
世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、AIの背後にあるさまざまな問題についてご紹介します。
圧倒的な進化を遂げたAI
いまや多くの人に身近なツールとなった生成AI。つい先日もOpenAIのChatGPTが「GPT-5.6 Sol」を公開したり、AnthropicのClaudeが「Fable5」を公開したりと、最新モデルが相次いで発表され、日増しに便利になっています。
Introducing a limited preview of GPT-5.6 Sol, our next generation frontier model, as well as GPT-5.6 Terra, a balanced model for efficient, everyday work, and GPT-5.6 Luna, a fast and affordable model for high-volume work.https://t.co/OoM83SyISN
— OpenAI (@OpenAI) June 26, 2026
最近は仕事やプライベートの活動で利用する人も増えており、総務省が今年7月に公表した『令和8年版情報通信白書』によれば、2025年度は国内で58.8%の人が「生成AIを使ったことがある」と回答したそうです。国外でも、アメリカやドイツでは約8割、中国では9割超えの人が生成AIを利用しているといい、一部の地域では暮らしに欠かせないツールとなりつつあります。
AIが抱える問題とは
しかし、便利なAIも、実はその背後にさまざまな問題をはらんでいます。例えば、先月には、OpenAIとAnthropicがそれぞれ、自社のAIモデルが能力評価の最中に隔離空間を抜け出し、実在する企業のシステムに不正アクセスしていたことを公表しました。
また、今年4月に登場したClaude Mythosは、世界で最も堅固なセキュリティだと評価されているオペレーションシステムなどにおいて、長年見過ごされてきた脆弱性を発見し、話題となっています。

進化したAIはいまや非常に高い能力を持っているとされ、悪用された際はビジネスの成否や国家の安全に大きな影響を与えるかもしれません。AIによるサイバー攻撃などに備えるべく、政府や企業らが対策を急いでいます。
環境への大きな負荷も
さらに、AIによる環境負荷の問題も明らかになりつつあります。
国際連合大学の水・環境・保健研究所(UNU-INWEH)が今年6月に発表した報告書『Environmental Cost of AI’s Energy Use: Carbon, Water and Land Footprints(AIのエネルギー使用に伴う環境コスト:炭素・水・土地のフットプリント)』では、AIが非常に多くの電力や水、土地を利用していることが明らかになりました。
例えば、AIを動かすために必要なデータセンターの電力消費量は、2025年に世界中で4480億kW時に達したと推計されるそう。これはフランス1か国の電力消費に匹敵するほどの量です。それが2030年には、9450億kW時に増加する見込みだといいます。電力を作る際には炭素を排出したり、水を消費したりしますから、AIが電力消費を通じていかに環境に影響を与えているかが分かります。

また、水については、2030年時点で9兆3000億Lを消費する可能性があるようです。これはサハラ以南のアフリカに暮らす13億人が最低限必要とする年間の水の量に相当します。土地についても、データセンターの電力使用に伴って、2030年には1万4500平方kmが必要になるといい、AIはこの先も環境に大きな負荷を強いる可能性があることが明かされました。
AIの恩恵と負担の地域格差も明らかに
国連大学の報告書は、AIの環境負荷だけでなく、その恩恵と負担の地域格差にも言及しています。
例えば、メキシコのケレタロ州では、干ばつが長引く中でAI関連のインフラ整備が拡大。水資源を圧迫しているといいます。また、ウルグアイでは、首都モンテビデオでデータセンターの建設計画が干ばつと重なり、安全な水道水が飲めなくなったそうです。さらに、AIの稼働によって生じた電子廃棄物は、鉛などの有害物質も数多く含んでいますが、安全管理が不十分な低所得国で処理されているといいます。

その一方で、AIの恩恵は一部の国に集中。データセンターを持つ国は世界で32か国ほどで、その能力の9割は2カ国に集中しています。世界の国々における公平性の観点からも、現在のAIには問題があると言えるのです。
生成AIを持続可能な形で使うには?
では、なるべく持続可能な形でAIを使うためにはどうすれば良いのでしょうか。
国連大学の報告書では、持続可能性と公平性を担保するために、AI開発・利用について透明性や多国間協力など6つの原則に基づいたガバナンスの枠組みを構築することが必要ではないかと提案しています。
また、環境負荷については、生成AIを利用する際に不要な入力をなるべく避け、最もエネルギー消費の少ないタスク処理の形式を採用するよう呼びかけています。例えば、AIが何かタスクを完了させた際に「ありがとう」と入力するのを避けたり、タスクを開始する前に「お願いします」という文言を追加するのを避けたり、といったことが省エネ対策として有効なのだそう。

生成AIのひとつであるChatGPTは、世界で1日あたりおよそ25億回ほど使われているといいます。その電力消費量は、年間で383GW時になると見積もられ、回答を簡潔にするよう設定するだけでも、年間で87~98GW時の電力削減につながるとされています。これはアフリカのサハラ砂漠以南に住む約76万人が1年間に使う電力量に匹敵します。わたしたちの利用の仕方ひとつで、環境に与える影響が大きく変わるのです。

非常に便利な生成AIは、普及と発展の歴史が浅いこともあり、まだその裏側に多くの問題を抱えています。AIの恩恵を多くの人が享受し、利用し続けられるようにするためにも、わたしたち自身が日頃利用する際の行動を振り返ってみる必要があるのかもしれません。
References:
総務省「令和8年版情報通信白書(概要)」
国連大学水・環境・保健研究所(UNU-INWEH)『Environmental Cost of AI’s Energy Use: Carbon, Water and Land Footprints(AIのエネルギー使用に伴う環境コスト:炭素・水・土地のフットプリント)』
Text:Teruko Ichioka






