
「気になる10代名鑑」の1374人目は、束田さん(19)。複数人でのディスカッションをアシストしてくれる「ファシリテーションAI」の研究開発に取り組んでいます。大学生活では空きスペースを活用して立ち上げたカフェの店長も務める束田さんに、AI開発のきっかけやこれからのビジョンについて聞いてみました。
束田を知る5つの質問

Q1.いま、力を入れていることは?
「対話やディスカッションで使われるような、ファシリテーションAIの研究と、学生主体のカフェ『endores』の運営です。
ファシリテーションAIは、複数人で議論するときになかなか発言できなかったり、折角アイデアを持っていても伝えられなかったりする人の意見を、AIの力でうまく引き出そうとするものです。現在はLLM(大規模言語モデル)を活用して、会話の文脈を理解しながら議論の進行をするシステムをつくっている真っ最中です。
もうひとつの活動である、コミュニティカフェ『endores』では、ぼくは3代目学生店長を務めていて。マーケティング・デザイン・アプリ開発などなど、あらゆる分野の学生が携わって経営しています。ただのカフェではなく、カフェ空間内で学生同士が出会い、やってみたいことが実現していくハブの役割を果たすために、これまでに音楽会や教授との座談会など、さまざまなイベントを展開してきました。ときには建築を専攻しているendoresメンバーが木を切り出してきて、カフェに新しい設備をつくったり、学生の手でいちから新メニューを開発・販売したりすることもあります。
AIとカフェという一見違うアプローチですが、どちらも『人が本来持っているアイデアや個性を、もっと発揮しやすい環境がつくりたい』という根っこにある思いは同じです」

Q2.活動を始めたきっかけは?
「もともと、ぼく自身がコミュニケーションに苦手意識を持っていたことがきっかけです。
中学生から電子技術研究部でプログラミングや開発に取り組むようになって、部活の仲間とコンテストに出ることに熱中していました。
ただ、いいアイデアを思いついても、うまく言葉にできずに仲間との議論に出せないことが多かったんです。ぼくより技術力の高い人がいると、『こんなことを言っていいのかな……』と遠慮してしまうこともあって。せっかくアイデアを持っているのに、コミュニケーションの壁で実現できないのはもったいないという想いが、いまの研究につながっています。
一方、endoresは、純粋にコーヒーが好きだったことから活動を始めました。その中で、どうすればendoresをコミュニティカフェとして成長させられるのかを考えるようになって。もともと学生の自由な集まりだからこそ、endoresメンバーがプロジェクトを気軽に立ち上げて、実現しやすい環境づくりがしたいと思ったんです。その結果、実際に新ドリンクメニューをつくるといった新しい試みが発足するようになりました。お客さんがそのドリンクを飲んで喜んでくれたときは格別のうれしさでしたね」

Q3. 活動で大切にしていることは?
「『みんながそうしているから』に流されず、自分が面白いと思う方向に進んでみることを大切にしています。
プログラミングを始めたときから、基礎を教科書上で勉強するよりも先に、まず手を動かして応用に取り組むことを大事にしてきました。無理に勉強するより『これをつくってみたい!』という強い気持ちに突き動かされた方が知識も自然と身につくし、何より楽しいんです。
ぼくが高校生のとき、株式会社マクアケの代表取締役社長・中山亮太郎さんのお話を聞いて、『逆張りをすることが大切』という言葉が強く印象に残っていて。周りが勉強して大学に行くことを当たり前のように考えている中で、プログラミングやコンテストに夢中になることは逆張りの道でしたが、中山さんのお話を聞いてそんな生き方もいいなと思えたんです。
逆張りでもいいから、むしろ自分が面白いと思う方向に行ってみようという感覚が、その頃からぼくの中に息づいています」
Q4.活動を通して、実現したいビジョンは?
「誰もがチームメンバーの能力を最大限発揮させられる組織運営ができるようにしたいです。
これまで人間は、仕事を通じて自然と『何をするか』が与えられていました。つまり、仕事という主体性の発揮先があったんです。けれど、これから仕事の多くをAIが担うようになれば、『自分は何をしたいのか』を自分自身で考えて、主体的に行動することがより大切になると思うんです。
だからこそ、まずはファシリテーションAIによって、これまで焦点のあたりにくかった主体性の向け先となるアイデアを引き出せるようにしたいです。その先に、ファシリテーションだけではなく、『こんなものをつくってみたい』『これをやってみたい』と思ったときに、そのアイデアを実現まで補助するようなシステムもつくってみたいですね」

Q5.将来の展望は?
「ぼく自身の専門領域にとらわれず、面白そうだと思ったことをかたちにし続けていきたいです。
ぼくは、『これやりたい!』とアイデアを思い立つと、急に新しい趣味やデバイスの開発に取り組むことが多くて。実は最近は自分の生活スタイルに最適化したスマートウォッチを自作しています(笑)。こんな感じで自分の興味をかたちにしていきたいですね。
endoresでは、やってみたいことを実現できる経験をたくさんの学生に届け、コミュニティカフェとしてさらに成長させていきたいです。こたつを置くなど空間そのものを変えたり、来店記録アプリで自然と足を運びたくなる仕掛けをつくったり、楽しみながら変化をつくっていきます。
これからも一人ひとりの『やってみたい』を支え、周囲を巻き込みながらいっしょに面白がってアイデアを実現していきたいです」

束田のプロフィール
年齢:19歳
出身地:東京都江東区
所属:慶應義塾大学、endores
趣味:コーヒー、アニメ
特技:ハンドドリップ
大切にしている言葉:逆張り
Photo:Nanako Araie
Text:Taishi Murakami






