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【前編】私の卒業 第5期「こころのふた~雪ふるまちで~」公開記念。制作陣インタビュー

【前編】私の卒業 第5期「こころのふた~雪ふるまちで~」公開記念。制作陣インタビュー

今後の活躍が期待される、若手俳優/女優を発掘・育成する「私の卒業」プロジェクト。Steenzでは、第5作目となる「こころのふた〜雪ふるまちで〜」の公開を記念して、メインキャストの座談会インタビューに続き、本作品のプロデュース・脚本を手掛ける高石明彦さん、監督の北川瞳さんのおふたりにインタビューを実施しました。数々のヒット作の制作にも携わるお二人ですが、いったいどのような想いでこの作品を手掛けられているのか、お話を伺いました。今回は、撮影中に撮影されたフィルムカメラの写真と合わせてその様子をお届けします!

過去作と比べて圧倒的に難しい作品となった

―さっそくですが、今回のタイトル「ここのふた〜雪ふるまちで〜」に込められた意味は?

高石:基本的に「私の卒業」は若い人たちにポジティブな影響を与えられればいいなという想いでやらせていただいているんですけど。若い人たちが一歩前に進むときの邪魔になってるものってなんだろうって考えたときに「気持ちに蓋をしてる」っていう考え方もあるのかなと思って。気持ちが解放するきっかけを与えられるような簡単な言葉として「こころのふた」に集約されたんです。ただ、ひとつ心残りがあって。ロケハンのときに大雪が降ってたので、新潟県の「古町」と掛けて「雪ふるまち」をサブタイトルに入れたんです。でも撮影では雪があまり降らなくて……。そこがお客さんにどう伝わってるのか心配ではありますね(笑)

―今回で「私の卒業」は5作目となりますが、過去4作との違いはありますか?

高石:今回は脚本の作り方がこれまでと少し違ったんです。もともと「私の卒業」って若い子たちが内包してる、ちょっとした悩みをクリアしていく様を描いているんです。でも今年はテーマが明確に思いついてしまったというか。作品を通して今の社会に何を発信できるのか考えたときに、人口減少とか後継者問題とか、地方都市が抱える社会問題について伝えたいと思ったんです。その問題がより伝わりやすくなるように登場人物を配置して作っていったので、一人ひとりが背負ってる問題が今までよりも大きいし重いんですよね。

北川:今回の脚本は圧倒的に難しいと思いますよ。役を演じるにあたって、台本に書かれている設定だけでは補いきれないし。なるべく高石さんも含めて、みんなとコミュニケーションをとるようにはしてましたよね。それに、過去作と比べて「私の卒業」っていう地方創生も含めたプロジェクト自体のテーマにも、脚本がどんどん沿うかたちになってきてるのかなと思います。

―ちなみに、地方都市が抱える社会問題について取り扱おうと思った経緯は?

高石:去年の7月、新潟に行って、地元の方々とお話する機会があったんです。そこで新幹線ができたことで、新潟から人が出ていってしまってるって話を聞いて。たとえば、燕市は金型が有名ですけど、ここも実は新幹線が止まるんですよね。人が出ていくことによって後継者の問題も出てくるし、どうしてもビジネスは縮小してしまうじゃないですか。その現状を「どうしたら若い人たちに知ってもらえるんだろう」と思って脚本を書きました。

制作はチームで行うもの!だから、主張より協調を重視してほしい。

―オーディションと演技のワークショップを経てから配役が決定するのは「私の卒業」ならではですよね。特にどんなことを気にして審査や指導していますか?

高石:オーディションでは基本的に「私の卒業」に参加したいっていう気持ちの強さを見てます。やっぱり、僕らも全身全霊をかけて作品を制作していくから。同じ気持ちを持ってくれる、ある種、仲間というか、仕事相手を探したいなと思ってますね。どれだけ作品のことが好きで、どれだけ観てきたのか、そういう意気込みを大切に聞いていくようにはしています。

北川:あとは、作品づくりってチームでやっていくものなので、人柄もよく見てるかな。

高石:そうですね。毎年みんなに「自己主張が強すぎないように」とか「レールからはみ出すな」ってことは徹底して伝えていて。僕の仕事って、脚本っていう設計図をそのまま映像化してお客さんに届けることなので。脚本の中からはみ出されると困っちゃうんです。だから、一枚の設計図を、監督、脚本家、編集とかスタッフみんなで作りあげるって意味では「作品は俳優の自己表現の場ではないんだよ」ってことはよく言ってますね。それを守っていれば個性はおのずと出てくるものだと思いますし。

―「私の卒業」出演後、大きく羽ばたいた俳優もいらっしゃいますが、お二人から見て何か違いはありましたか?

高石:たとえば、3期の簡秀吉が仮面ライダーになるなんて想像してなかったし、4期の小林虎之介が日曜劇場にでるのも想像してなかったし、彼らの日々の努力のおかげですよね。僕らとしては、映像の世界で仕事をする上での基本の基本を伝えているだけなので。それを彼らが自分のものにして、さらに発展させた結果、評価されたんだろうと思います。まだまだみんな先は長いので、今後、違う人たちが活躍していく可能性もありますしね。ただ、基本的なことだけ忘れずにいてくれれば、みんなある程度活躍できるんじゃないかな思います。そう思って、僕らも育成してるつもりなので。だから、今後も楽しみですよ。

北川:それが全てですね。やっぱり巡り合わせだと思います。

高石:虎之介は自己主張が強かったっていうのはあるけどね。あの子は怒られまくってました(笑)。でもこの間会って話したら「もうあんなの考えられないです」って言ってましたよ。簡秀吉も、当時ずっと「僕にアドバイスをください」とか「僕の駄目なところを教えてください」みたいなことを言ってて。

北川:うん。ずっと悔しそうだった。怒られたら怒られたで全然納得いってないみたいな感じでしたよね(笑)

短いスパンだったからこそ、みんなの結束が見えた

―今作のメンバーのチームワークはいかがでした?

