Fashion&Culture

ひっそりと佇む中国・武漢のフェミニズム系の独立書店。 街の片隅で、「彼女たち」のためのドアをひらく。

ひっそりと佇む中国・武漢のフェミニズム系の独立書店。 街の片隅で、「彼女たち」のためのドアをひらく。

近年、東京には中国にルーツを持つニューカマーが増えてきています。彼らの存在をきっかけに、中華カルチャーに触れる人が増えてきました。上海や成都など、SNSでますます中国に視線が集まる今、近いようで遠い現地のユースカルチャーをウォッチ。政治の世界ではなにかと難しい関係になりがちな中国ですが、カルチャーに罪はないはず。ということで、中国・武漢出身のSteenzライター・kiiが地元のカルチャーを紹介します。

今回は、中国でも教育・産業の中心地であり、多くの大学生や若い世代が暮らす「活気ある若者の街」、武漢にある一軒の書店をレポートします。

ひっそりと佇むフェミニズム書店

中国・武漢で初のフェミニズム書店である「BlissfulRose Bookstore」は、古い集合住宅の一室に静かに身を潜めています。書店の名前には、「女性がバラのように『棘を持って燃える』存在となり、身体と魂のよろこびを手にしてほしい」という願いが込められているそう。この書店は「觉察即自由(気づきこそ自由)」という理念のもと、女性にとって安心でフレンドリー、そして心地よく交流できる場づくりを目指しています。

店では週に1回、10人規模で学生たちによる読書会が開かれています。訪れた人たちはここで自由にフェミニズムに関する本を読み、それぞれの言葉で想いを語り合います。

中国におけるフェミニズム運動は、社会の大きな変化の中で生まれたものとして位置づけられ、国家近代化の流れと密接に結びついています。2010年代以降、SNSの普及や「#MeToo」運動などをきっかけに、フェミニズムへの関心は高まってきました。現在も多様性やジェンダーの問題は広く議論されて、中国ではこれらをテーマにした映像作品(例:『好东西』『出走的决心』)も多くみられます。

女性作家とフェミニズム書籍のセレクト

BlissfulRose Bookstoreは2023年に武漢でも中心地からほど近い江汉路でオープンし、1年間の営業を経て、2024年に現在の場所へ移転しました。「この場所を選んだ理由は、家賃が比較的手頃で空間の広さもちょうどよく、さらに周辺に大学が多いので、知的好奇心の高い学生が集まっているためです。」と店主のVさん。
フェミニズム書店と言っても、フェミニズム関連の書籍は奥の部屋に置かれています。一見すると、この配置に違和感を覚える人もいるかもしれませんが、なぜこのようにしているのでしょうか。
それは、店主が中国文学を学んだ経験を持ち、より多くの人に女性の語り口で書かれた作品を知ってほしいと考えているためです。入口近くの部屋には、女性作家がずらりと並んでいます。お店に来たお客さんが自然と女性の視点に触れられるように設計されています。その奥にはフェミニズムへの理解を深める手がかりになる心理学や政治学など社会科学の書籍も。

選書は主に店主の好みによるものですが、書店を利用する方や読書会の参加者などの意見も取り入れながら、選ばれているそうです。

中国・武漢に息づくフェミニズムとその実践

 

店主のVさんに書店やフェミニズムの動きについて聞いてみました。

3月8日は国際女性デーにまつわるイベントも行っていたようですが、どのようなことを行なっていましたか?
昨年の国際女性デーには、武漢で最大規模の女性限定上映会を開催し、『プライマ・フェイシィ』と『ドマーニ! 愛のことづて/まだ明日がある』に500名以上が参加しました。今年は、『プライマ・フェイシィ』と同じ制作チームによる新作映画『Inter Alia』の上映を予定です。よりテーマが複雑に絡み合い、考えさせられる作品で、映画を通してフェミニズムの意味や日常での実践を改めて考えたいと思います。

中国におけるフェミニズムの状況、特に武漢の様子を教えてください。
とても大きなテーマで、論文にしても語り尽くせない問題だと思います。個人的には、特に中国におけるフェミニズムは、歴史的背景や社会的構造と切り離しては語れないと考えています。それでも、性差そのものを完全に否定することは難しい一方で、現実を踏まえながら不平等の溝を乗り越えていく可能性はあるのではないでしょうか。

私たちの書店も含めて、武漢ではフェミニズムに関するいろいろな活動がよく行われています。たとえば、詩をテーマにしたイベント、アートサロン、学術トークとお酒を楽しむ場、ZINEのワークショップなど、かたちもさまざまです。

コロナとネット通販が書店に与えた影響

コロナ禍、武漢はニュースでも取り上げられていましたが、この経験はご自身や独立系書店のあり方にどのような影響を与えましたか?
コロナ禍を経て、顔を合わせてつながることの大切さを改めて実感しました。街に少しずつ活気が戻っていく中で、人の心もまた温もりを求めていると感じました。だからこそ、一人ひとりの女性が他者とのつながりやコミュニティの存在を実感できるような場があればと思っています。
また、多くの書店が経営難に直面し、やむなく閉店に追い込まれました。その後も、独立系書店が生き残るのは決して簡単ではありません。でも、自分の好きなこと、そして正しいと信じることをやっているという実感があるからこそ、これからも続けていきたいと思っています。

中国ではITの進歩によりオンラインショッピングが発達しましたが、実店舗の書店はどのような影響や変化がありましたか?

中国では、オンラインの価格が実店舗より安いことが多く、消費者が自然とネットで購入を選ぶ傾向があります。さらに電子書籍の普及もあり、紙の本を扱う書店に一定の影響があるのも事実です。それでも私たちは、女性が安心して心地よく語り合い、自由に活動できる場をリアルな空間でつくり続けたいと考えています。

また、オンライン上の読者にも人と人とのつながりを感じてもらい、厳しい運営状況を少しでも改善するために、99元(およそ2,300円 ※2026年5月現在)の「本のブラインドボックス」を販売しています。内容は、女性作家やフェミニズム関連の書籍1〜2冊に加え、サイン本や特装版、絶版書の1冊、さらにバッジやトートバッグ、キーホルダーなどのグッズ1点、そして手書きの手紙をセットにしています。

社会学的なフェミニズム理論に限らず、フェミニズムの視点をもつ文学作品や、女性の作家、アーティストに関する書籍など、いずれも良書を丁寧に選んでいます。

書店のこれからと展望

書店のこれからについて、どのような期待や展望、またはご計画をお持ちでしょうか?
今のこの書店がこれからも続いていってくれたらいいなと思っています。それと、いつか日本でも独立書店を開けたらいいな、と密かに思っています(笑)。

 

今回訪れたのは

「BlissfulRose Bookstore」

アクセス・詳細
Northeast 60 meters from the intersection of Hongwu Road and Qunguang South Road, Hongshan District, Wuhan, Hubei Province, China.

営業日:
火曜日定休 14:00〜21:00営業

Red note:
@极乐玫瑰书社

Text・Interview
kii

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