2021年衆議院議員選挙での投票率は、全体で55.93%。10代の投票率に目を向けると、総務省の調査によると43.01%でした。「若者の政治参加」「投票率アップ」が叫ばれる中、Steenzでは、「まずはこの全体平均へのビハインドをなくそう」という目標を掲げ、「12.92ポイントの壁」を超えるためのシリーズ記事を発信しています!
では、現役国会議員は「10代の投票率」について、どう考えているのでしょうか。低い投票率がよくないとしたら、どうすれば上がっていくのでしょうか。Steenzに登場した10代に、ズバリ、意見をぶつけてもらいました。
現役国会議員vsリアル10代…投票率はどうすれば上がる?徹底討論
参議院選挙が6月22日に公示され、7月10日の投開票日に向けて、選挙戦が繰り広げられています。「〇〇党が優勢」とか「〇〇候補が当落線上」と、結果のことばかりに目が向きがちだけど、「意志をもって社会をいい方向に変えていく」アクションをしている10代を応援するSteenzでは、まずは投票率を上げることが、そうした社会の実現に重要だと考え、投票率について、いろいろな意見を聞いたり、伝えたりしています。
そこで今回は、10代に年齢が最も近い若手議員がこの現状をどう捉えているのかについて、20代唯一の衆院議員である馬場雄基さん(29)=立民、比例東北=に聞いてみました。
話を聞いたのは、コミュニケーションに苦手意識をもつ人の居場所になるようなメイドカフェをつくる目標をもつふっきーさんと、教育への興味から、起業やインターン活動に携わるのりかさんのふたりです。
一票の価値って…正直わからない
ふっきー:選挙が近くなると、特に若者の投票率の低さが話題になりますよね。馬場さんは、国会議員という立場から、この問題をどういうふうに捉えていますか?
馬場:よくないですよね。10代に限らず、全体でいうと投票率は55.93%で、およそ44%の方々は投票してない。半数の人しか意思表示していないのに、『国民の代表です』って名乗って国会に来るのは、どこか違和感がありますよね。
ふっきー:すいません、私も正直、前回の選挙に行きませんでした。自分の一票の価値みたいなものが自分でわからなくて……。自分が投票しなくても、何万もの票があるから、自分が投票しても何も変わらないんじゃないかっていう思いがあって。
馬場:僕自身がそうでした。そもそも、国会議員になるなんて思っていなかったですから。
ちょうど今から1年前くらいに、党から出馬の要請が来たんです。それまでは何をしていたかというと、大学を出て、銀行で働いて。社会のために何かしたいという思いはあったので、そこから銀行を辞めて、一回勉強をし直して。地元の福島の復興に貢献したいという思いで、地域に密着した仕事をさせていただいていて……。
国会議員の多くは、県議とか市議とか、地域でいろいろ政治経験を積んだり、顔を覚えてもらったりしてから挑戦するのが普通なんですけど、まったくゼロからのスタートだったんです。
のりか:そうだったんですね。勝手なイメージですけど、国会議員さんはみんな「絶対、国会議員になるんだ!」って燃えている方ばかりかと思っていました。
馬場:全然違います。しかも当時、結婚したばかりで、新婚ホヤホヤでして(笑)。だから、声がかかったときに、お断りする理由を探したんです。いやいや、そもそも目指してませんし、地域でやることが僕の役割だと思ってるので、というように……。
でも、無下に断ることもできないなぁと思って、妻に相談したら、「あなたが本当にやりたいことは何?」って聞かれて。「復興を成し遂げたい。分断のない福島をつくりたい」って答えたら、「そのいちばんのルールを作っているのは国会でしょ」って言われて。グサッときましたね。
投票で世の中を変えるってコスパ悪くない?
