タイムリーな話題から、カルチャー、さらには社会問題まで、さまざまなテーマについて、リアルな10代の声を聞くシリーズ「10代リアルVOICE」。
今回のテーマは「いま気になっているニュース」について。国内のみならず、国外のニュースまでもが溢れている昨今。いまを生きる10代は、どんなニュースに興味関心をもっているのでしょう。最近、気になった時事問題について4人のティーンに聞いてみました。
1. 手島 美月さん「地元のスパリゾートハワイアンズが、米投資ファンドに買収されることに不安を感じました」
「地元の福島県いわき市にある温泉リゾート施設『スパリゾートハワイアンズ』が、アメリカの投資ファンドに買収されるというニュースです。『スパリゾートハワイアンズ』は、小さなころから身近な存在で、馴染み深い場所。地元民からすると、会社が変わるとどうなってしまうのか、不安な気持ちが大きかったんです。
ただ、施設の雰囲気やブランド、働いている人などもそのままで、大きく変わることはないと聞き、少し安心しました。地元の企業と手を取り合って、新しい『スパリゾートハワイアンズ』をつくっていってほしいです。素敵で、ワクワクする施設になってくれることを楽しみにしています」
2. 棚澤直さん「スイスの『安楽死カプセル』に関するニュース。死に対するイメージが変わってしまうのでは、と不安に」
「スイスで実際に使用されたという『安楽死カプセル』に関するニュースです。『安楽死カプセル』は、窒素を噴出して低酸素症を引き起こし、安楽死を希望する人が、自分の意思で死を選ぶことができるカプセル型の機械だと聞きました。
スイスでは、一定の条件下での安楽死が認められているそうですが、この機械の使用は認められておらず、関係者は逮捕されたそうです。カプセルを使用して亡くなった人にとっては、悩んだ末の決断だったのかもしれませんが、このニュースが世界中に広まることで、死に対するイメージが変わってしまうような気もしていて……。本人の意思ではなく、周りからの影響で安楽死を望む人も出てきてしまうのでは、など、不安に感じました」
3. 松澤光春さん「人権をしっかりと確保して、公正な裁判が受けられる社会にしていくことが大事だと感じました」
「58年前に静岡県で起こった『袴田事件』です。4人家族が命を奪われた強盗殺人事件で、元プロボクサーの袴田巌さんが死刑判決を受けましたが、今年の10月に冤罪が認められました。このニュースをきっかけに、日本の刑事司法制度の課題について考えるようになりました。
袴田巌さんが逮捕されてからの過程には、罪を認めるように迫る自白の強要や、証拠の捏造があったそうです。自白の信頼性や証拠の取り扱い、拘束時間など、人権の侵害に関して見直していく必要があると感じました。このようなことが再び起こらないよう、公正な裁判を受けられる社会にしていくことが大事だと心から思います」
4. 松澤智朗さん「高額な盆栽が相次いで盗まれるニュース。事前の防止策が重要だと実感しました」
「盆栽の盗難が相次いでいるというニュースです。盆栽の魅力を伝える活動をしていますが、大切に育てた盆栽が盗まれるということはすごく屈辱的なことだと思います。
盆栽園の下見をしたあと、深夜に忍びこみ、高額な盆栽を盗むという悪質な手口なのだそうです。盗んだ盆栽は海外などに売られてしまうと言います。たとえ見つけられたとしても、盗まれたことを証明することができないので、取り戻すためにはお金を払って買い戻さなければならないと聞きました。
実際、僕の師匠の盆栽園も被害に遭いかけましたが、警報装置のおかげで盗まれずに済んだそうです。事前の防止策が大事なのだと、心から感じています」
地元のニュースをはじめ、国外の出来事にも関心をもち、人権問題や社会問題に対してもしっかりと自分の意見をもっているように感じました。情報に溢れている社会ですが、ニュースの背景や、多様な価値観にも目を向けながら、考えを深めていきたいですね。
Photo:Nanako Araie
Text:Serina Hirano