
世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする、「Steenz Breaking News」。今日は、日本の綿の自給率を上げるために活動する企業の取り組みについてご紹介します。
5月10日は「コットンの日」。国産綿の自給率は0%って知っていた?
吸水性に優れ、さらりとした手ざわりが心地よいコットン(綿)。そんなコットンの魅力を、より多くの人に知ってもらいたいという思いから、5月10日は「コットンの日」となっています。
なぜ5月10日かというと、まず5月が、コットン製品の店頭販売最盛期であること。そして、「5」と「10」が語呂合わせで「コットン」と読めることを理由に、「日本紡績業界」が制定しました。
日本でも馴染みの深いコットン素材ですが、実は現在、国内の綿を含む繊維自給率はほぼ0%だそう。ただ、これまで綿がまったく栽培されてこなかったというわけではありません。昔は栽培されており、16世紀中頃から明治時代まで、関西地方から関東地方にかけて盛んに綿花の生産がおこなわれていました。しかし、幕末に欧米諸国と修好通商条約が結ばれ、大量の木綿製品が欧米諸国から輸入されるようになります。
加えて、1867年以降に国内で機械紡績業がはじまるのですが、弾力があり太くて短い繊維が特徴の国産綿は機械紡績にむいていなかったようです。その後、安価な中国綿やインド綿の輸入が始まり、国内の綿栽培は急速に衰退。明治時代末期には、姿を消してしまいました。
国産綿復活を目指すプロジェクトが始動している
一度は途絶えてしまった国産綿ですが、現代では、生産を復活させ、自給率を上げようする企業や団体も増えています。そのひとつが、オーガニックコットンのライフスタイルブランド「PRISTINE(以下、プリスティン)」を展開している株式会社アバンティ(以下、アバンティ)です。同社は2011年より、国産綿自給率1%の達成を目指し、全国の農家と綿花栽培に取り組む『国産綿復活プロジェクト』を本格的に開始。このプロジェクトでは、土壌を回復させながら綿花を栽培し、その綿から服を作っています。
2023年には約3,720坪の土壌から540kgの綿花(種あり)を収穫し、その綿を混ぜた国産綿混用率20%のライフスタイルウェアを販売しました。アバンティは、2030年までに収穫量を15,000kg(種あり)にすることを目標として掲げています。
そのほかにも2021年には、学校や企業、美術館など、多様なパートナーたちと全国各地で綿栽培に取り組む『アバンティ コットン倶楽部』を設立。2024年時点で、全国に37拠点あります。
国内の綿花栽培の活性化を目指し『CoTToN BANK』も設立
さらにアバンティでは2025年5⽉から、お客様が育てた綿を製品と交換できる『CoTToN BANK』も設立。東京都に3店舗、京都府、熊本県、高知県に1店舗ずつあります。設立のきっかけは、2015年からおこなっている「5月10日(コットンの日)」に綿の種を配布する取り組みです。ご来店したお客様のほかに、学校や福祉施設にも種を配っていたのですが、次第に、お客様が育てた綿を持ってきてくれるようになったとのこと。そのときに、「この綿を活用し製品を作れば、もっと喜んでもらえるかもしれない」という思いが生まれ、『CoTToN BANK』の設立につながったそうです。
育てた綿花や役目を終えたプリスティンの製品を店舗へ持っていくと、「通帳」と呼ばれる専用カードにスタンプがもらえます。スタンプの所持数に応じて、国産綿を使用した製品と交換できる仕組みです。ちなみに綿花20g、または回収衣料500gで1スタンプだそう。また、育てる綿花の種はアバンティやコットンバンクから渡されたもののみ、とのこと。くわえて、プリスティンの「綿花栽培に関するお約束書」に同意の上、署名する必要があります。この同意書は、育てた綿花と一緒に店舗スタッフに渡すそうです。詳細は、公式サイトをご覧ください。
国産綿を使った製品が当たり前となる日がくるかも
明治末期に途絶えた国産綿の栽培。綿製品は身近なものであり、当たり前のように店頭に並んでいるため、実は国内での綿の自給率が0%という事実を知らなかった方も多いのではないでしょうか。現在、さまざまな企業や団体、個人が国産綿の栽培に取り組んでいます。もしかすると、昔のように国産綿の製品が当たり前に国内で流通する日がくるかもしれません。そのような未来に期待しつつ、5月10日はコットンについて考えてみませんか。
Reference:
第 1節 脱炭素型の持続可能な社会づくりに向けたライフスタイルイノベーション
Text:Yuki Tsuruda