シリーズ「あの人に聞く、“私の10代”」。前回のインタビューでは、山賀さんの決断力の秘密についてうかがった。
続く第2回では、グランプリを受賞し、注目を集めるきっかけとなった「ミス青学コンテスト」に出場した経緯と、今この時代に「ミスコン」をどう捉えているのかを聞いてみた。
人生初の恋。でも、自分らしく輝けていない
青山学院大学に合格し、北海道から上京した山賀さん。その当時の心境を聞振り返ってもらうと……。
「メイクやファッションを思いっきり楽しめることが、何より嬉しかったですね。とにかく高校時代は、学校が厳しかったから、家の中でだけ、『Popteen』でくみっきーを見ながら、ギャルになったりしていました(笑)。
フットサルサークルに入って、気の合う友達もできました。『サークルじゃなくても会えるなぁ』なんて思ったので、すぐに辞めちゃったんですけど。それから、人生初めての彼氏もできました!」
おしゃれに、友情に、恋愛に……と、充実した大学生活。しかし、1年生の終わりごろから、「自分らしく輝けていない」と感じるように。
「相手のことが好きになりすぎて、ありのままの自分が出せなくなっていたんです。『素晴らしい人間に思われなきゃ』っていう気持ちで見栄を張って、自分を見失っちゃって。いつ連絡がきてもいいように構えていたので、自分の時間を生きられている感じもしない。好きな人といるはずなのに、苦しかったですね。
さらに、アルバイトも続かなかったりして、『自分もなく、目標もなく、このままじゃ何も成し遂げられないな……』という焦りが募っていきました」
インスタの鍵を外し、ミスコンに挑戦
そんな中、大学2年生のとき、文化祭で見た『ミス青学』授賞式のステージに、衝撃を受けた。
「出場者全員が輝いていて、彼女たちの内側から滲み出る美しさを強く感じたんです。それまでは、正直なところ、『ミスコンって、目立ちたがりの集まりでしょ』という偏見も持ってました。でも、そんな印象がすべて吹っ飛んで、素直に羨ましく思いました。『わたしも、あんな輝き方ができたらな』と思っていたところ、ミスコンの運営をしていた友達に声をかけてもらって、その翌年、挑戦することにしました」
恋愛で学んだ反省を活かして、「ありのまま」にこだわった。結果として、時代にそれが合っていたと、山賀さんは振り返る。
「良くも悪くも、わたしはそれまでのミスコン出場者っぽくなかったと思います。肌だって、夏は日焼けしていて、だいぶ黒くて(笑)。
ちょうどインスタが流行り始めたころで、投票する方たちが、オフィシャル情報だけでなく、出場者個人のプライベートな様子も見るようになってきていたんです。
わたしはそれまで、鍵をかけていたのもあって、誰の目も気にせず、自由にインスタをやっていたのですが、ミスコン出場と同時に鍵を外しました。素の自分を出しているそのアカウントだったからこそ、面白さがあって、多くの方に注目してもらえたのかなと思っています。もちろん、その他にも、自分なりに全力の努力をしたんですが」
『ミス青学2015』で、山賀さんは見事グランプリを受賞。女優への道を含め、人生が大きく切り拓かれた。
「ミスコンは、私にとって人生で初めて『やりきった』と思えたイベントです。それは、グランプリをいただいたからではなく、目標に向かって努力しきったから。本当の意味で、自分のことを好きになれたんです。もしグランプリに選ばれなくても、それは変わらなかったはず。もちろん、悔しくて大泣きしたとは思いますけど。
『自分が美しいと思える自分』になるために努力したあの半年間が、結果以上に、わたしの人生にとって大切だったと感じています」
大切なのは、他者からの評価でなく、自己肯定感
山賀さんに大きなきっかけをつくったミスコン。一方で、近年はそのイベント自体を廃止する大学も増えている。山賀さんはいま、ミスコンにまつわるこの状況を、どう見ているのだろうか。
「難しいですよね。論じられるのは大きくふたつ、性差別的な観点と、ルッキズム的な観点だと思います。
前者に関しては、わたしは、自分の心が『女性』だと思う方みんなが出場できればいいと思います。
そして後者に関して。ミスコンは『外見の美しさで人をランク付けするもの』と考えられがちですが、出場して感じたのは、外見だけでなく、内面や応援してくれる人たちとの関係値など、複合的な視点で、評価が決まっていくということ。
人間にランク付けすること自体がよくないという意見もあるかもしれませんが、参加が強制されるものではありませんし、あくまでその大会における評価であることは、出場者も理解できています。
だから、わたしはいまもミスコンに対してはポジティブです。『ミス青学』であることを、いまも誇りに思っています」
そして最後、10代に対して、こんなメッセージを口にした。
「人生を楽しむうえでいちばん大事なのは、自己肯定感だと思います。それを獲得するためには、向上心を持って努力を継続し、自分との戦いに勝つことが必要。10代の方には、ぜひ自分らしい舞台で、その魅力を磨いてほしいと思います」
まっすぐな瞳から、自信が滲み出る山賀さん。その輝きは、自ら勝ち取ったものであった。
Photo:Aoi
Text:Yui Kato
Edit:Takeshi Koh