
「気になる10代名鑑」の1311人目は、坂本留梨子さん(17)。模擬国連やユース世代の政策提言の経験を通して、持続可能な開発に関わっています。これまで数々の国際協力の現場に携わってきた坂本さんに、活動の原点やこれからのビジョンについて聞いてみました。
坂本留梨子を知る5つの質問

Q1.いま、力を入れていることは?
「持続可能な開発を目指して、ユースアドボカシー活動に力を入れています。
アドボカシーとは、声をあげにくい環境下にある人の代わりに声をあげることで、法律や政策に影響を与える活動のことを指していて。これまで、政策提言・アドボカシー団体JYPS(Japan Youth Platform for Sustainability)で、政府に対して日本のユースの声を届ける政策提言活動に取り組んできました。JYPS事務局員として参加したCOP30では、LCOY(日本のユースの声を集めるための会議)でまとめた提言を提出するという経験もして。
開発分野の課題はインフラのような、大規模な話だけでなく、食料確保など生活そのものの前提に深く根を張るものも多くあります。こうしたジャンルであれば、若者たちでも比較的インパクトを与えやすいのではないかなと思っていて。わたしは、その中でも特に環境問題に関心を持っています。
なので、最近は環境保全型農業に取り組むベンチャー企業でのインターンを始めて、カーボンオフセットのプロジェクトに関わっています。わたしはこれまでは国連や政府など国際交渉の場を中心に活動してきたので、より柔軟に現場へ入り込み、草の根レベルから課題解決に関われるビジネスの視点は新しい発見が多いですね」
Q2.活動を始めたきっかけは?
「中学3年生の11月に学校の先輩を見て始めた模擬国連がきっかけです。
模擬国連では、国連を模した会場で中高生が各国の大使になりきり、国際課題について議論をしていきます。わたしはニューヨークでの国際大会等、各地の大会で議論と交渉を重ねてきました。なかでも、60カ国以上の国とオープンに交渉を重ねながら信頼関係を築き、決議案を作り上げる非公式討議(アンモデレート)では高い交渉力が求められるので、わたし自身の交渉力を大きく成長させることができました。
一方で、途上国が直面する現実の深刻さを知るほどに、議論が曖昧な合意のまま終わってしまうことへの違和感を抱くようになっていって。支援の必要性は共有されても、実際に誰がどれだけ負担し、どう実行するのかまでは詰めきれない場面にはもどかしさを感じました。実際は、国益の衝突の大きさから議論が行動に結びつきにくい現実があるんですよね。
そこで、より実行の部分に関心を持つようになって。日本の若者として政策を実際に機能させる現場に携わりたいと、ユースアドボカシー活動を始めました」

Q3. 活動で大切にしていることは?
「希望を持ち続けることを大切にしています。
国際問題や環境問題では、現実の複雑さや、簡単には変わらない構造に直面することも多くて。理想を語ること自体、どこか綺麗事のように受け取られてしまう場面もある気がしています。
わたし自身、自分の考え方が『理想主義的なのではないか』と悩んだこともあります。それでも、幼い頃から本を読んでは想像の世界に浸ることが好きだったからか、よりいい未来を思い描くことは、わたしにとってずっと自然なことなんです。
人権活動家のエレノア・ルーズベルトさんも “The future belongs to those who believe in the beauty of their dreams.(未来は、自分の夢の美しさを信じる者の手にある)” という言葉を残しています。理想を語るだけでは変わらないかもしれません。それでも、理想を信じ、希望を持って行動し続けることで、社会を少しずつ前に進められると思っています。
少しくらい薔薇色の眼鏡をかけていたとしても、わたしは希望を持ち続けたいんです」
Q4.活動を通して、実現したいビジョンは?
「誰ひとり取り残さない社会を実現することです。
国際社会では、貧困や紛争の解決に向けた交渉や協働が日々おこなわれています。しかし、それ以前の段階で、最も困難な立場に置かれている人たちの声が意思決定の場に届いていないことも大きな問題だと思っていて。
これまでの経験から、多くの人の意見を集約し、社会に反映することの難しさを感じてきました。だからこそ、わたしは声なき声を聴き、見えにくい課題を拾い上げることを自分の役割として大切にしたいと思っています。
考える必要がないと言われることは、生きる必要がないと言われることと同じです。誰かの声が届かないということは、その人の存在や思いが社会から見過ごされてしまうことでもある。だから、交渉や政策設計に加えてビジネスの現場にも関わりながら、トップダウンとボトムアップの両方から社会を動かしていきたいんです」

Q5.将来の展望は?
「将来は、より多くの人の声を社会に届けながら、世界を少しでも良い方向へ変えていきたいです。
わたしは、交渉とは単に対立を解消することではなく、異なる価値観をより高い次元で統合していく営みだと思っていて。ドイツ語の『Aufheben(アウフヘーベン)』という言葉のように、違いを否定するのではなく受け止めながら、新しい可能性を生み出していきたいんです。
思えばわたしは、努力家の友人や尊敬する先輩、世界各地で出会った活動家たちの姿を通して、何度も勇気や学びをもらってきて。わたし自身は、さまざまな人の価値観や生き方の一片一片が重なってできた“モザイク”のような存在だと思うんです。
人との出会いをわたしを更新し続けてくれる大切な原動力に変えて、これからもわたしのできることから挑戦していきます」

坂本留梨子のプロフィール
年齢:17歳
出身地:東京都
所属:渋谷教育学園渋谷中学高等学校
趣味:読書、ダンス、旅
特技:適当に話し続けること
大切にしている言葉:過去には感謝を 現在には信頼を 未来には希望を
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Photo:Nanako Araie
Text:Taishi Murakami






