2022.10.23 Teen's Snapshots

エキストラから裏方へ。社会的意義のある映像制作と環境づくりを目指す大学生【浅葱凜・19歳】

「気になる10代名鑑」の246人目は、浅葱あさぎ凜りんさん（19） 。主に映画制作の現場で、小道具の製作をしたり、MVの制作に携わったりするなど、クリエイターとして活動しています。もともとはエキストラとして映像に携わっていた浅葱さんが裏方として動くようになったきっかけや、活動の原点、いまの日本の映像業界へ対する想いなどについて、詳しくうかがいました。

浅葱凜を知るための5つの質問

Q1. どんな活動をしていますか？

「クリエイターとして、映像制作に携わっています。といっても、本格的に活動し始めたのは今年に入ってから。以前はエキストラとして、いろいろな映画やドラマの現場に行っていました。もともと映像が好きで携わりたい気持ちはあったのですが、私は地方から東京に出てきた学生の一人。業界にはなんの伝手もなかったので、どうやったら近づけるのか考えた末に、エキストラという選択肢を見つけたんです。

他にも音楽が好きなので、音楽イベントのオーガナイザーやミュージックビデオの製作などの活動もしています」

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Q2. 活動を始めた理由は？

「エキストラとして現場に行っているうちに、ある監督さんから『次の作品にスタッフとして入ってみない？　何ができる？　何がしたい？』って声をかけていただいて。それが私にとって、映像制作の裏方に回るきっかけでした。

もともと映像に興味を持ったのは、路上生活者への炊き出しのボランティアで行った大阪府西成地区と、テレビ番組の映像で見た西成地区のギャップに衝撃を受けたこと。

炊き出しをしに実際に行ってみると、確かに苦しい生活の中で心が荒んでしまっている人もいますが、温かく接してくれる人もいるんです。だけどテレビでは、『働きもせず時間を無駄にしているだけ』とか『負のオーラが漂っている』という切り取り方をされていて。そのギャップに違和感を覚え、いつか映像で困っている人を救いたいという思いが湧き、映像の世界に興味をもつようになりました」

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Q3. どんなことを大切にして活動していますか？

「先回りして動くこと、そしてひとりのプロとして動くことを意識しています。映画をつくるというのは、非現実を現実化する仕事。だから現場でも想像力を働かせて、脚本に書かれてあること以上の情報を考えて、現場にいるようにしています。

例えば『教室で弁当を食べる』というシーンだとすると、映像に映るのは弁当だけじゃない。教室の壁や黒板にどんなものが掲示されているか、そこに人は何人いるのか。脚本にたったひと言書かれているだけでも、たくさんの美術の小道具が必要になります。

また、当たり前のことかもしれないけど、より良い作品をつくる上では年齢や経験は関係ありません。これまでの仕事ではありがたいことに、最年少というポジションで大きな仕事を任せてもらえたこともありました。だけど学生だからと甘えることなく、ひとりのプロとして、大人の方々と対等に仕事をするように心がけています」

Q4. 活動をする中で、つらいこと、壁に感じることなどがあれば教えてください。

「最初はなんでこんなに楽しい世界なのに、慢性的な人手不足で、全然人が集まらないんだろうと思っていました。ですが、やっぱり中に入ってみると、業界の現実を目の当たりにして……。セクハラだったり、ギャラの低さだったり。

特に衝撃を受けたのが、映像現場に携わるときに、スタッフであることの契約書がないこと。『やりたいです』って言ったらやらせてもらえる環境ではあるし、それは有難いんですが、その代わり、稼働量とか業務の範囲が明文化されていないんですよ。だから、働きっぱなしの労働環境になってしまっていることもあって。

海外では、そういったことがかなり整備されていて。勤務時間や業務範囲だけではなく、ハラスメントの禁止、スタッフ同士であっても業務中はあだ名で呼んではいけない、といった、働きやすい環境が整えられているところもあるそう。日本もそのくらいのレベルになっていかないと、映像をやりたい人がどんどん少なくなってしまうと思います」