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なぜ、わたしたちは言語を学ぶのか(後編)Mirei in Paris #12【Steenz Abroad】

なぜ、わたしたちは言語を学ぶのか(後編)Mirei in Paris #12【Steenz Abroad】

こんにちは。2025年9月からフランスに留学しているMireiです。

前回は、わたし自身が言語を学んできた経緯についてお話しました。今回は、最近出会ったある言語との出会いを通じて、「言語を学ぶとはどういうことか」という問いを、もう少し深く考えてみたいと思います。

「便利」「おしゃれ」の裏にある歴史

フランス語と聞いて、何を思い浮かべますか? エッフェル塔、おしゃれなカフェ、ファッションショー……。そんなイメージを持つ人も多いかもしれません。でも、この言語が持っているのは、輝かしい側面だけではありません。フランス語は歴史の中で、植民地支配の道具として使われ、多くの人々を苦しめ、差別や支配と結びついてきた言語でもあります。

「フランス語はおしゃれ」「英語は役に立つ」。私たちは、その言語の持つポジティブなイメージをモチベーションに学びはじめがちです。でも、言語を学ぶということは、その言語が歩んできた歴史ごと受け取るということでもある。少し大袈裟に言えば、フランス語を学ぶことは、フランス的な視点を手に入れることにもなるのです。

ハイチ人家族とのホームステイ、オーランドにて


いま、わたしが滞在しているのはアメリカ・フロリダ州のオーランド。ここには、ハイチから移住してきた多くの人々が暮らしています。わたしは現在ハイチ人のお父さん、日本人のお母さん、そしてかわいい3兄弟がいるお家にホームステイしています。

世界初の黒人奴隷革命による独立国、ハイチ

かつてフランスに植民支配されていたハイチは、1804年、世界で初めて黒人奴隷による革命によって独立を果たした国となりました。しかし、その歓喜は束の間。独立を承認してもらう条件として、ハイチはフランスに莫大な賠償金の支払いを求められます。この負債の返済がハイチを長期間にわたって圧迫し続けます。そこに追いうちをかけるように大地震、大統領暗殺が起こり、現在のギャング支配へとつながっていきました。

今回わたしは、フロリダで暮らすハイチ出身の方々数名に、直接インタビューをする機会をいただきました。

ハイチの歴史が凝縮した言語


現在、ハイチの人々はアメリカやカナダを中心に世界中へ亡命しています。祖国が危険な状況にあっても、住む場所が違っても、彼らはあるひとつのものを通じて強くつながっています。それが「ハイチ・クレオール語」です。この言語は、アフリカから奴隷として連れてこられた人々の言語、植民支配をおこなったフランスのフランス語、そしてカリブ地域で話されていた言語が混ざり合うことで生まれました。まさに、ハイチの歴史そのものを体現するような言語と言えるでしょう。

インタビューでは、こんな声を聞きました。

「ハイチ・クレオール語は、ことわざと民話でできた言語。かつて文字が存在しなかったこの言語では、大切なことは親から子へ、民話を語り継ぐことで受け渡されてきたの。フランス人が話すことを禁じても、人々は話し続け、守り続けたのよ。」

どの言語にも代えられないもの

別の方は、こう話してくれました。

「私は、フランス語と英語も話せるけれど、ハイチ・クレオール語でしか言えないことがある。伝えられないことがある。それはどの言語にも代えられない。」

言語は、人々の記憶であり、アイデンティティであり、つながりそのものです。この言語が存在し続ける限り、ハイチという国は、たとえ国土がどれほど傷ついたとしても、強く存在し続けるのだと思います。

言語を学ぶということ

ここで、前回立てた問いに戻りたいと思います。

「言語を学ぶとは、どういうことか。」

わたしもフランス語をはじめとする多くの言語を長く学んでいます。その最初のモチベーションは、正直なところ、フランス語の響きがおしゃれだから、フランス人と話してみたいから。そんな、ごく表面的なものでした。でも、さまざまな言語話者との対話を重ねるうちに、言語を学ぶということは、単に単語や文法を習得すること以上の営みなのではないかと思うようになりました。その言語を話す文化圏で生きてきた人々の歴史を、痛みを、誇りを、そして世界の見方を、少しずつ自分の中に受け取っていくことなのではないかと思うようになりました。

フランス語は本当に美しい言語です。でも同時に、支配の道具として使われてきた歴史も持っています。一方で、ハイチ・クレオール語のように、禁じられながらも人々が守り続けてきた言語もあります。どの言語を学ぶかは、どんな視点を持つかでもあります。「便利だから」「おしゃれだから」という入口があってもいい。でもその先に、その言語が背負ってきた歴史にも目を向けながら、わたしはこれからも言語と向き合っていきたいと強く思います。

あなたは、なぜ言語を学びますか?

巴山未麗(Mirei)のプロフィール

東京都出身。フランス・パリの言語大学に留学中の大学4年生。言語がとにかく大好きで、留学先の大学ではウォロフ語を専攻する他、ビスマラ語、マラガシ語、シンハラ語なども学んでいる。

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巴山未麗

2003年生まれ。これまで45以上の国を訪れ、現地家庭でホームステイをしながら調査した言語は50以上。セネガル人向けフランス語学習アプリLEUK STUDYの開発を経て、ビジネスやクリエイティブの視点で少数言語の新しい価値を生み出すことを目指しkotohaを立ち上げる。慶應義塾大学在学中。

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