」
The Ability Program「Mapability program」

Text:Hao Kanayama

SNS Share

Twitterのアイコン

Twitter

Facebookのアイコン

Facebook

LINEのアイコン

LINE

Hao Kanayama

ライター

16歳、初アフリカ大陸上陸。19歳、アフリカ10か国放浪。20歳、ウガンダ移住。ウガンダの現地の会社とNGOの職員として、ストリートチルドレン、シングルマザー、薬物中毒者、孤児の支援を行う。不条理で不都合な世界だけど、その先にある希望を求めて歩き続ける、アフリカの人々の暮らしをわたしの目線から伝え続けたい。少数民族と木登りとテクノがスキ。

View More