世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、サンゴの白化を防ぐために開発された、3Dプリンターで製造する「テラコッタタイル」についてご紹介します。
加速するサンゴの白化
地球温暖化の影響は、環境や生態系など、さまざまなところに問題を引き起こします。「サンゴの白化」もそのひとつ。これは、サンゴに共生している褐虫藻が失われて、サンゴの白い骨格が透けて見える現象です。白化状態が続くと、サンゴが光合成生産物を受け取れずに、やがて壊滅してしまうのです。
オーストラリア政府の調査機関と研究者らのチームは、現在のペースで気候変動による水温上昇が続くと、全世界にあるサンゴ礁の99%が今世紀中に消失するという研究データを発表しています。
海中でサンゴが生息する場所の面積は、地球全体の0.1%ほど。面積のみを見ると小さく、影響もそれほど大きいないのでは……と思ってしまうかもしれません。しかし、9万種もの生き物がサンゴを住処にしていたり、サンゴ礁でできた島が存在していたりするため、その存在は実はとても大きなものなのです。
そして現在、そんなサンゴの白化を止めるために、多くの団体や企業が取り組んでいます。そのなかでも、ユニークな活動を行っているのが、香港のスタートアップ企業である「Archireef」です。
サンゴの白化を救うかもしれない、「サンゴ型のタイル」
「Archireef」は、海洋生物学者であるヴリコ・ユー氏と、海洋生物学者で生態学・生物多様性の准教授でもあるデイビッド・ベイカー氏が、2016年に設立した会社です。
彼らは、3Dプリンターで製造したサンゴ型のテラコッタ(素焼き)タイルを海底に設置し、その上にサンゴや海洋生物を植えつけるプロジェクトをスタートしました。
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サンゴ型タイルの最初の実験が行われたのは、2016年から2020年にかけて。香港の海下湾海岸公園内に、128個のサンゴ型タイルを40平方メートルにわたり設置しました。設置した場所では、サンゴや海洋生物が順調に育ち、サンゴの白化も起きなくなりました。その生存率は、なんと98%まで上昇したそうです。
そしてArchireefは、2022年にも新たなプロジェクトとして、アラブ首長国連邦のアブダビの海底に、サンゴ型タイルを設置しています。
サンゴの白化に対する日本の現状と取り組み
このサンゴの白化は、もちろん日本でも無視できない問題です。2016年には、日本最大といわれている石西礁湖のサンゴ礁の9割が、白化や死滅する事態に陥りました。2022年の夏も厳しい暑さによって、西南諸島ではサンゴの白化が多数報告されたそうです。
それを受けて、石垣島の「特定非営利活動法人 石西礁湖サンゴ礁基金」では、サンゴ礁保全に取り組むひとびとを応援する「八重山うみしまフレンドシップ」を開始。おもに、八重山でサンゴ礁や海洋環境を守る活動を行っている個人や団体、事業者が、情報交換の場として活用しています。
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環境問題の改善には、多くのひとの協力と多方面の専門知識が必要となります。この「八重山うみしまフレンドシップ」が活用されることによって、サンゴ礁の保全活動がより活発化されるといいですね。
また、個人にもできることはあります。世界最大のダイビング教育機関「PADI」のウェブサイトには、ひとりひとりが「サンゴを守るためにできること」をリストアップされています。
地球温暖化の問題は、その本質が大きく、なかなか直視しにくいもの。しかしその事実を知ることで、小さいけれど確実なアクションにつながっていくといいですよね。
Reference:
Archireef
Local-scale projections of coral reef futures and implications of the Paris Agreement
Text:Yuki Tsuruta