
世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、4月5日に公開した「【前編】お天気コーナーから気候変動を発信するフランスと日本の取り組みとは?」の記事に引き続き、気候変動に関して情報発信する天気予報についてご紹介します。
気候変動の解決に向け、国内でも気象予報士とメディアが立ち上がっている!
気候変動を解決できる社会を実現するために、さまざまなサポートをおこなう一般社団法人Media is Hope。同団体が今年2月、メディアと気象予報士向けの勉強会『気候変動リテラシーと視聴率の向上を両立するお天気コーナーの挑戦』を実施しました。4月5日のSteenz Breaking Newsでは、その勉強会で報告があった内容の中でも、特にフランスのメディアでおこなわれている取り組みについて焦点を当て、前編記事としてお伝えしました。
今回は後編として、日本でおこなわれている取り組みをご紹介します。
日本の状況は? 気象予報士と気象キャスターの声明とは?
実は日本でも、気象予報に関わる人たちが、気候変動の解決に貢献すべく立ち上がっています。
2024年6月5日には、全国のテレビ・ラジオ番組などで天気予報を伝えている気象予報士と気象キャスター44名が、「気候危機に関する気象予報士・気象キャスター共同声明」を発表しました。声明の内容は「天気予報など身近な場面で気候変動問題の警鐘をおこなうことで環境問題の解決を目指す」「専門家や各メディアとの連携・協力を強化し、気象予報士と気象キャスターが気候危機解決への架け橋になるべく活動していく」というもの。気象予報士と気象キャスターたちが“情報を届ける側”として取り組みを続けていくことで、少しでも気候変動問題の解決に貢献していきたいという決意を表しています。
では、国内のニュース番組や気象番組では、一体どのように気候変動に関する情報発信をおこなっているのでしょうか。メディアと気象予報士向けの勉強会『気候変動リテラシーと視聴率の向上を両立するお天気コーナーの挑戦』での報告から、具体的な事例をご紹介したいと思います。
関西の朝に気候変動の情報をプラス!「おはよう朝日です」の取り組み
関西の方にはおなじみの、朝日放送が手がける朝のワイド番組『おはよう朝日です』で、天気予報を担当している気象予報士の正木明さん。先ほどご紹介した声明の呼びかけ人でもあります。
1990年から30年以上にわたり、『おはよう朝日です』で天気予報を担当している中で、およそ10年前から「天気予報コーナーの中で気候変動の情報を伝えられたら」と思っていたのだそう。そこで正木さんは、まずはその日の最高気温を伝える際に「温暖化で最高気温が平年よりもさらに上がっている」などのコメントを追加するところから始めたといいます。
特に夏の暑さが酷かった2023年、毎日の天気予報の中に、温暖化指数を取り入れることを番組に提案します。この企画提案は無事に採用となり、夏場は温暖化指数についても触れながら気温や天気の話をする機会が増えました。
また、1月からは、先日ご紹介したフランスのテレビ番組と同じように、クライメイトストライプ(※)を導入。天気予報時に表示される各地のライブカメラのテロップに、その地点ごとのクライメイトストライプが表示されるようになりました。(上記の写真では、右上の「神戸」の字の下にクライメイトストライプが表示されています。)
クライメイトストライプを番組内で初めて表示した日の制作スタッフによる反省会で、演出担当のスタッフから「(気候変動問題に対する)番組としての姿勢をはっきりさせたんだ」という言葉をもらってうれしかったという正木さん。ひとりの気象予報士のアイデアが、番組として力を入れた取り組みになり、番組のメインターゲットである子育て世帯にも関心を持ってもらえるコンテンツへと発展していきました。
今後は、「天気コーナー以外のライブカメラにもクライメイトストライプを表示したい」と語る正木さん。挑戦はまだ続きます。
※クライメイトストライプ:温暖化の進行が一目で把握できる情報の伝え方。年間平均気温が平年より高ければ赤、低ければ青で表示するバーのこと。
ラジオからも意識を醸成。J-WAVEでの気候変動情報とは?
続いては、首都圏を中心に配信しているFMラジオ局「J-WAVE」の取り組みをご紹介します。勉強会で登壇したのは、同局アナウンサーの東海林克江さんです。J-WAVEのリスナーなら、WEATHER INFORMATIONやニュースなどを読み上げている声でおなじみかもしれません。
実はJ-WAVEのリスナーには、食品ロスの削減を意識していたり、マイバッグを利用していたりと、社会課題への意識が高い人が多いことが分かっていました。しかし、ラジオ局として、気候変動に対して積極的な呼びかけをおこなうまでには至っていませんでした。
そうした局の姿勢が変化する契機となったのは、先ほど取り上げた共同声明です。気象予報士の資格を持つ東海林さんも、同声明に賛同しているのです。それを、ニュース情報プログラム『JAM THE PLANET』のナビゲーターであった堀潤さんがピックアップ。同番組に東海林さんが出演することとなりました。番組の中では、声明がどういったものなのか趣旨を説明したあと、堀さんの求めに応じて、東海林さんが通常の天気予報に気候変動問題に関する情報を織り込んだ形のサンプル原稿を読み上げました。このサンプル原稿のスタイルが局内で受け入れられ、1日2回、天気予報に追加する形で、気候変動に関する情報をJ-WAVEとして伝えていくことが決まりました。
J-WAVEのニュースルームには9人のアナウンサーが所属しているものの、気象予報士の資格を持つのは東海林さんのみです。しかし、ラジオ局として気候変動に関する情報を伝えていくという方針が定まってからは、気象予報士の資格を持たないアナウンサーも気候変動に関する情報を積極的に調べ、自力で原稿をつくるようになったといいます。
いまでは「気候変動情報を伝える時間帯や番組を固定しなくても良いのでは?」という積極的な意見も局内で上がっているとのことで、取り組みのさらなる進展が期待されます。
増える気候変動についての発信。情報を受け取ったらアクションへつなげて
日常的に触れる天気予報に、国内でも少しずつ加えられている気候変動の話題。もしかしたら、天気予報以外の番組やコンテンツでも、気候変動に関する情報が扱われる日も来るかもしれません。
しかし、そうなったとしても、ひとりひとりが何かしらの行動を取らなければ、気候変動の問題は解決しないのも事実。情報を受け取ったら、いつもより、節電やリユースしてみるなど、どんな行動がとれるかを考え、アクションにつなげてみてはいかがでしょうか。
Text:Itsuki Tanaka