
「気になる10代名鑑」の993人目は、小林路大さん(19)。広島の島に格安塾の開校するために、NPO法人で活動しています。「お金とは別の豊かさ」を子どもたちに伝えるべく活動する小林さんに、活動をはじめたきっかけや将来の夢について詳しく聞いてみました。
小林路大を知る5つの質問
Q1.プロフィールを教えてください。
「教育格差の是正を目標としたNPO法人『BORDER FREE』に所属し、格安で通うことができる塾を広島の島につくるために活動しています。仕組みづくりをしている段階で、現地で協力してくれるひとやスペースの確保も完了しました。年内に運営を開始できるよう、頑張っています。
僕個人としては、『子どもたちの視野と可能性を広げる』という教育を実践することに力を入れています。高校生のときから活動を開始し、子ども向けのイベント企画や、社会的養護を必要とする子どもたちの大学進学を支えるための政策提言の活動をしてきました。」
Q2.活動をはじめたきっかけは?
「高校1年生のころは、自分は経済格差に関心があるかもしれないと思っていました。小さいころ、お母さんと目黒駅を歩いているときに生まれてはじめて見たホームレスのひとが忘れられなくて。物心ついたばかりのころの出来事でしたが、とても印象に残っていたんです。
その後、ある芸能人が自殺したというニュースを見たことが転機になりました。衝撃を受けたと同時に、人間には、お金とは別の豊かさ、生きる原動力のようなものが必要なんじゃないかと思ったんです。そしてそれを与えられるのは教育なのではないかと、関心を持つようになりました。
現在の活動に繋がったきっかけは、コロナ禍によって外で遊ぶ文化を失った小学生に、外遊びの楽しさを伝えたい!と思ったことです。当時小学生だった弟は、学校に行っている以外の時間のほとんどを家で過ごし、ゲームや動画視聴をしていました。『友だちと公園で鬼ごっこしないの?』と聞いてみると、『公園でもみんなゲームをする』と返ってきて。そのときに、もっと子どもたちにひととの繋がりを体験してほしいなと思ったんです」
Q3.活動にあたってのファーストアクションは?
「高校2年生の秋に、クラスメイトや他の高校のひとに声をかけて、子どもたちに新しい体験をしてもらうためのイベントを都立林試の森公園で開催しました。
リースづくりや屋外遊びをするイベントだったんですが、開催までの準備はほとんど自分たちでおこなったんです。当日は20人ほどが集まりました。
参加者の子たちの話を聞くと、弟と同じように外で大勢で遊ぶことはあまりしないそうで、新鮮に感じてくれたみたいで。僕自身も、自分のやりたいと思ったことをかたちにできて、楽しい時間を過ごせました」
Q4.活動をしている中で、印象的だった出来事は?
「昨年の秋から、当時高校3年生だったひとといっしょに、社会的養護を必要とする子どもたちが大学進学の選択肢を持ちやすくするための政策提言活動をしていたんです。そのひとが当事者だったので、さまざまな面で調査もスムーズにいって、最終的には大学の講義を通じて参議院議員のひとに繋がって、そこから官僚の方と話すところまでいたったのですが……。当人が精神的に活動を続けることができなくなり、頓挫してしまいました。
このことを通して、社会的養護が必要な子どもたちにとっての根本的な問題は、勉強の機会がないことではなく、精神的に安定できるかどうかなのだと痛感しました。家族のような本来あるべき支えがない中、社会に放り出されるという問題の大きさは、簡単に解決できるものではないと思います」
Q5.将来の展望は?
「『子どもたちが自分の望むものを自分の力で得ることができるようにすること』です。そのためにやらなければいけないことは多いですが、まずはBORDER FREEの活動として、広島に格安の塾を設置することを達成したい。地理的要因で塾に通えないという悩みを解消したいと考えています。
将来についてはいろいろと思考中ですが、学校をつくってみたいと考えています。机に向かう勉強だけじゃなくて、目的を達成するために何をすべきか考え実行する力や、核心を捉える考え方を教え、子どもたちの内面的な豊かさを引き出す教育をしたいです」
小林路大のプロフィール
年齢:19歳
出身地:東京都
所属:早稲田大学教育学部、特定非営利活動法人BORDER FREE
趣味:ランニング、サイクリング、ドライブ、国内旅行
特技:名探偵コナンの映画のメインテーマを聞いて、どの映画か当てることができる
大切にしている言葉:「求めよ、そうすれば与えられるであろう」(新約聖書)
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Photo:Nanako Araie
Text:Yuzuki Nishikawa