Teen's Snapshots

ミックスであるというだけで万引きを疑われて…。在住外国人の日本語習得をサポートする高校生【髙橋ロバート栄太朗・17歳】

ミックスであるというだけで万引きを疑われて…。在住外国人の日本語習得をサポートする高校生【髙橋ロバート栄太朗・17歳】

「気になる10代名鑑」の982人目は、髙橋ロバート栄太朗さん(17)。「やさしい日本語すごろく」を制作し、現在はそれを用いたイベントやワークショップの開催に力を入れています。アメリカと日本のミックスであることから、中学生のとき見た目を理由に警察官に声をかけられた経験が活動のきっかけになっていると話す髙橋さんに、実現したいビジョンや今後の展望について聞いてみました。

髙橋ロバート栄太朗を知る5つの質問

Q1. いま、力を入れていることは?

日本在住の外国人がよりよい生活を送るための支援活動をおこなっていて、おもに日本語教育に取り組んでいます。学校のゼミ活動を通じて、高校1年生のころから日本語教室や日本の食文化を伝える料理教室をおこなってきました。

昨年の夏には、楽しく日本語に触れてほしいという想いから、『やさしい日本語すごろく』を製作しました。いまはそれを用いた活動に力を入れています。

はじめは、外国人の子どもたち向けにイベントを開催していたんですけど、好評だったので、最近はいろんな世代に向けてもワークショップを開いています」

Q2. 活動をはじめたきっかけは?

「中学生のころ、路上を歩いていたら、警察の人に英語で声をかけられて。ぼくはアメリカと日本のミックスなんですけど、外国人っぽい見た目っていうだけで、万引きを疑われたんです。アメリカ人の父に聞いたら、外国人にはよくあることみたいで。

自分は日本語が話せたからよかったんですけど、『もし日本語が分からなかったら』『驚いて逃げてしまったら』と考えると、不安になったんです。

もちろん外国人に見えるってだけで万引きを疑われるなんて嫌なことだし、誰にも起こって欲しくないこと。でも、日本に住む外国人が、どんな場面でも、日本語を使ってコミュニケーションを取れるようになることの必要性を実感して、活動を始めました」

Q3.活動するうえで、大切にしていることは?

「自分はずっと日本で過ごしてきたので、心は日本人だと思っています。でも、見た目の面からひとと違う目線で見られることも多くて、最初は嫌だったんです。

でも最近はそれも面白いんじゃないかって思えるようになってきて。それは、いろんなひととふれあって、そのひとならではの経験やバックグラウンドを知っていくうちに、自分のルーツも、『自分のいいところ』として捉えたいなって思うようになったんです。

そういうポジティブな考え方は、大切にしていますね。みんなが違いをネガティブに捉えてしまわなければ、差別や戦争もなくなっていくんじゃないかなって考えています」

Q4.活動を通して、実現したいビジョンは?

言語の壁を超えて、すべてのひとが平等に尊重され、理解しあうことのできる社会にしていきたいです。

どこで生まれたって、みんな等しく同じ権利のある人間じゃないですか。でも、差別を始めたのも、偏見で相手を傷つけてしまうのも、また人間で。それらをなくしていくためには、お互いの国や文化を尊重することが大切なんじゃないかなって思うんです。

言語はそのために通じ合うためのひとつのツールだと思うから、いまはその言語の壁を乗り越えられるひとを少しでも増やしたくて、活動しています。そして、いつかはいろんな国のひとが手を取り合って、気軽にコミュニケーションできる世の中になればいいなと思っています」

Q5. 今後の展望は?

将来は、アスリートの通訳になることが夢です。もともとひとと話すことが好きなのと、いまも学校の面談のときに、父と先生の間で通訳をすることがあるんですけど、それが楽しくて。通訳って、自分を介してふたりの世界をつなげられる、すごく特別な役割だと思うんです。

そのためにまずは、アメリカの大学進学を目標にしています。いまの活動も続けていきたいんですけど、言語を学ぶっていうところから発展して、教育にも興味を持ち始めたからです。

また、『やさしい日本語すごろく』も、他言語版の製作を考えています。いちから他の言語を学習するのって、大変なことだけど、ゲームを通じて楽しく学ぶことで、そのハードルを下げていけたらなって思っています」

髙橋ロバート栄太朗のプロフィール

年齢:17歳
出身地:東京都大田区
所属:聖学院高校、国際都市おおた協会(GOCA)
趣味:スポーツ観戦(特に野球、アイスホッケー)、野球の話をすること、人と話すこと、博物館に行くこと、地図を見ること
特技:クラシックバレエ、地理
大切にしている言葉:“Always turn a negative situation into a positive situation.” (Michael Jordan)

Photo:Nanako Araie
Text:Fuka Hagai

SNS Share

Twitterのアイコン

Twitter

Facebookのアイコン

Facebook

LINEのアイコン

LINE

Fuka Hagai

ライター

2003年生まれ、愛知県出身。立教大学社会学部メディア社会学科 出身。Steenzには2024年より参加し、ライターとして「気になる10代名鑑」のインタビュー記事制作に携わる。

View More