第1回では『HIGH(er)magazine』に通じる10代の原体験を、第2回では等身大の10代の苦悩を話してくれたharu.さん。ラストとなるインタビューの第3弾では、現代を生きる10代に伝えたいことを、聞いてみました。
「自己プロデュース」よりも、もっと大切なこと
まずは、haru.さんと同じように、アーティストやクリエイターとして創作活動をしていきたい10代に対して、伝えたいことは?
「SNS時代の今の子は、わたしのころより自己プロデュース力が高くなっていますよね。けど、若いときは『こうしたら売れる』とか考えすぎず、心がスパークすることをたくさんやったほうがいいと思います。いまは無駄に思えるような、誰にも認められない、発表すらしない、そんな自分の中だけの大切な創作が、のちのちオリジナリティになるんです。
わたしも藝大時代、『HIGH(er)magazine』だけをつくっていたわけではありません。丸まったティッシュとかも含めて、自分の悲しい記憶が染み込んだものを集めてインテリアをつくったり(笑)。まわりの人から見たら、本当に訳のわからないゴミだったと思うけど、わたしはそれをつくっているときにすごく楽しくて、創作に没頭できていた。そして、そこで鍛えられたクリエイティビティが、結果的にいま、自分の表現の瞬発力を生んでいるようにも感じます」
(様子がおかしな)大人に注意して。そして何より、仲間を大切に
では、創作活動をしていない方も含めて、すべての10代に対してのアドバイスは?
「『大人には気をつけて』と言いたいですね(笑)。『HIGH(er)magazine』もいろいろなビジネスに発展して、その過程では大人に助けてもらった部分もありますが、搾取したり、おかしな大人も少なくありませんでした。
創作に限らず、若いエネルギーをビジネス的に利用しようとする大人は一定数います。大人だからと信用しすぎず、うまく利用するくらいの気持ちで付き合うのがいいと思います」
「それに若いうちは、大人よりも、仲間を大事にしてほしい。人数は少なくてもいいのですが、新しく何かをしようというときに、一緒に向き合ってくれる友達は一生モノ。大人になってからの出会いは、いろいろな前提条件がある中のものなので、どうしても腹を割り切って話し合うような仲になりづらい。
わたし自身、いまの会社のメンバーも、事実婚をしたパートナーも、大学で『HIGH(er)magazine』をつくっているときに出会ったんです。仲間を大切にできなかったら、将来あまりいいことないだろうなって思います」
恋愛もいいけど、ひとりでも幸せでいて
2020年に、パートナーと事実婚を発表したharu.さん。最後に、恋愛に関しても10代にメッセージをいただいた。
「中学・高校と、パートナーがいたことはないんです。人生で『恋人がほしい』と思ったこともない。恋愛って、平穏な心で生活するうえで、けっこうやっかいだなと思ってしまって(笑)。ドキドキしたり、駆け引きしたりするのも苦手なんです。
そんなわたしが恋愛について言えることなんて、あまりないんですけど、もし周囲から『まだパートナーいないの?』などと言われた10代の子がいたら、『全然気にしなくていいよ』と伝えたい。ドラマや映画でも『僕が君を幸せにする』みたいな定形文がありますが、誰かに幸せにしてもらうのでなく、孤独な時間を含めて、豊かだと思える日々を過ごせるのがいいんじゃないかなと思います。ひとりでも幸せなふたりが一緒になって、楽しいこともつらいことも分け合っていける、そんなのが、私の理想的なパートナーシップのありかたです。
偏った恋愛観やジェンダー観を植えつけようとしてくるマスメディアや広告って、まだまだ多いですよね。恋愛でも人生でも、それぞれがしっくりくる選択をしていけるような空気を、コツコツとつくっていきたいです」
3回にわたり「10代」について話してくれたharu.さん。型にハマらない生き方で人生を切り開いてきた先輩からのメッセージは、きっと何かのプラスになるはず。
Photo:Aoi
Text:Takeshi Koh