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病室の中高生の心は、ChatGPTでは寄り添えない。脳腫瘍の経験から“寄り添うAI”を開発するAIアーキテクト【鈴木真理・18歳】

病室の中高生の心は、ChatGPTでは寄り添えない。脳腫瘍の経験から“寄り添うAI”を開発するAIアーキテクト【鈴木真理・18歳】

「気になる10代名鑑」の1345人目は、鈴木真理しんりさん(18)。AIと感情分析技術を活用して、人の心を支えるプロダクトの開発に取り組んでいます。高校1年生での闘病経験をきっかけに、「技術は人の心を支えるためにある」という価値観を持つようになったという鈴木さんに、活動への想いや、これからのヴィジョンについて聞いてみました。

鈴木真理を知る5つの質問

Q1.いま、力を入れていることは?

入院中の中高生が、お悩み相談の相手として活用できるAI『Polaris(ポラリス)』の研究開発に取り組んでいます。

ぼくは、小学校1年生のときにプログラミングを始めてからというもの、ハッカソンなどへの参加を通して、社会を動かすためのものづくりに挑戦してきました。電車恐怖症や会議室恐怖症を持つ人に向けて、電車や会議室への恐怖心を和らげるためのVR空間を作ってみたり、IT企業3社のエンジニアインターンをして企画から開発、リリースまで、一連のプロダクト開発に携わったりもしてきました。

いま取り組むPolarisは、言葉だけでなく表情や感情の変化も読み取り、一人ひとりの状況に合わせて寄り添えることが特徴です。北極星の意味を持つPolarisという名前には、大航海時代に船乗りが北極星を頼りに進んだように、悩みの中にいる子どもたちの道しるべになれたらという願いを込めていて。病気や悩みを抱える中高生へのヒアリングを重ね、当事者の声を反映した開発を進めています。

この活動を継続的に社会へ届けるため、一般社団法人ウェルネステックラボを設立し、開発の傍ら、代表理事兼CTOとして法人運営にも取り組んでいます」

Q2.活動を始めたきっかけは?

高校1年生の冬に、病院で脳腫瘍を宣告されて。突然字が書けなくなり、2ヶ月の入院生活を余儀なくされたことがきっかけです。

ぼくにとって病棟は、スタバもコンビニもあるしテレビもみられる、好きなことをして過ごすには最強の環境で(笑)。『どうせなら人生を最後まで楽しもう』と前向きに考えて、大好きなプログラミングに没頭する入院生活を過ごしていました。ですが対照的に、病室には、病気や怪我をきっかけに夢や希望を失ってしまう同世代の仲間がいました。『病室では、体の治療はできても、心の支えは十分に届いていないんだ……。』という実情を知りましたね。

入院中、ぼくもChatGPTに不安を相談することもありましたが、返ってくるのは一般論や正論が主で、病室で感じている孤独や不安とはどこか噛み合わない感じがあって。もっと人の気持ちに寄り添えるAIが必要だと思いましたし、『技術は人の心を支えるためにある』と感じるようになり、開発に着手しました」

Q3. 活動で大切にしていることは?

現場の声を聞き、自分がつくったものを改善し続けることです。

Polarisの開発を進めているころ、当時入院している身ではありながら(笑)、主治医の先生たちに直接プレゼンをおこない、大学病院で実証の機会をもらうことができて。患者さんに加え医師や看護師の方々にもPolarisを使ってもらってみると、『前の会話を覚えていない』『自分の内面について機械的に聞いてくる』など、ぼくだけでは気づかなかった課題がたくさん見えてきました。想いだけではいいプロダクトはつくれないんだと学びましたね。

いまは、そうした現場の声をもとに、大規模言語モデル(LLM)や表情分析技術(FACS)の技術を取り入れ、より自然に人に寄り添うAIを目指して開発を続けています。法人運営や勉強との両立は大変ですが、現場からのフィードバックを受けて少しずつよくしていく過程にはやっぱり面白さがありますね」

Q4.活動を通して、実現したいビジョンは?

誰もが自分だけの『北極星』を見つけ、自分らしい未来へ進める社会をつくりたいです。

ぼくは、人間にしかできない寄り添いがある一方で、AIにしかできない寄り添いもあると思っていて。人には話しづらい悩みでもAIには打ち明けられることがありますし、24時間いつでも隣にいてくれることもAIだからこそできる価値ですよね。

だからPolarisは、人間の代わりになるAIではなく、人間だけでは支えきれない部分を補う存在にしたいと思っています。カウンセラーや先生、家族と対立するものではなく、その間に寄り添い応援してくれるもうひとりの味方、もっといえば『ドラえもん』みたいな存在を、皆が持っていられる世界だったら、辛いことがあってもよりどころができて、頑張れるんじゃないかって思うんです。

ぼく自身、ウェルネステックラボを立ち上げてみて、多様な専門性を持つ人たちと開発することで、アイデアが社会に届くスピードは大きく変わると実感していて。このラボをハブとしてPolarisを教育や医療、福祉の現場まで社会実装することで、病室にいる子どもたちをひとりでも多く笑顔にしたいんです」

Q5.将来の展望は?

海外の大学院でコンピュータサイエンスを学び、心理学や法律も横断的に理解しながら、人とAIの関係を設計できるAIアーキテクトになることが目標です。

ぼくの人生観を表している言葉が、プログラミング言語Pythonのリスト型から着想を得た『Future = [ ]』です。未来は空のリストのようなもので、やりたいことが見つかれば『append( ) 』で追加すればいいし、違うと思ったら『remove( ) や pop( ) 』で削除したり、『clear( ) 』で方向転換したっていい。未来は決まっているものではなく、自分で書き換え続けられるものだと思うんです。

病気や困難があっても夢を諦めなくていい社会を実現するため、これからもぼく自身の未来を自由に変えていきます」

鈴木真理のプロフィール

年齢:18歳
出身地:神奈川県茅ヶ崎市
所属:慶應義塾大学総合政策学部(SFC)、一般社団法人ウェルネステックラボ,Makers University U-18 10期生
趣味:読書、ネイル、ランニング、プログラミング、チェス
特技:プログラミング、ポジティブ変換
大切にしている言葉:後悔するよりはスタートラインを描こう、Future = [ ]

鈴木真理のSNS

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Photo:Nanako Araie
Text:Taishi Murakami

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Taishi Murakami

ライター

2006年生まれ。慶應義塾大学2年。民俗学をはじめ、マーケティングやパブリックアフェアーズなどの領域を横断的に学ぶ。「大切にしたいものをきちんと大切にする」をモットーに、現在はヘルスケア領域での起業に向け邁進中。PRマーケターとしての顔も持ち、事業づくりと発信の二面からひとの営みを優しく未来へつなぐ方法を探求している。

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