
世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、筆者が住むウガンダで、学校に通う子どもは1日をどのように過ごしているのかご紹介します。
アフリカやウガンダの教育事情とは
教育は、未来を切り開く重要な鍵です。特にアフリカでは、若者の教育環境が改善されることで、経済や社会の発展につながると期待されています。では、現在のアフリカの教育事情はどのようになっているのでしょうか?
ドイツの調査会社が発表したデータによると、アフリカでは2020年、15〜29歳の若者のうち46%が初等・中等教育を受け、23%が専門学校などの後期中等教育や大学などの高等教育を受けていたそうです。今後、この割合はさらに増えていくと考えられています。
筆者が住むウガンダは、アフリカ大陸でGDPが13位と比較的経済が発展している国ですが、教育の普及にはまだ課題が残っています。世界銀行とユネスコ統計研究所のデータによると、ウガンダにおける2017年の初等教育修了率は男子が52%、女子が54%でした。中等教育修了率は男子28%、女子25%で、2016年の高等教育への進学率は男子6%、女子4%と、学年が上がるにつれて就学率が大きく下がっています。
では、ウガンダをはじめとする東アフリカの子どもたちは、どのような学校に通っているのでしょうか?
東アフリカには、インターナショナルスクール、私立学校、公立学校の3種類があります。インターナショナルスクールではすべての授業が英語で行われ、学費は非常に高額です。校則は比較的自由で、外国籍の生徒も多く在籍しています。
私立学校と公立学校の間には大きな格差があり、学費や教育の質に違いがあります。裕福な家庭の子どもや奨学金を得た子どもは、私立学校で質の高い教育を受ける一方、公立学校では教室や教師の数が不足し、屋外の「青空教室」で学ぶ子どもたちもいます。公立学校の授業料は無料ですが、学用品などは自己負担となり、家庭の経済状況によって教育の機会に差が生じるのが現状です。
ウガンダの村で、小学生はどう1日を過ごす?
今回はその中でも、ウガンダの北部、南スーダンとの国境近くに位置する貧しい村・Kitgumの公立小学校を取材しました。その様子をご紹介します。
まず、二階建ての校舎はとてもシンプルで質素な外観でした。中に入ってみると、支柱がコンクリート、壁はプレハプでできていることが分かります。1クラスあたりの教室の大きさは、日本の学校と比べるとおよそ半分程度。その教室の中で、40名ほどの生徒がぎゅうぎゅう詰めになりながら授業を受けていました。制服は男子が茶色のズボン、女子がピンクの無地の布地でできた、プリーツなしのシンプルなスカートです。そして、男女共通で、黄土色のニットを着用します。しかし、経済的に購入が難しい場合は、制服に近い私服を着用する学生も見かけます。
ちなみに、国土全体で学校の設置数が少ないウガンダでは、日本のように子どもの足で通える距離を考慮して小学校を設置することができていません。また、たとえ近くに学校があったとしても、学費が払えないために、あえて学費の安い遠方の学校を選択する家庭も。そのため、歩いて通えない距離に家がある生徒は、レンガ造りの寮に泊まり、10人ほどでひとつの部屋を共有して暮らしながら学校に通っているそうです。寮生活の生徒は朝が早く、5時半に起床して朝食をとり、8時から通学してきた生徒と一緒に授業を受けます。授業は国語(民族の言葉)や英語、算数、社会、理科などがありますが、公立学校では音楽や体育、美術などの副教科を十分に学べる環境は整っていないことが多いようです。一方で、英語は小学生からしっかりと学んでいるため、ウガンダ人の大半は英語と民族の言葉の両方を母国語として話します。
給食は安価な値段で提供され、給食費を払える生徒はほぼ毎日、とうもろこしの粉を練った「ウガリ」という主食と、塩やトマトペーストで味付けされた煮豆を食べます。
授業は4時頃に終わります。放課後は、通学している生徒は家の手伝いや宿題をするために帰宅し、寮生活をする生徒は、生活に必要な水を近くの川などから汲んできたり、洗濯をしたりします。
なお、ウガンダの小学校は、生徒数の多さから授業が午前の部と午後の部に分かれていることがよくあります。その場合、半日は学校に行き、残りの時間は家の手伝いをする生徒が多いようです。
また、ウガンダにはイスラム教系の学校とキリスト教系の学校が数多く存在しています。公立学校であれば宗教の授業は任意ですが、親の意向でイスラム教かキリスト教、どちらかの背景を持った学校に入学する生徒も多くいるそうです。
ところで、ウガンダでは下水道が未整備の地域が多く、日本のような水洗式トイレの普及は難しい状況にあります。そのため、筆者が訪れた小学校でも、トイレは屋外に設置されていました。しかも、トイレとして専用の個室が置かれているわけではなく、ただトタン板で仕切っただけの「青空トイレ」です。同校の20代の校長先生に聞いたところ、「資金があれば設備を整えたいが、資金が不足しているので後回しになっている」と話していました。
誰もが質の高い教育を受けられるように
今回の取材で、生徒たちに学校が好きか聞いてみたところ、全員が口を揃えて「学校は楽しい。勉強も好き」と言っていました。しかし、校長先生によると、学用品の代金やそもそもの学費が支払えなかったり、家で家事や農業の手伝い、きょうだいの面倒を見たりしないといけないという理由で退学してしまう生徒も一定数いるようです。
ウガンダ政府は、すべての人に基礎教育を保障するとし、国家開発のための枠組みが示された『ウガンダ・ビジョン2040』の中でも、「すべての国民が質の高い教育を受けられるようにすること」を重要な目標として掲げています。
急速に人口が増加するアフリカ諸国で、すべての人に質の高い教育を提供することは大きな課題です。政府の政策とNGO/NPOなどが力を合わせることで、この目標の早期実現が期待されています。
References:
Statista「Distribution of the youth in Africa from 2000 to 2040, by educational level」
VISUAL CAPITALIST「Mapped: Just Five Countries Make Up Half of Africa’s GDP」
UNESCO「Uganda: Education Country Brief」
MINISTRY OF EDUCATION AND SPORTS「THE NATIONAL TEACHER POLICY」
Text:Hao Kanayama