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気候変動対策でケニアの遊牧民が土地利用を制限されている?カーボンクレジットが抱える課題とは【Steenz Breaking News】

気候変動対策でケニアの遊牧民が土地利用を制限されている?カーボンクレジットが抱える課題とは【Steenz Breaking News】

世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、ケニアのカーボンクレジットをめぐる問題について紹介します。

CO2削減量を売買する「カーボンクレジット」

温室効果ガスの排出を減らすために、企業などがCO2の削減量を売買するカーボンクレジット。たとえば、ある企業が森林保護や植林、草原の保全などによってCO2を削減した場合、その削減量に応じてカーボンクレジットが発行されます。発行されたクレジットの取引先は、船舶や航空などの輸送業界、テック企業など、大量の温室効果ガスを排出している企業。自社だけでは削減しきれない分を補うために、温室効果ガス排出を軽減または除去する事業者から「カーボンクレジット」を購入することができるのです。

近年では、テック企業の温室効果ガス排出量が急増しています。マイクロソフトの温室効果ガス排出量は、2020年以降およそ30%増加。Googleの2023年の排出量も、2019年と比べて約50%増加しています。背景にあるのは、AIの普及に伴うデータセンター需要の拡大です。生成AIとのやりとりはWeb検索の何倍もの電力を消費すると指摘されています。

カーボンクレジットプロジェクトによるケニアの放牧管理

カーボンクレジットを発行するプロジェクトは世界各地でおこなわれていますが、そのうちのひとつがケニアです。

マサイ族など10万人以上の遊牧民が暮らすケニアの草原地帯では、保全団体が放牧を管理し、草原の回復や土壌劣化を防止することでCO2を削減。数百万トンの炭素を除去することを目標に、カーボンクレジットを発行しています。

これらのカーボンクレジットは、NetflixやMetaなどの大手企業が購入しています。

しかし、こうした放牧管理が、マサイ族など先住民族の生活様式に影響を与え、先祖代々利用してきた土地へのアクセスが制限されているとして、現地住民からは批判の声が上がっているというのです。マサイ国際連帯同盟は「生態保全は放牧民が主導するべきであり、経済的に豊かなグローバルノースに支配させるべきではない」と主張しています。

2025年、ケニアの裁判所はカーボンクレジットを発行するプロジェクトを中断。先住民コミュニティの同意を得るプロセスなどに問題があったことが理由だとされています。

 

環境保護と先住民の権利、両立は可能か?

カーボンクレジットは、森林や生態系保全の資金源となり、CO2削減の取り組みを経済的に後押しできるメリットがあります。

一方で、カーボンクレジット発行のために利用できる土地の多くは途上国にあり、政治的・経済的に弱い立場に置かれた人々が暮らしているという指摘も。過去には、ノルウェー企業が購入したカーボンクレジット発行の事業が、ウガンダとモザンビーク、タンザニアでの住民の強制退去、食糧不足につながったとする報告もあります。

このような気候変動対策における偏った構造を「気候植民地主義」と呼ぶ場合もあります。ケニアでのケースも、環境保全と地域住民の権利をめぐる問題が入り混じり複雑化しています。気候変動対策を進める上では、温室効果ガス削減だけでなく、その負担を誰が引き受けるのかという視点も欠かせません。

References:
WORLD ECONOMIC FORUM「AI技術による環境への影響~二酸化炭素排出量の削減とエネルギー効率の改善~」
Survival「New report reveals major flaws with flagship carbon credits scheme on Indigenous land in Kenya」
Business and Human Rights Centre「Kenya: Court suspends Netflix and Meta’s carbon credits project over land dispute with Maasai herders」

Text:Hao Kanayama

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Hao Kanayama

ライター

ウガンダ在住。アフリカ専門ライター/音楽フェス・イベントプロダクション等。不条理で不都合な世界だけど、その先にある希望を求めて歩き続ける、アフリカの人々の暮らしをわたしの目線から伝え続けたい。

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