今後の活躍が期待される、若手俳優/女優を発掘・育成する「私の卒業」プロジェクト。Steenzでは、第5作目となる「こころのふた〜雪ふるまちで〜」の公開を記念して本作品のプロデュース・脚本を手掛ける高石明彦さん、監督の北川瞳さんのおふたりにインタビューを実施しました。数々のヒット作の制作にも携わるお二人ですが、いったいどのような想いでこの作品を手掛けられているのか、お話を伺いました。前回に引き続き、撮影中に撮影されたフィルムカメラの写真とあわせてその様子をお届けします!
キャストの個性をみて、台本を変えることもある
―「私の卒業」といえば、様々な役にスポットが当たるのが印象的です。キャラクター設定で気をつけていることはありますか?
高石:キャスト全員の顔をお客さんにわかってもらわないといけないなっていう使命感がありますね。今回、メインキャストの7人を含めて、22人が出演してるんですけど。彼らが4ヶ月ぐらいかけてここまでたどり着いてるんです。だから、メインキャスト7人はもちろん、サブキャストの15人も含めて、個性がバラバラに見えるように配置していくことにはこだわってます。そこは現場でも監督と「この子はもう少しこうでもいいんじゃないかな」とか、話し合って膨らましていったり。
―配役決まってから、さらにキャラが立ってくるパターンもあるんですね。
高石:そうですね。ワークショップを見てきて「この子はこういうところがあるから、そこが際立つようにしよう」みたいなのは結構あります。それで台本を増やしたりとか。全部の役が存在している意味があるような台本になっていると思います。
―では今回、とくにこだわって撮影したシーンがあれば教えてください。
高石:ひとつはタイトルになぞらえて、登場人物の気持ちが開放するシーンには、あえて「鍋の蓋をあける」とか、逆に心を閉ざしてしまうシーンには「戸が閉まる」とか、気持ちとリンクしたカットにしてることかな。北川監督がすごくうまく撮ってくれて。
北川:それこそ冒頭の、愛佳が母親の「子供は1人でよかった」って話を聞いて家を出るシーンは、リビングの戸が閉まるカットになっていて。たまに玄関のドアを開けると、風圧でリビングの戸も閉まるときがあるじゃないですか。あんな感じで戸が「パッタン……」と閉まったとき、愛佳の心も閉ざされたみたいな表現になるように撮ったんです。物語のスタートにもなっているから、とくにこだわった部分でもありますよね。
高石:それと今回、脚本を書いているときに、ヒロイン全員に涙を流させてみようって思って。すごくハードルが高いことなんですけど。小越さん、草野さん、阿部さん、今森さんの4人が涙するシーンはみんなで環境を整えて撮影しましたね。目薬入れちゃえば早いんだけど、本人たちにやらせようってすごくみんなで結託して。客観的に素敵な現場だなって思っちゃいました。
北川:今までの「私の卒業」の泣きシーンもそうなんだけど、基本的に一連で全部撮ってしまうんですよね。役者には負荷だったのかもしれないけど、それを乗り越えてすごくいい涙を流してくれたと思います。
新潟のリアルな空気感が追求できた
―今作の舞台となった新潟はどんなところでした?
北川:やっぱり圧倒的に天気が難しい。都内だったら雨雲レーダーを見てなんとなくスタンバイできるんですけど。雪予報なのに降らなかったり……と思ったら急に降ってきたり。もうお手上げなぐらい(笑)
高石:全然天気が読めないから、とりあえずスケジュール通り突っ走ったね。
北川:実際に新潟はそういう天気なんだから、シーンをまたいだときに天気が変わっちゃってても、それもそれで新潟らしさかなと思って、そのまま撮影しましたね。
高石:あと僕は、初めて新潟に行ったときから萬代橋が大好きで。万代っていう若者の街と、歴史ある古町が、信濃川で分断されてるところに架かってるすごく素敵な橋で、ロケ地としても使わせていただいたり。芸妓とか金型とか、新潟の伝統文化に触れて「これは作品を通して皆さんに伝えなきゃな」とは思いましたね。
北川:それこそ天候が難しかったので、インドアな環境での撮影も多くなってしまったんですけど。芸妓だとか金型とか、プロの方々が協力してくださったおかげで、全体的に新潟のリアルな空気感が伝わるような画が撮れましたよね。
高石:とくに芸妓さんは僕らも見たことない世界だったので、刺激的でしたね。直接お話を聞いて驚いたのが、古町の芸妓さんって、高校を卒業してから社員として入社するんです。これを聞いて、新潟市の中でも文化をどうやって残していくか、議論が行われた末に今の形になってるんだろうな、と僕は想像して。脚本も作り直しました。そういうことをよりリアルに描こうと思ってやったので、うまく伝わると良いなと思います。
若者のみならず、見聞を広めるきっかけとなってほしい
―様々なヒット作に携わるお二人ですが、他の作品と私の卒業シリーズの違いとは?
