Teen's Snapshots

キュレーターになるためにロンドンの美大へ進学。アートについて話が出来る世界を目指して【山田誠人・19歳】

キュレーターになるためにロンドンの美大へ進学。アートについて話が出来る世界を目指して【山田誠人・19歳】

気になる10代名鑑」206人目は、山田誠人まさとさん(19)。キュレーションについて学ぶため、9月からはロンドンの美大への進学が決まっています。普段からアートについて意見を書いたり、自身で作品を制作しているという誠人さんに、アートとの関わりや、アート業界のこれからについて語ってもらいました。

山田誠人を知るための5つの質問

Q1. プロフィールを教えてください

9月からロンドンの『University of the Arts London』に入学予定の19歳です。

普段から、Googleドキュメントで、アート作品や展覧会の批評やエッセイを書いています。最初はブログにしようかと思ったんですが、直接コメントを書き込めるほうが、意見交換の場として理想的だったので、あえてGoogleドキュメントで公開しています。

表現の軸はテキストですが、文字だけだと表現できないこともあって、それを補うために、参加型のアートを中心とした、映像や彫刻作品も手がけています」

 

 

Q2. アートの世界を志したきっかけを教えてください。

表現の世界の魅力に気づいて、アートの世界で精神的な豊かさを求めている人たちをサポートしてきたいと思ったから。

実はゴリゴリにアートをやっていた人間ではなくて。高校はIB(国際バカロレア認定校)に通っていて、高3までは海外大の経済学部を志望していました。けれども、学校のディスカッションやレポート課題などを通して、言葉というミニマムな単位から、絵画のようなアートまで、表現の世界というのは、実は奥が深いということに気づいたんです。

最初は、経済学に興味があったこともあって、ビジネス寄りのアートマネジメントを志望していたのですが、次第に憧れていったのは、アーティストの近くでサポートできるキュレーターの立場。美大なら、もっとアートへの理解を深められるだろうと思い、急遽、高3からポートフォリオを作成しはじめました。

受験勉強を通して、テキスト以外の表現も興味を持ったので、アート作品の制作もちょこちょこ手がけています」

Q3. どんな作品をつくっていますか?

「『Ai wo utaou』という、参加型の公開制作です。『好き』『嫌い』のどちらかが2進数で書かれたマスクを参加者に着用してもらい、『愛とは何か?』というテーマについて、話し合ってもらいました。

というのも、日常会話の中で、言葉に100%本当の意味を持たせることってできないじゃないですか。当たり前のように、『I love you』って言うけれど、人によってその尺度は異なります。だとすると、『0』と『1』で構成される絶対的な『好き』『嫌い』のマスクを通したときも、その『好き』『嫌い』は偽りのないものなのか、それを実験してみたいと思ったんです。

また、意思と言葉がちぐはぐな様子が、すごくいびつに感じられたので、その状態を撮影してみたかったというのもあります。自分の作品を通して、人がどう動くのかを俯瞰してみたいという、人間観察好きな僕の好奇心から始まりました

 

Q4. 社会や未来に「こうあってほしい」と思うビジョンは?

ちょっと立ち止まって考えたり、めんどくさいことについて議論できる人が増えてほしいです。

『議論すること=対立すること』と日本では捉えられがちですが、意見を聞くことで、相手を自分の中に受け入れることができて、結果的に自分の世界が広がるはず。僕が気をつけていることは、文章・作品問わず、人と話せる余白を作ること。『どう思います?』と聞いて、気軽に意見を言ってもらえるようにしています。

アート業界に関しても、アーティストは作品の感想をなかなか受け取りにくい現状があると思っています。アートというのは、誰かの評価込みで残るし、作品は言葉によって社会と接続されるもの。ただアートに触れる機会だけじゃなく、展覧会や作品に対して、直接だったり、SNSだったりで、いろいろ言い合える世の中になれば、もっと活性化するんじゃないかなって思っています」

Q5. 今後の展望は?

キュレーターとして、そして批評家として、日本のアーティストと海外のアート業界をつなげたいです。そしてその傍ら、自分もアーティストとして活躍していけたらと思っています。

キュレーターの使命である、『作品の価値を汚さないように、価値をつけること』って、すごく難しいこと。さらに、『人と話せる余白』を生む作品や展覧会のつくりかたとなると、全体主義的な考えの強いアジアの中にいては、なかなか学べないんじゃないかなって感じていて。

だからこそ、アートの本拠地である欧米で学ぶことで、アジアにはない感覚を身に着けられると信じています。ゆくゆくはそれを日本に持ち帰って、アート業界に新しい風を吹かす人間になりたいんです

山田誠人のプロフィール

年齢:19歳
出身地:神奈川県横浜市
所属:University of the Arts London
趣味:写真、散歩、書道
大切にしている言葉:思考に気をつけなさい それはいつか言葉になるから(マザー・テレサの言葉)

山田誠人のSNS

★Instagram

 

Photo:Eri Miura
Text:Atsuko Arahata
Edit:Takeshi Koh

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Ayuka Moriya

エディター

1999年生まれ、秋田県出身。東京外国語大学 国際社会学部在学時よりライター・エディターとして主にインタビュー記事の執筆、ディレクションに携わる。Steenzでは、2021年ローンチ当初より「気になる10代名鑑」のコンテンツ制作を担当。

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