
世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、昨今到来している「日記ブーム」についてご紹介します。
「日記ブーム」が到来中!日々の記録に使える書籍も売上増
いま、日記が多くの人の間でブームとなっているのをご存知でしょうか。
そのトレンドは、株式会社新潮社が発行する『マイブック』の売れ行きにも顕著に表れています。

『マイブック』とは、新潮社の文庫本と同じサイズで作られた真っ白な本のこと。各ページに日付と曜日だけが印刷されており、日記として活用する人も多い商品です。

『マイブック』は、毎年秋ごろに翌年版の新しい冊子が発売されます。2026年版も、例年通り昨年秋に発売がスタート。すると、同書を手に取る人が20代女性を中心に瞬く間に増え、今年1月には発行部数が累計18万部を超えたといいます。新潮社の発表によれば、『マイブック』が単年で15万部以上発行されるのは実に24年ぶりのことだそう。それほど、日記が多くの人に広がりを見せているのです。
令和の日記ブームは「誰かとシェアする」のが特徴
日記というと、「毎日のできごとに対する個人の感情や思考を書き綴った、誰にも見せない冊子」というイメージを持つ方も多いかもしれません。
しかし、昨今のトレンドは異なります。個人的な内容を書いたものだったとしても、それを個で閉じてしまうのではなく、SNSなどで共有するのが大きな特徴です。たとえば、片思いをしている相手への恋模様を赤裸々に手書きしたページをTikTokで公開し、それに対してフォロワーなどから経験談に基づいたコメントが来るといったケースも珍しくありません。

また、日記をSNSには公開せずともZINEにまとめ、文学フリマや日記専門の書店などで販売する人もじわじわと増えているようです。そして、それを読む人も増加傾向にあるといいます。
「本心で誰かとやさしく繋がりたい」ニーズの現れ?
では、なぜいま、日記ブームが起こっているのでしょうか。
背景のひとつには、「SNS疲れ」がありそうです。昨今のSNSでは、企業だけでなく個人の投稿でも‟炎上”しているケースを目にすることが増えました。実際、インターネット上のリスクマネジメントなどを手がける株式会社エルテスのレポートによれば、SNSでの炎上件数が2026年4月に2022年以降で最多となったそうです。また、「いいね」やフォロワーの数を意識した‟よそ行き”の投稿、あるいはノウハウの共有に寄せた投稿を作成する人も増えています。そうしたSNS環境で日常のひとコマを気軽に書いたり、本心を語ったりするのは難しいと感じた人が、日記に手を伸ばしている可能性は大いに考えられます。

上述の内容を踏まえれば、書き手の本心や生活の断片を垣間見れるおもしろさが日記の読み手を増やしているとも言えそうです。この世界に生きる人それぞれに生活があり、たとえ自分とは遠い場所にいるような人でも、その生活の一部や感情は自分と似通っている。そうした気づきが、SNSに投稿された日記やZINEにまとめられた日記に読み手を向かわせているのではないでしょうか。
素の自分で、本心で、誰かとやさしく繋がりたい――。そんなニーズが、近ごろの日記ブームに隠れているのかもしれません。
古代から続く日記文化が令和に再び花開く。そのおもしろさも感じてみて
昨今多くの人に楽しまれている日記ですが、実は日本では、日記を書き、それを他者が読むという文化は古くから根づいていました。例えば、日記文学の元祖とも言われている紀貫之の『土佐日記』。これは男性の紀貫之が女性になりきって日記を書いたもので、歴史や古典の授業で習った人も多いと思います。あるいは、『源氏物語』の作者である紫式部も『紫式部日記』を作り、宮中でのできごとなどを記しています。ほかにも、和泉式部の『和泉式部日記』や藤原道綱母の『蜻蛉日記』、藤原道長の『御堂関白記』など、平安時代には男女を問わずさまざまな日記が書かれ、読まれていました。
その後、明治時代には樋口一葉がいくつかの日記を残したり、石川啄木が『明治41年日誌』を、永井荷風が『西遊日誌抄』を残したりと、日記文化の歴史は近現代まで持続。そして令和のいま、個人が日記を書いてSNSやZINEなどで発信し、それを読む文化が花開いているのです。
「日記を書いて読み合う」というひとつのカルチャーの裏側に、社会的な背景や脈々と続く文化の歴史がある。そう捉えてみると、昨今の日記ブームもさらに興味深いものに見えてくるのではないでしょうか。
References:
株式会社エルテス『ネット炎上レポート 2026年上期版』
Text:Teruko Ichioka






