世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、3Dプリントの技術を活かし、アフリカで学校や家の建設を進めている企業についてご紹介します。
人口増加に対して不足する学校
アフリカへの教育の支援をする団体は多くありますが、それでもなかなか教育が行き届かないのが現状です。中でも、世界最貧国のひとつといわれるマラウイ共和国は、深刻な「学習の貧困」の問題を抱えています。
マラウイは若者人口が多く、国連のデータによると、平均年齢は2024年の時点で17.8歳。日本の平均年齢が49.4歳であることと比較しても、どれだけ若者が多いかがわかるでしょう。そんなマラウイでは、6歳からの8年間を初等教育で学びますが、UNESCO(国際連合教育科学文化機関)によると、2019年時点での初等教育の卒業率は、80.5%にとどまるそうです。
その原因のひとつとして考えられるのが、学校不足です。マラウイでは1994年、貧困家庭の就学率向上のため、初等教育の無償化が導入されました。しかし、児童数の急激な増加によって、教室や教員の不足が引き起こされました。UNICEF(国際連合児童基金)によると、マラウイでは、初等教育のための教室が、およそ36,000箇所も不足しているそうです。
技術が学び場をアップデート
こうした深刻な学校不足の解消のために立ち上がったのが、高度な3Dプリントの技術をもつ建設企業『14 TREES』です。ケニアのナイロビを拠点とする企業である『14 TREES』は、世界初の3Dプリントでできた学校を、マラウイのサリマ地区に建設しました。
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3Dプリントの建設のメリットは、高価な足場や材料を必要としないこと。圧倒的な時間削減のほか、低コストでの実現、さらに二酸化炭素排出の削減にも貢献できるのです。3Dプリントでできた学校は、その壁がわずか18時間で完成したとのことで、そのスピーディーさがわかります。
また、3Dプリントの巨大な機械がセメントを積む技術は、人間の手でおこなうよりも圧倒的に早く、かつ正確です。さらに、角ばった垂直のデザインだけでなく、曲線を描くこともできるため、人間の手でつくったような、あたたかみのあるデザインも建設することができます。
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マラウイでは、同社が3Dプリントで家を作った例も存在します。住宅もまた曲線を多用し、有機的でユニークなデザインをしています。
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世界に広がる3Dプリント建築
『14 TREES』の3Dプリント技術は、マラウイだけでなく、世界に広がっています。
マダガスカルでは、NGO団体と提携して、現地の材料を使用して、蜂の巣型のデザインの学校が建てられました。共通の目標に向かって努力する人々が集まる様子を、蜂の巣に重ねてデザインしたそうで、複雑な形を3Dプリントで見事につくり上げ、子どもたちの学び場となっています。
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さらに、同社が本拠地であるケニアの首都・ナイロビに建てたモデルハウスは、開発コストやエネルギー消費の大幅な削減に成功。外観と内観、ともに3Dプリントでつくられたものとはわからないほどの質の高さを実現しました。3Dプリントの技術には、目を見張るものがあります。
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3Dプリントの技術に期待が高まる
昨今ではNASA(アメリカ航空宇宙局)も、月面でのインフラ建設のため、3Dプリントの研究開発に投資するなど、将来的には宇宙での活躍まで想定されているこの技術。
そういった最先端の場所だけでなく、アフリカの農村部といった、インフラや社会サービスへのアクセスが難しい地域での社会貢献といった意味でも、3Dプリントの活躍に、今後ますます期待が高まりますね。
References:
United Nations|World Population Prospects 2024
UNESCO「Malawi: Education Country Brief」
UNICEF「Education and child protection brief」
UNICEF「2018/19 Education Budget Brief」
Text:Hao Kanayama