高石:僕自身は、なにもないところからこのシリーズを始めたので、とくに全身全霊を掛けてやっていますね。ものをつくることに加えて、若い子たちを育成するっていうハードルが乗っかってるので物凄く体力は使うんですけど(笑)。「あ、変わったな」って瞬間に立ち会えるのがすごく幸せで、楽しくやらせてもらってます。体力がある限り、一生続けていきたいと思ってますね。
北川:オーディションをして、演技のワークショップを重ねてから配役が決まって撮影する作品って他ではなかなかないじゃないですか。しかも撮影地では地方のプロフェッショナル方々が協力をして下さって。0から100までみんなで同じ方向をむいて作品を作るっていうのが、このプロジェクトの圧倒的な楽しさかなと思ってます。
―では、これから作品を見られる方にメッセージをお願いします。
高石:今作では「子供食堂」を取り上げてみたりしたんですが、デジタルツールがすごく増えてきている現代のなかでも、人と人が笑い合って会話をすることが大切なんじゃないかなという僕の想いがあって。それが若い人のみならず、皆さんに伝われば嬉しいです。この作品が、これからの社会の現実に対して「どうトライしていくか」ということを家族や友達と話し合うきっかけになるといいなと思ってます。
北川:今回、登場人物たちが卒業にむけていろいろな道を選択していくストーリーのなかで、金型や芸妓など、新潟の文化を取り扱わせていただきました。この作品が「こういう文化を大切したい」とか「ここに行ってみたい」とか皆さんの地方都市への見聞を広げるきっかけになれば嬉しいです。
―ありがとうございました!
私の卒業 第5期 『こころのふた〜雪ふるまちで〜』 概要
高校の卒業は、多くの人たちにとって、人生初めての大きな岐路。進学、就職といった進路の問題や、恋人や友人との関係の変化など、数々のドラマが生まれます。そんな高校生の思いや悩みを題材に、若者たちが前向きになれる物語が展開されるオリジナルストーリーが『私の卒業』。
第5期となる今作は、新潟県新潟市と燕市を舞台に、新潟市ふるまちの芸妓、燕市の金型など、地元に根付く文化に触れながら、人口減少社会における問題に切り込み、高校を卒業していく若者たちがどのような一歩を踏み出すのか、その葛藤や希望を描きます。地元の人々のみならず、都市に暮らす人々へのメッセージも込められた作品です。
■劇場情報
3月29日(金)よりユナイテッドシネマ新潟 公開中!
4月 5 日 (金)よりイオンシネマ県央 公開中!
6月14日(金)より以下の劇場にて公開!
ユナイテッドシネマ豊洲
ヒューマックス池袋
新宿ピカデリー
MOVIXさいたま
なんばパークスシネマ
ミッドランドスクエアシネマ
7月12日(金)よりユナイテッド・シネマ札幌にて公開!
■予告編
■作品情報
私の卒業 第5期 『こころのふた〜雪ふるまちで〜』
【出演】
小越春花、下川恭平、渡邉多緒、今森茉耶、阿部 凜、草野星華、美波/八条院蔵人、姫子松柾、伊賀光成、水瀬紗彩耶、増井湖々、藤乃唯愛、田口音羽、柚来しいな、鈴川 紗由、榎本遥菜、大熊杏優、山北れもん、世良大雅、髙岡優、清水海李、高橋璃央(友情出演)
【声の出演】真飛聖、森岡豊、南北斗
【脚本】高石明彦
【音楽】平野真奈
【監督】北川瞳
【企画協力】井上拓生 岩﨑美憲、永川大祐、渡邊景亮(以上小学館)宮本真行(松竹事業開発本部)
【媒体協力】Steenz エルタマ
【後援】新潟市 新潟商工会議所 新潟市教育委員会 新潟観光コンベンション協会
【協賛】新潟綜合警備保障
【プロデューサー】飯田花菜子 成瀬保則 ヤマウチトモカズ
【アソシエイトプロデューサー】 平岡祐子
【プロデュース】高石明彦 英田理志
【企画・制作・配給】The icon
プロフィール
脚本・プロデュース 高石明彦
映画、ドラマ、舞台、CMをプロデュースする制作プロダクションThe iconの代表取締役社長。
バラエティ、ドキュメンタリー等のディレクター、プロデューサーを経て、現在では、連続ドラマや映画のプロデューサー業の他、演出、脚本家としても活躍している。
若手俳優の育成を目的とした私の卒業プロジェクトでは、現場で求められる実践的な技術や知識を出演者たちに伝授し、仮面ライダーギーツの簡秀吉や、下剋上球児の小林虎之介らを輩出してきた。
2019年公開の映画「新聞記者」では、脚本、プロデュースを担当し、日本アカデミー賞最優秀作品賞、優秀脚本賞を受賞。TVドラマ「教場」では、東京国際ドラマアワード 単発ドラマグランプリ受賞している。
監督 北川瞳
数多くの話題となったドラマや映画作品での助監督の経験と実績を積み、注目されている映像監督。
「私の卒業」には、1期から監督として参加、演技未経験者を含む若手俳優たちの魅力を引き出す繊細さと、的確な演出を持って、作品を手掛けている。
監督作品は、「君が死ぬまであと100日」「みなと商事コインランドリー2」「ショジョ恋」「18歳、つむぎます」「結婚するって、本当ですか」 「推しが武道館行ってくれたら死ぬ」「恋なんて、本気でやってどうするの?」等、その他、多数。
Photo:Kaori Someya
Text:Yui Kato