北川:よく楽屋で芝居の話をしてるのは通りがけに見ましたよ。撮影後も次の日に撮るシーンの話をしたり。なんかいいチームだなって思ってました。

高石:チームワークという点においては、今回は男子たちがチームスポーツをやってきた子たちが多くて、バスケットボールとか、サッカーとか、野球とか、ある種の自己犠牲をチームの中で体験をしてきた子たちが多かったので、自分がやりたい役ができなくても「みんなでひとつになろう!」みたいな空気が、直ぐに流れたのかもしれないですね。

北川:男子チームの「引っ張っていこう」みたいな感じは見てて思いました。もちろん、空回る部分もあったんだけど。率先してやろうと思ってくれること自体がやっぱチームワークの良さかなと。

高石:あと、毎年ワークショップでは、考える能力をつけてもらうために、作品や役についてみんなで話し合いをさせてるんですけど。今年は、例年半年かけるワークショップを2週間くらいで行ったのもあって、結構駆け足で答えを出してもらう状況だったんです。それが逆にうまくいったのかな。自分1人じゃなく、仲間がいて。話し合いながらものって作るんだなってことは、理解してもらえたかなと思います。

北川:みんな、ただでさえ頭パンパンになっちゃってたから、多分ひとりじゃ解決できなかったと思う。

高石:助け合いながらより結束力が強くなったよね。3期も4期もそうだけど、未だにみんなで集まってる姿を見ると、やってよかったなと思いますよ。

〜後編に続く〜

私の卒業 第5期 『こころのふた〜雪ふるまちで〜』 概要

高校の卒業は、多くの人たちにとって、人生初めての大きな岐路。進学、就職といった進路の問題や、恋人や友人との関係の変化など、数々のドラマが生まれます。そんな高校生の思いや悩みを題材に、若者たちが前向きになれる物語が展開されるオリジナルストーリーが『私の卒業』。

第5期となる今作は、新潟県新潟市と燕市を舞台に、新潟市ふるまちの芸妓、燕市の金型など、地元に根付く文化に触れながら、人口減少社会における問題に切り込み、高校を卒業していく若者たちがどのような一歩を踏み出すのか、その葛藤や希望を描きます。地元の人々のみならず、都市に暮らす人々へのメッセージも込められた作品です。

■劇場情報

3月29日(金)よりユナイテッドシネマ新潟 公開中!
4月 5 日 (金)よりイオンシネマ県央 公開中!

6月14日(金)より以下の劇場にて公開!
ユナイテッドシネマ豊洲
ヒューマックス池袋
新宿ピカデリー
MOVIXさいたま
なんばパークスシネマ
ミッドランドスクエアシネマ

7月12日(金)よりユナイテッド・シネマ札幌にて公開!

■予告編

■作品情報

私の卒業 第5期 『こころのふた〜雪ふるまちで〜』

【出演】
小越春花、下川恭平、渡邉多緒、今森茉耶、阿部 凜、草野星華、美波/八条院蔵人、姫子松柾、伊賀光成、水瀬紗彩耶、増井湖々、藤乃唯愛、田口音羽、柚来しいな、鈴川 紗由、榎本遥菜、大熊杏優、山北れもん、世良大雅、髙岡優、清水海李、高橋璃央(友情出演)
【声の出演】真飛聖、森岡豊、南北斗
【脚本】高石明彦
【音楽】平野真奈
【監督】北川瞳
【企画協力】井上拓生 岩﨑美憲、永川大祐、渡邊景亮(以上小学館)宮本真行(松竹事業開発本部)
【媒体協力】Steenz エルタマ
【後援】新潟市 新潟商工会議所 新潟市教育委員会 新潟観光コンベンション協会
【協賛】新潟綜合警備保障
【プロデューサー】飯田花菜子 成瀬保則 ヤマウチトモカズ
【アソシエイトプロデューサー】 平岡祐子
【プロデュース】高石明彦 英田理志
【企画・制作・配給】The icon

プロフィール

脚本・プロデュース 高石明彦

映画、ドラマ、舞台、CMをプロデュースする制作プロダクションThe iconの代表取締役社長。
バラエティ、ドキュメンタリー等のディレクター、プロデューサーを経て、現在では、連続ドラマや映画のプロデューサー業の他、演出、脚本家としても活躍している。
若手俳優の育成を目的とした私の卒業プロジェクトでは、現場で求められる実践的な技術や知識を出演者たちに伝授し、仮面ライダーギーツの簡秀吉や、下剋上球児の小林虎之介らを輩出してきた。
2019年公開の映画「新聞記者」では、脚本、プロデュースを担当し、日本アカデミー賞最優秀作品賞、優秀脚本賞を受賞。TVドラマ「教場」では、東京国際ドラマアワード 単発ドラマグランプリ受賞している。

監督 北川瞳

数多くの話題となったドラマや映画作品での助監督の経験と実績を積み、注目されている映像監督。
「私の卒業」には、1期から監督として参加、演技未経験者を含む若手俳優たちの魅力を引き出す繊細さと、的確な演出を持って、作品を手掛けている。
監督作品は、「君が死ぬまであと100日」「みなと商事コインランドリー2」「ショジョ恋」「18歳、つむぎます」「結婚するって、本当ですか」 「推しが武道館行ってくれたら死ぬ」「恋なんて、本気でやってどうするの?」等、その他、多数。

Photo:Kaori Someya
Text:Yui Kato

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