Teen's Snapshots

デジタルで無駄を減らし、先生が子どもたちと向き合う時間をつくりたい。宮城とエストニア留学を経て、新しい教育を描く高校生【ゆい・16歳】

デジタルで無駄を減らし、先生が子どもたちと向き合う時間をつくりたい。宮城とエストニア留学を経て、新しい教育を描く高校生【ゆい・16歳】

「気になる10代名鑑」1413人目は、ゆいさん(16)。宮城とエストニアの留学のバックグラウンドを持ち、教育系の活動に力を入れています。誰もが学びの機会を得られて、テクノロジーによって先生たちが子どもたちと向き合う時間をつくりたいと、多方面から教育について考えるゆいさんに、活動のきっかけや将来の展望を聞きました。

ゆいを知る5つの質問

Q1. いま、いちばん力を入れている活動は?

「いまは、教育に関するふたつの活動に力を入れていて。ひとつは、教育団体『EToE(Education to Everyone)』です。

『自分の可能性を最大限に活かす教育』という考え方をもとに、文系・理系といった分野や住んでいる地域に縛られず、交流や挑戦の機会を設けています。具体的には、全国の学生がDiscord上でつながる『ZENKOKU(ゼンコク)』というコミュニティの運営したり、学校についてオンラインと対面で意見を交わすイベントなどを開催したりしています

イベントをすると、どうしても教育への関心が高い人や、東京に住んでいる人に参加者が偏りがちなんです。でも、地方で開催すると、その地域で実際に暮らす人だからこそ話せる課題や意見が出てきます。そういう声をもっと広げていきたいと思っているんです。

もうひとつは、設立準備中である若者の社会活動支援をおこなうNPO法人『LINACTA(リナクタ)』で進めている、教育プラットフォーム『Leap(リープ)』の開発です。

LINACTAは、さまざまなジャンルの活動を構想していますが、その中でわたしが力を入れているLeapは、AIの技術を使って、先生の教材作成や採点、生徒の学習管理などを効率化することや、生徒一人ひとりの学びを支援することを目指しています。とくに、学校で学ぶ知識を実社会と結びつけて生徒が学びを深められるような教材の開発にも取り組んでいます。

実はわたし自身、技術的な知識はまだまだ足りなくて。仕様書をつくる段階から苦戦しましたし、いまは少しずつコードを書きながら開発を頑張っているところです」

Q2. 活動を始めたきっかけは?

「東京に住んでいたころ、受験のために知識を詰め込む教育に、息苦しさを感じていたことです。もっと違う学び方があるんじゃないかと思って、宮城県の高校の体験授業を受けてみたら、自然や地域の文化を生かした教育や、人との距離の近さがすごく魅力的で。それがきっかけで、宮城の高校に進学し、寮生活を始めました。

実際宮城で学んでみると、地域の人と関わったり、フィールドワークをしたりする実践的な学びがたくさんありました。一方で、大学進学に関する情報や、専門的な学びに触れる機会などは、東京に比べて少ないと感じることもありました。だから、都会と地方のどちらかが優れているということではなくて、それぞれの良さを組み合わせられたら、もっと面白い教育ができるんじゃないかと思うようになって。

そんなとき、全国の学生が集まる『ZENKOKU』というコミュニティに参加しました。そこで教育団体EToEのメンバーと出会い、活動に加わることになったんです。

LINACTAでのデジタルプラットフォームの活動には、『トビタテ!留学JAPAN』を通してエストニアに留学した経験が大きく関わっています。

特に印象に残ったのが、現地の人たちが自分の国の歴史や文化について、すごく自然に説明できることでした。なぜこんなに自分たちの文化を理解しているんだろうと考えるうちに、教育そのものに興味を持つようになったんです。

そこからエストニアの教育のデジタル化について調べ始めて、日本でも同じように教育の仕組みを支えるものをつくれないかと考えたことが、Leapの開発につながりました」

Q3. 活動をしているなかで、印象的だったことは?

「エストニアでホームステイしたときの、同世代のホストシスターとの出会いです。

彼女は英語も話せるし、海外のことにも関心があるのに、自分の国の歴史や文化についても本当によく知っていて。自分がエストニア人であることに、自然と誇りを持っているようでした。学校でもすごく優秀で。どうしたらそこが両立するんだろうと思って聞いてみたら、学校でデジタル技術が活用されていることも大きいんじゃないかと話してくれました。

エストニアはデジタル先進国なので、最初は何でもデジタル化されているような、派手な教育を想像していました。でも実際は、技術を活用して効率化を図るだけでなく、生徒の主体的な学びを支えたり、先生が対話や体験を重視した教育の取り組める環境を整えるのにも役立っていたんです。

そこで、テクノロジーは何でも置き換えるためのものではなくて、人が本当に大切なことに時間を使うためのものなんだと気づきました」

Q4. 活動するうえで、大切にしていることは?

「自分が面白いと思ったことに、まず挑戦してみることです。

わたしはもともと文系を選択していて、プログラミングやAIについて専門的に学んできたわけではありません。だから、Leapを開発すると決めてからも、わからないことばかりでした。留学先で研究者を探したときも、日本で大学や専門家に相談しようとしたときも、知識や実績が足りなかったり、そもそもつながりがなかったりして、難しさを感じることがありました。

でも、『トビタテ!留学JAPAN』で出会った仲間たちは、本当にいろいろな分野に興味を持っていて。

それぞれ全然違うことをやっているけれど、共通しているのは、自分の好きなことに対する熱意があること。そんな仲間たちとなら、何か新しいことができるんじゃないかと勇気をもらって、LINACTAの立ち上げにも参加しました」

Q5. 将来の展望は?

「まずは、いま開発しているLeapを、実際に教育現場で使ってもらえるものにしたいです。

現段階では、教材作成や学習管理などの負担を減らすところから始めていますが、エストニアで導入されている『AI Leap』のように、その国の言語や文化、細かなニュアンスまで理解した、教育を支えるAIも開発してみたいとも思っています。

最終的には、AIやデジタル技術で無駄を減らすことで生まれた時間を、先生が子どもたちと向き合ったり、子どもたちが地域に出て社会課題について考えたりする時間に使えるようにしたいです。

わたしは、地方の人と人との距離が近くて、お祭りや地域の芸能をみんなで楽しむような雰囲気がすごく好きで。いろいろなことが効率化されていく社会だからこそ、時間をかけて何かをつくったり、人と直接関わったりすることを大切にしたいと思っています。

テクノロジーを使って、人と人とのつながりをもっと増やしていきたいです」

ゆいのプロフィール

年齢:16歳
所属:学生団体EToE・NPO法人LINACTA・トビタテ留学Japan11期生
趣味:ファッション・交流・ダンス・音楽・異国料理巡り
大切にしている言葉:「楽しいって思うコトに罪悪感を感じないこと」

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Photo:Nanako Araie
Text:Yuka Miyazaki

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Yuka Miyazaki

ライター

2006年生まれ。長崎県出身。国際基督教大学(ICU)教養学部在学。核兵器を巡る世界情勢に関心があり、国際関係学を学んでいる。趣味は美術館巡り、ドキュメンタリー作品を観ること。

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