「気になる10代名鑑」の355人目は、中島隆誠さん(18)。現代美術の新人クリエイター発掘イベント『GEISAI#21』で審査員賞(タカノ綾選出)を受賞し、新進気鋭の現代アーティストとして注目されています。コロナ禍によって学校生活が激変し、新しい価値観を見出したと語る中島さんの、胸の内に迫ります。
中島隆誠を知る5つの質問
Q1. プロフィールを教えてください。
「現代美術をはじめ、さまざまな創作活動をしています。いまは文章を書くことに夢中なのですが、とても難しくて、試行錯誤を繰り返しています。
2022年3月末に都内の進学校を中途退学し、それから自分の人生に集中して、必死に表現活動や発信に取り組みつつ、広い視野をもって、表現をとりまくあれこれを学問的にも考えて、自主的に学びつづけています。その例でいうと、一般公開の研究者の講義やワークショップに参加したり、図書館にこもって文献を読みふけったりなど、日々鍛錬しています」
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Q2. 活動を始めたきっかけは?
「小学生のときは、特に科学技術に関心があって、多摩六都科学館で開催されていたイベントや公開講義によく出かけていました。著名な研究者の方たちが自分の分野についてプレゼンテーションしてくれるのですが、聞きに来ている人はみんな専門的なことに興味のある大人ばかりで。当時は話している内容こそあまりわかっていなかったのですが、物事を探究することへの意欲はものすごくあり、その講義のメモを、一生懸命ノートに書き写していました。何かすごいことを持ち帰って保管したい、みたいな欲求が強かったんだと思います。
芸術は、もともと落書き帳に絵や迷路を描いて、学校の友達に見てもらうなど、自分のつくったものを人に披露することが好きでした。それに、何にでも感化されやすい性格だったから、学校で配られたパンフレットを見ると、すぐやってみたくなって、それを母に言うと、積極的に連れて行ってくれたんです。だから、小さいときから文化施設の展示やフィールドワークのイベントなどによく参加していました。
特に映画や美術館に行ったことは、いま思えば強い影響があったと思います。縦横無尽な好奇心と、母の手筈のおかげで、きっかけの扉みたいなものが身近にたくさんありました」
Q3. どんなことをテーマにして、創作活動をおこなっていますか?
「自分の初作品だと思うのが、コロナ禍において、高校の文化祭をオンライン化するという経験をコンセプトにした、WEBサイトとNFTシリーズの作品です。各団体の出しものが混在する学校の祭りをコードで書き現し、WEB上に再現させて、リンクやパスワードをゲートに、そのデジタル空間を管理しました。
この『オンライン文化祭』の取り組みは、一学年上の先輩たちから始まった構想を継承して、僕のチームで実装して完成させたものなのですが、プラットフォームを批評するという僕自身の試みにしていきました。アートとしてプレゼンするため、空間の兆しを感じさせる小地図面=Super Platと標榜し、美術の専門誌に紹介してもらったりもしました。
コロナ禍で激変した社会へのネガティブな思いはあふれるほどありますが、それでも僕たちの世代が”かなしみ”を受け容れて、未来に希望を残すことが大切だと思っています。僕はもともと、多様なものが合流地点に集まるような学校の場が好きで、高校生活にもすごく期待していたのですが、中学卒業のタイミングで世界中がパンデミックに突入し、入学式をはじめとして、行事はすべて縮小・中止に。日常も制限された窮屈なものでした。
生活や文化行事が脆弱になった現実の中で、いわば甲子園を突然、失ってしまった高校球児の虚しさのような複雑な思いを激しく感じてきました。そのときのリアリティをひとつの形態として、できるだけ持続させて、伝えていきたいという気持ちで、真剣に作品を作っています」
Q4. 続けている中で、印象的だった出会いはありますか?
「『GEISAI#21』での、アーティストのタカノ綾さんとの出会いです。
『GEISAI』は、アートの祭典をコンセプトにした、村上隆さん率いるカイカイキキのインキュベーションプログラムです。プレスリリースを読み、祭りや空間の在り方を考えている僕と相性がよく、ここに参加すれば作品を通して自分の想いを訴えられると直感し、体力とお小遣いを使い果たして挑みました。出展者にはそれぞれブースが割り振られるのですが、僕は3DQRを設置し、鑑賞者にそのコードを読み込んでもらって、先ほどのオンライン文化祭をモチーフにしたWEBサイトの作品を見せました。
審査員の方たちにぐいぐい声をかけてブースに立ち寄ってもらって、そこで作品の背景となったコロナ禍での出来事やコンセプト、今後自分が構想していることについてなど、覚悟をもって、とにかく話しまくりました。
そのとき、審査員のひとりだったタカノ綾さんが、僕の話を真剣に最後まで聞いてくれて。僕の思いをしなやかに受けとめてくださったタカノ綾さんの佇まいに、人類の営みを未来に託し、持続可能なものにしていくアートの根性や心意気みたいなものを改めて感じさせてもらって、自分の意志を再認識しました。その後、個展『I am home(super platform)』を開催して、村上隆さんにも評価していただき、いろいろな出会いにつながっていきました」
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Q5. 今後の展望や将来の夢を教えてください。
「ストレートに絵をどんどん描いていきたいです。また、苦しんではいますが、書き残してしまった小説や批評などの文章をちゃんと世に送り出したいです。
あとは、Reebokの新たなブランドラインを軸にした『INSTANCE』というファッションコンセプトショップと一緒に、斬新でフレッシュな取り組みを展開していく話が進んでいて、それも楽しみです。コラボレーションによって作品を創るということへの関心も強いです。
これからも習慣として、自分のメインテーマである『プラットフォーム論』をしっかりと言語化していくために、コンテクストづくりも意識的にやっていきます。また、さまざまな試みをフィルムに一巻させるために、映画というメディアで制作していきたいと、ふわふわ思っています」
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中島隆誠のプロフィール
年齢:18歳出身地:東京都国分寺市大切にしている言葉:人生の本舞台は常に将来にあり(尾崎行雄の言葉)
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★HP
Photo:Eri MiuraText:Ayuka Moriya