ふっきー:私も孤独感を抱えている人の助けになりたいという思いで、メイドカフェをつくる活動をしています。だからというわけではないですが、投票という間接的な方法よりも、実際に自分が直接アクションを起こせることをしたほうが、世の中がいい方向に進んでいくんじゃないかなって思ってしまって。
馬場:その気持ち、すごくわかります。地域の人たちと一緒に、自分のできる範囲で責任を持って、輪を広げていく……僕がやりたかったのも、本来そっちです。でも、そうした活動にちゃんと挑める環境なのか。ちゃんとルールや制度は整っているか。それも、いい社会をつくるために、すごく大事なんですよ。だから、ルールを決める人を選ぶこと、つまり選挙って、実は生活や未来に直結することだって、思ってもらいたんです。
のりか:私は地元が鹿児島なんですけど、親と選挙の話をしていて、「〇〇さんは強いバックアップがあるから、その人で決まりよ」とか言っていて。選挙が始まる前から結果が決まっている、みたいなことがあるなら、自分の一票なんて意味ないかなって思いました。
馬場:それでいうと、僕がいま国会にいることが、「意味がある」という証明になるかもしれません。僕が立候補した選挙区っていうのは、とてつもなく強大な候補の方がいて。それに対して僕は、地元紙に、名前じゃなくて「無名新人」って書かれるような、最初からそれほど期待されていない存在だったんです(笑)。
やっぱり壁は厚くて高くて、小選挙区では負けてしまいました。いま国会に来られたのは、比例代表との重複立候補という制度があったから。でも、その制度のおかげで、僕に一票を投じてくださった85,501名の方の思いを、無駄にしないで済んだんです。
それはひとりひとりの思いの積み重ねでしかないし、選挙に行って、一票に思いを載せることって、やっぱり大きな力を生むんだなって、自分自身がすごく痛感しました。
若者は政治に無関心…それって本当なの?
ふっきー:やっぱり馬場さんを応援してくれたのって、同世代の若い人が多かったんですか?
馬場:普通はそう思いますよね。でも現実は、そう単純でもないんです。正直に言うと、若い人のほうが厳しいし、信頼を得るのが難しいと実感しています。むしろ、上の世代のほうがわかりやすいです。だって、上の世代の方々は、すでにさまざまなお付き合いがあって、その中で培われている信頼関係があり、ある意味、「お墨付き」のようなところもあります。それに対して若い世代は、価値の基軸が自分であって、価値がないと思えば動かない。その信頼関係を築くのって、同世代であればあるほど、シビアなんじゃないかなって感じています。
のりか:確かに。若いから、それだけで応援しよう、みたいには思わないかも。
馬場:自分の目で、見極めようとしているのだろうなって思っています。だからこそ、未来があるというふうにも感じていて。よく「若者は政治を考えてない、けしからん」なんて言われるじゃないですか。全然そんなことないんですよ。おふたりと同じように、自分の力で、ちょっとでも世の中を変えたい、よくしたいと思っている方はいっぱいいる。でもアウトプットが投票じゃないだけ。そうならないのは、単純にいま、政治がだらしないだけなんじゃないのかなって考えています。
のりか:だらしないというか、イメージはよくないですよね。国会でも誰かが話しているときにヤジを飛ばしたり、居眠りしていたり、みたいなことが印象に残っています。
馬場:確かにそうですよね。でもこれは、ぜひ一緒に紐解きたい部分なんです。もっと本質的に考えていかないと、いつまでたっても変わらないと思っていて。例えば、国会で寝ている議員さんに対して、「寝ているなら議員やめろ」って糾弾して、その人が辞めたとする。でもきっと、また寝ちゃう人が出てくるんです。じゃあ、なんで寝てしまうのかってことなんですよ。
私も議員になってわかりましたけど、あれは眠くなりますよ……。
のりか:え! そうなんですか!
