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フィルム×SNSで数万RT連発。「高校生写真家・葵」デビューの舞台裏

フィルム×SNSで数万RT連発。「高校生写真家・葵」デビューの舞台裏

あの人に聞く、私の10代」で今回取り上げる先輩は、高校生写真家としてデビューし、10代のころから雑誌・広告・PVなどで幅広く活躍してきた写真家・葵さん(20)本シリーズにおける先輩たちの肖像も、すべて葵さんが撮影しています。昨年二十歳になり、この1月に成人式を終えたばかり。いま10代を振り返り、何を想うのか、インタビューしました。

ちなみに今回の撮影は、葵さんがカメラを始めたきっかけをつくった写真家・吉葉陽花さんが担当しました。

葵(あおい)。2001年生まれ。高校1年生のときから、フィルムカメラで学校生活を撮り始め、SNSで発信。プールで撮影した写真がTwitterで話題となり、「高校生写真家」として注目され始めた。

Twitterで数万リツイートを連発。フィルムカメラとの出会い

学校のプールの中で、制服姿のまま遊ぶ友達たち。その様子を捉えたフィルム写真によるシリーズで、注目される存在となった葵さん。

 

フィルムカメラと出会ったのは、高校1年生の冬でした。何気なくTwitterを眺めていたら、バズっている写真が流れてきて、『わぁ、綺麗だ』って思って。それがフィルム写真だったのですが、光の入り方がスマホで撮るのとは全然違ったし、青の色味もすごく好みで。それが、今日撮影してくださっている吉葉陽花さんの写真でした。

自分もこんな写真を撮りたいと思い、DMで『どんなカメラを使っていますか?』と質問したら、丁寧にご回答してもらえて。吉葉さんと同じNIKONのフィルムカメラを買ったのが、始まりでした。

ちなみに、そんなありがたい経験があったので、わたしもいま、写真を始めたい方からSNSなどで質問をいただいたときは、機材や手法など、すべて隠さずに、お伝えするようにしています

フィルム写真を撮り始めたタイミングで、作品公開用のSNSアカウントも開設。これが飛躍の大きなきっかけとなる。

「別アカウントをつくった理由は、それまでの日常を投稿していたアカウントにフィルム写真を混ぜると浮いてしまうから、というだけでした。でも、投稿を続けていたら、同じようにフィルムで撮影している女子高生と繋がれたり、自分がフォローしていた写真家さんからフォロー返ししてもらえたり。『SNSすげー』って思いました(笑)」

徐々にリツイートされる投稿が増えていく中で、傾向を分析した葵さんはこう思った。

『高校生のエモさには需要があるんだな』って。もともとSNSはよく見る方だったので、現役高校生が青春をテーマにつくった作品はバズりやすいという傾向は肌感でわかってたんですけど。そこに青とかプールとか、オリジナリティを混ぜていけば、ライバルもいなくなる…と、計算して作風を決めていった部分もありました

結果、Twitter開設から半年後には、いくつかの投稿が数万リツイートされて。ここまでの反響があったことには、さすがに驚きました」

高校生写真家の活躍は、ここから始まった。

運命を変えたレジェンド写真家からのDM

Twitterで写真をバズらせていた葵さんの存在は、ある人物の目に止まった。それは、チェキ(富士フイルムが販売している、インスタントカメラinstaxシリーズ)による写真で一時代を築き、現在は若手アーティストの発掘・育成に力を入れている編集者/写真家の米原康正さん。

「高2のときに、急に米原さんご本人からDMが来て。『eggやアウフォトを作ってきた編集者です』という自己紹介と『原宿で若いアーティストを集めたグループ展をやるので、参加しませんか?』って。

先輩の写真家さんのことも全然勉強していなかったので、失礼ながら『知らない大人から連絡が来た。お金取られちゃう!』と思って、最初はお断りしたのですが、あとから怖くない方だとわかって、参加させていただくことになりました。危うく、大きなチャンスを逃すところでした(笑)」

このグループ展への参加をきっかけに、葵さんの道はさらに拓かれた。メディア、企業から仕事のオファーが続き、雑誌から広告、PVまで様々な現場を経験していった。

高校時代からプロとして活動できたメリットを、二十歳になったいま、こう振り返る。

たくさんのプロフェッショナルな大人に囲まれるなかで、初対面のモデルさんを撮影するのが仕事の現場。学校で友達を撮るのとはまったく別物で、もちろんプレッシャーはありました。

ただ、いまだから正直に言ってしまうと『女子高生の無敵感』もあったんです。肩書きのおかげで、みんなが面白がって、優しく見守ってくださってるなって。駆け出しにも関わらず、のびのびと楽しく経験を積めたのは、10代のうちに仕事を始められたからこその、恵まれた状況だったんだと思います。

逆に、『高校生』『10代』という肩書きを失ったいまは『シャキッとしなきゃ』という緊張感が強くなっています(笑)」

10代は、SNSでの発信を怖がらずに!

16歳から写真の道を走り始め、たった4年にして独自のスタイルとポジションを確立した葵さん。自分らしさを発揮して活躍したいと願う10代の後輩たちに対して伝えたいことは?

「シンプルですが、SNS活用にはチャンスしかないので、ぜひ発信してみてください、ということでしょうか。

新しいことを始めるときって『こんなこと考えてるんだよね』『こんなものつくってみたんだよね』と誰かに言いたいもの。けど、否定されるのが怖い気持ちもあるから、親や友達には言いづらいですよね。そんなとき、SNSなら顔を見せずニックネームで発信できるから、気軽です。実はわたし自身、『葵』は本名じゃないんです。

あとは、最初から『フォロワー1万人を目指す』とか決めると、心が折れやすいので、『似たことを考えている友達がつくれたらラッキー』くらいの感覚で始めてみてほしいです。結果的に、わたしのように、思わぬ出会いに繋がっていくかもしれません」

10代を振り返りながら、写真家としての快進撃の舞台裏を語ってくれた葵さん。

続くインタビュー「『月2回、勝手に休みに』写真家・葵がマイペースすぎる中高生活を赤裸々に語る」では、ちょっと変わった(?)中高時代の生活について、詳しく聞いてみました。

Photo:Haruka Yoshiba
Text:Takeshi Koh

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Ayuka Moriya

エディター

1999年生まれ、秋田県出身。東京外国語大学 国際社会学部在学時よりライター・エディターとして主にインタビュー記事の執筆、ディレクションに携わる。Steenzでは、2021年ローンチ当初より「気になる10代名鑑」のコンテンツ制作を担当。

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