世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする、「Steenz Breaking News」。今日は、アフリカ在住のライターが直接たずねて知った、アフリカの教育現場の現状をお伝えします。
アフリカ3カ国の学校事情
アフリカの学校というと、どんなイメージをもつでしょうか。具体的な絵をイメージできるひとは少ないかもしれませんね。
そこで今回、アフリカに住む筆者が、いくつかの学校を調査してみました。多国籍の生徒が通うインターナショナルスクールが普及していたり、高校は全寮制の学校が多かったりと、日本とのさまざまな違いもわかりました。その中でも今回は、ケニア、タンザニア、ルワンダの学校について、ご紹介します。
ケニヤッタ大学 (ケニア)
学生数7万人を誇るケニアの公立大学、ケニヤッタ大学は、常に東アフリカのトップ5に入る名門校です。13もの広大なキャンパスに加えて、オンライン学習の施設も充実しており、約1万人の学生がオンラインで学んでいるそう。大都市のナイロビにあるとは思えないほど自然豊かで、芝生の上で授業が行われることも。講義はすべて英語でおこなわれていて、人文科学、社会科学のほかに、建築、工学と技術、映画とメディア研究など、幅広い学問を学べます。
特徴的な存在として、学内のメディアグループによって運営されている国営放送が挙げられます。ここではニュースからビジネス、文化まで、幅広いトピックを扱っています。卒業生がニュース番組のレポーターをしたり、生徒がアシスタントとして働いたりと、実際の社会との密接な関わりや、大学内のコミュニティの連携の強さを感じます。
障害のある子どもの小学校 (タンザニア)
こちらは、タンザニアの首都、ダルエスサラームにある公立の小学校です。タンザニアの人口は約6700万人と、アフリカで5番目に多く、18歳以下が人口全体の半分以上を占めることから、教員や教室不足が深刻化しています。そのため、この学校では青空教室を開講。またこちらの小学校は、アフリカではめずらしく、障がいのある子どものクラスがあり、30人ほどが在籍しています。
しかし、身体的な障がいと精神的な障がいのある子どもが混在しており、また「障がい」の定義も曖昧で、適切な診断はおこなわれていないのが現状です。筆者が訪れた日は、ひとつのアルファベットを1日かけて学んでいましたが、障がいの重さは人それぞれで、本来であればもっと個人に合わせた教育が求められますが、慢性的な教師不足のため、ひとりひとりに合った教育は難しいと、学校関係者は話していました。
多くのアフリカ諸国では、障がいのある子どもへの教育システムが整っていません。世界銀行の調査によると、14 歳未満の障がいのある子どものうち、学校に通っているのは10%にも満たないそう。アフリカ各国の教育省による対応が求められます。
インクルーシブ教育を実践する学校 (ルワンダ)
東アフリカの内陸国・ルワンダで、聴覚障がいのある子どものための先進的な学校に出会いました。イタリア人によって設立されたインクルーシブ教育をおこなう幼稚園と小学校です。全校生徒の約500人のうち、半分が聴覚障がいを持つ生徒です。クラスは、障がいをもつ生徒とそうでない生徒が一緒に学んでいて、授業は手話と発声と両方を使っておこなわれています。
このようなインクルーシブ教育が行われている理由は何なのでしょうか。校長は「ルワンダでは30年前に大量虐殺が起きた。そこから人々は共生の大切さを学び、実践しようとしている」と語ってくれました。
アフリカの学校というと、草原に建つボロボロの校舎をイメージする人も多いかもしれません。しかしこの学校には、写真のようにとても立派な宿舎がありました。これは、「ルワンダ虐殺」という悲痛な歴史が、国際社会の関心を集めることにつながり、援助を受けやすい国になったという背景も影響していると考えられます。
課題もあるが希望も…アフリカの教育現場
今回は、さまざまなバリエーションに富んだ、3つ学校をレポートしました。アフリカの学校に対する印象が、少しは変わったでしょうか。教師不足や教室不足、障がいを持った子どもへの教育的支援など、問題は山積みですが、アフリカ諸国の就学率は、かつてに比べて高まっています。今後、経済の発展に伴い、教育環境が少しずつ改善していくことに期待したいですね。
Reference:
Worldometers「African Countries by population (2023)」
Unicef「Young people engagement: A priority for Tanzania」
THE WORLD BANK「Disability-Inclusive Education in Africa Program」
Text:Hao Kanayama