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世界中で注目が集まる循環型経済。島国では廃棄漁網のアップサイクルが盛んに【Steenz Breaking News】

世界中で注目が集まる循環型経済。島国では廃棄漁網のアップサイクルが盛んに【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、押さえておきたい循環型経済と、その具体的な取り組みについてご紹介します。

気候変動対策の重要なカギ?循環型経済とは

目に見えるかたちでわたしたちの暮らしを変え、世界的にも重大な問題となっている気候変動。その対策として「循環型経済(サーキュラーエコノミー)」が注目されています。

循環型経済とは、モノやサービスをつくるときに、資源の投入量と消費量を抑え、いまある資源を有効活用し、付加価値を生み出す社会経済システムのことです。この循環型経済が浸透することで、「資源や製品がもつ価値の最大化」「資源消費の最小化」「廃棄物発生の抑制」などにつながり、温室効果ガスの削減が期待できます。そのため、従来から推進されていた「リデュース」「リユース」「リサイクル」を意味する「3R」に加えて、循環型経済が注目されているのです。

この社会経済システムは、世界各地で広がっており、それぞれの国や地域に合った方法で進められています。その方法のひとつが「アップサイクル」です。

廃棄された漁網が生地に。小さな島国で行われているアップサイクル

インド洋に浮かぶセーシェル共和国(以下:セーシェル)は、115の島からなる、観光業やマグロ漁などが盛んな島国です。そんなセーシェルでは、循環型ベンチャー企業である「ブリコレ社」が、マグロ漁によって出た廃棄漁網のアップサイクルに取り組んでいます。

流れとしては、まずセーシェルの領海内でマグロ漁を行う漁船や漁業関係の企業に対して、使えなくなったナイロン製の漁網の提供を依頼します。そうして提供された漁網を「ブレオ社」の工場へ運び、さまざまな工程を経て「ネットプラス」という素材へと変化させます。この素材は通常のリサイクルナイロンに比べて強度や耐久性が優れており、アメリカの「パタゴニア」やドイツの「イエティ」などといった、アウトドアブランドの製品にも使われているそうです。

ブリコレ社はさまざまな人や企業と協力することによって、2022年には500トン以上の漁網をアップサイクルしました。また、セーシェルの経済活動の活性化にも力を入れており、セーシェルの人々を労働者として雇用することや、地元のアート・デザイン学校の生徒に製品のアイデアを募ることも考えているそうです。

漁網を回収してアップサイクルする動きは日本でも

そして、漁網の回収やアップサイクルは、セーシェルと同じ島国である日本でも行われています。

廃棄漁網をアップサイクルした製品の開発を行うamu株式会社(以下:amu)では、2023年10月からナイロン製の漁具を買い取って再利用するサービスを開始。集められた漁具からナイロン原料を生成し、ペレットや糸、生地などのナイロン素材に作り変えています。

今後、amuの廃棄漁網の回収サービスは、実証実験を行っていた宮城県気仙沼と沖縄県の石垣島から全国へと拡大させ、国内の年間回収量も、1,000トンをめざすそうです。この取り組みは、これまで漁業従事者の負担となっていた魚網の廃棄費用の問題や、漁網が人為的に海に廃棄されていた問題などの解決にもつながるでしょう。

さらに、スポーツ用品総合メーカーのグローブライド株式会社が展開する、アパレルブランド「D-VEC(ディーベック)」もまた、漁網リサイクルナイロン製品の製造や販売を行っています。

2024年の春夏コレクションでは、漁網リサイクルナイロンと国産シルクの平織を組み合わせ、撥水加工を施したオリジナル素材を使用し、メンズP-コートやジャケット、スラックスなどを展開。その他にも、漁網リサイクルナイロンと四角の連続した枠で構成される漁網をイメージしたオリジナルドビー織りに撥水加工を施した素材で、メンズシャツやショーツ、ウィメンズドレスなどを発表しています。

また、日本有数の鞄の生産地である兵庫県豊岡市では、廃棄漁網をアップサイクルした素材を使ったダレスバックを製造しています。

大部分に使われているのは、北海道の道東エリアで回収された廃棄漁網をアップサイクルした素材で、軽量で耐久性に優れている点が特徴です。ビジネスフォーマルからカジュアルまで幅広く使えるため、ひとつもっていると重宝しそうですね。

持続可能な未来へ…循環型経済に注目!

世界的に浸透しつつある循環型経済。さまざまな国や企業が、それぞれの土地に合った方法で、取り組みを進めています。今回は、私たちが暮らす日本と、同じ島国であるセーシェルに焦点を当てましたが、山間部や内陸など、位置する地域によって取り組みは変わってくるはず。他の地域の取り組みを調べてみると面白い発見があるかもしれません。

Reference:
第2節 循環経済への移行|環境省
セーシェル基礎データ|外務省

Text:Yuki Tsuruda

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Yuki Tsuruda

ライター

鹿児島県在住のフリーライター。販売職や事務職を経験後、2020年5月からフリーランスのライターへ。執筆ジャンルは、ものづくりやSDGsなど。

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