馬場:要因はさまざまあるんです。例えば本会議場って、水を持ち込めないんですよ。それに、休憩もほとんどなくて、予算委員会とかだと、9時から始まって、17時時までぶっ通しで審議をするっていうことも。内閣総理大臣はじめ出席者は、「よくトイレに行きたくならないなぁ」って感じていました。
だから、本来議論するべきなのは、寝てしまう議員を叩くことじゃなくて、寝られないように議論が成熟したり、真剣に向き合う必要性がもっと増えたり、そういうことを実現させるために、どうしたらいいかを考えること。そうして国会が熱を帯びてきたら、自分たちの選んだ議員がどんなふうに活動しているかを知りたくなると思いますし、結果、投票率にもつながっていくかなと思います。
ふっきー:確かに、高齢の方も多いから、大変ですよね。私も授業で寝ちゃうこともあるから……。
若い人が選挙に出れば投票率は上がる?
のりか:それでいうと、馬場さんよりも若い、20代前半くらいのキラキラしたお兄さんお姉さんが選挙に出ていたら、投票率が上がるような気もしますけど、それってどう思いますか?
馬場:もっと若い人が立候補して、議員になるような社会になれば、同世代の方も政治参加しようと思いますよね。わかります。
確かに、多様性が叫ばれているいま、国会にも多様性は必要ですよね。女性比率が9.7%で少ないってよく言われていますが、年齢も同じで。平均年齢が55.5歳で、20代の国会議員は0.7%。あと2か月もすれば、私が30歳になるので、ゼロになっちゃうんです。そういう多様性を反映するという観点では、若い議員が増えるのは、いいことだと思うんです。でも立候補できる年齢の引き下げ、被選挙権の話でいうと、僕個人は慎重に考えていて。
ふっきー:それはどうしてですか?
馬場:選挙に出るというのは、やっぱりそれなりの覚悟が必要なことだと思うんです。地域の人の思いを託される、命を託される、暮らしを託される……その重みは半端ないですから。未来がある若者を、政治が潰してしまうリスクもあるんじゃないかなって、心配しています。僕自身、国会に来させていただいてわかりましたが、本当に甘くないし、大変な世界です。
だからこそ、被選挙権を下げれば、若い世代の投票率が上がるっていう単純なことだとは思っていないんです。やっぱり、候補者たるべき人が候補者になる世の中にしていく、これが本質だって思います。
のりか:若さを武器に戦うのは難しいんですね。
馬場:僕自身、「若いからいい」なんて、ひと言も言っていないです。そう思っていだけることは嬉しいですし、ありがたいこと。でも、若いっていうことは、経験が少ないっていうことですから、年齢とともに経験を重ねて、政治をするにふさわしい方はたくさんいます。
だからこそ、被選挙権を引き下げること自体を目的にしてしまうと、僕は若者を潰すだけになってしまうのではないかと考えています。目的は、若者が主役になること。若者を輝かせる社会をどうやったら描けるかをとことん突き詰めて、考えていくことが重要です。そしてそうなれば、おのずと若者は政治に関わってくるはず。国会にも来るようになるのではないでしょうか。
ふっきー:確かに。具体的にイメージできたら、選挙にしろ、もっと関心を持つようになりますよね。
馬場:社会をよくしていくことって、ひとつひとつの成功体験の積み重ねだと思っているんです。今の若者は、その成功体験が絶対的に少ない。だからこそ、政治にあまり関心を寄せられないんだと思っていて。
逆にいえば、もっと目の前のことに成功体験があれば、おのずとその先に政治は見えてくるものだと思う。だって、その成功体験のルールメイクをしてるのは全部政治なんですから。
のりか:この先、これを頑張ろう、みたいなことはあるんですか?
馬場:僕がこの先、ガチで勝負したいと思っているのは年金です。ガチでやらないと、本当にとんでもないことが起きる可能性があるから。本格的に調べて、動いていきたいというふうに思っています。そのためには、10代の方がどう考えているのか、何が不安で、何を望むのか、ぜひ教えてください。よろしくお願いします。
お話を聞いたのは・・・
馬場雄基さん
1992年10月15日 福島県郡山生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、三井住友信託銀行を経て、松下政経塾へ入塾。2021年10月に実施された第49回衆議院議員選挙に立候補し、比例代表で当選を果たす。初の平成生まれの国会議員。
登場してくれた10代
Photo: Kaori Someya