Fashion&Culture

古き布、新しいスタイル。上海の伝統「印花布」から生まれた新中式アパレルブランド「囍方(FZ.H WITHIN)」

古き布、新しいスタイル。上海の伝統「印花布」から生まれた新中式アパレルブランド「囍方(FZ.H WITHIN)」

「囍」という一文字から、このブランドを知った。

Fangfang Huさん(以下、Huさん)にはじめて会った日、彼女はちょうど新店舗の内装準備に追われていた。職人たちが行き交い、生地やサンプルが店のあちこちに並ぶ。今年、「囍方」は8年目を迎える。

店を構えるのは、上海でもひときわにぎわうエリア。その新店舗の中へ足を踏み入れると、まず目に飛び込んでくるのは、「囍」という漢字をモチーフに開発されたオリジナルファブリックと、それを使った服やバッグ、雑貨だ。大胆な色使いと軽やかなデザインが、店全体に若々しい印象を与えている。店内を見て回るうちに、このブランドがどんな背景を持っているのか、自然と興味が湧いてくる。

彼女を見れば、このブランドが分かる

Huさんは江蘇省沭陽【ルビ要確認】の出身。無錫での暮らしを経て、現在は上海を拠点にしている。ファッションバイヤーとして経験を積んだのち、海外でファッションデザインを学び、東華大学のオートクチュール服飾研修コースにも1年通った。ただ、服飾を専門に学んできた、中国語でいう「科班出身」ではない。本人いわく、むしろ「野生のアーティスト」。そして上海で「囍方」を立ち上げた。現在は、伝統工芸とファブリック開発を軸に活動するインディペンデントデザイナーであり、「囍方」のディレクターでもある。

小麦色の肌に、明るく飾らない人柄。英語を流ちょうに話し、身につけているのは中国らしい要素を取り入れた服。ただ、そのシルエットは驚くほどモダンで、カッティングもシャープだ。

※写真で着用している帽子、ベルト、アクセサリーはすべて「囍方」のもの

東洋と西洋、伝統と現代。そのどちらかを選ぶのではなく、ごく自然に行き来しているように見える。そのたたずまいには、「囍方」というブランドそのものの空気が重なっていた。

すべては、一枚の布から始まる

Huさんはこれまで、上海・崇明の古い集落を何度も訪ね歩き、古布を集めながら独自の素材開発を続けてきた。

生み出したオリジナルファブリックは80種類以上、それらを用いたアイテムは1000点を超える。中国の風土や民俗文化から着想を得ながら、現代的なストリートウェアの感性を掛け合わせることで、過去の文化をいまの暮らしへと引き寄せている。

「囍」という文字を、もう一度自由にしたい

ブランド名の「囍方」は、ブランドを象徴する漢字「囍」と、彼女の名前「Fangfang」を重ね合わせたものだ。

「囍」は、中国で最も縁起が良いとされる文字のひとつ。「喜び」や「幸せ」を意味し、ふたつの喜びが重なることから、主に結婚という特別な場面で使われてきた。

しかし、Huさんはその意味を、もっと自由に捉えたいと考えている。

「『囍』は、結婚だけを表すものではない。幸せな人がふたりいれば、それだけで『囍』になる。恋人でも、家族でも、友人でも、あるいは偶然出会った見知らぬ誰かでもいい」

そう話したあと、彼女は笑いながらこう続けた。

「有趣的灵魂终会相遇」(おもしろい魂どうしは、いつかきっと巡り会う)

この店で出会う、もうひとつの上海

店の客層は実に幅広い。

結婚を控えた中国の若いカップルが、「囍」の生地でチャイナドレスやウェディングウェアをオーダーしていく。その一方で、バッグやアクセサリー、インテリア雑貨を目当てに訪れる20〜30代の女性も多い。上海で暮らす外国人や、海外からの観光客も少なくない。

近年は中国への渡航がしやすくなったことに加え、中国の音楽や映画、ドラマ、ネット小説などへの関心が世界的に高まり、上海を中国旅行の最初の目的地に選ぶ人が増えているらしい。そんな人たちにとって、「囍方」は現代の中国デザインと出会う入口のひとつになっているようだ。伝統工芸を受け継ぎながら多様な文化を柔軟に取り込み、東洋らしい繊細さと若い世代の自由な感覚が共存する場所。

Huさんによれば、上海に長く暮らす欧米の常連客も多く、ここ数カ月は日本や韓国からの観光客も目に見えて増えてきたという。多くの人が、ここでしか出会えない旅の土産として、アイテムを手に取っていく。

新しい店は、まだ出来上がっていない

これからは、より上質なアパレルラインにも力を入れ、さらに完成度の高いものづくりを目指したい。Huさんはそう話してくれた。

取材を終えるころになっても、新しい店はまだ完成していなかった。職人たちは変わらず作業を続け、新しい布が1枚ずつ壁に掛けられていく。

Huさんは再び店の奥へ戻り、職人と並んで、次はどの布をどこへ掛けるかを話し始める。


今回訪問したのは……

「囍方(FZ.H WITHIN)」

住所:No. 720 Changle Road, Jing’an District, Shanghai, China(上海市静安区長楽路720号)
営業時間:毎日10:00〜22:00
小紅書(RedNote):@FZ.H WITHIN
Instagram:@fangfang_hu_fzh

Text・Interview:kii

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