
「書評アイドル」として執筆活動しながら、モデルなど幅広く活動している21歳のわたし、小春による書評フォトエッセイ連載企画 “Steenzブックレビュー”。
今回は、「変わらないものを求めてしまう人へ」におすすめの1冊『すきまのおともだちたち』です。今回も、わたしと同じく以前10代名鑑に出演されていた写真家の村山莉里子さんに撮影をいただいて、「変わらないものを求めてしまう人へ」をコンセプトに、新しい本との出会いをみなさんに届けられたらと思います。
何もしてないはずなのに変わっていくことが怖い

わたしもついに学生を終える。近頃は、大学1年生の時から続けたバイトが終わって、小学1年生の時から続けていた習い事も終わって、大学を卒業して、毎日何かの終わりを感じる日々を過ごしている。まだ何の実感も伴わなくてただ慌ただしいだけだ。寂しいという感情の前に、何もしていないはずなのに、わたしという存在がどんどん変わっていくようで怖い。いつの間にわたしは女の子でも少女でもなくなってしまったのだ。今回紹介する本は、ある小さな女の子にまつわるお話だ。

新聞記者として働く主人公は、仕事帰りに道に迷ってしまった。そこで出会ったのは、10歳くらいの小さな女の子。迷い込んだ世界は、お皿や風呂敷など物が喋ったりするちょっと不思議な世界。主人公は「旅人」として女の子のいる世界を旅することになる。縛り付けるのは過去の幸せな思い出たち「このままでいたい」と願ってしまうのは、今のこの時間が幸せだと感じるからだと思う。でも、この願いは永遠に叶わない。時間は残酷だ。時間が過ぎていくことは何かを失っていくことでもある。

お皿は、「私たちをほんとうにしばるのは、苦難や災難な戸棚ではないのよ。幸福な思い出なの。」という。わたしたちが過去を振り返ってしまうのは、きっと幸せな思い出があるからだ。そうやって、幸せな過去を振り返っては、何か選択を迫られた時にこれでいいのか考え始めて前に進めなくなってしまう。でも、変わらない世界で生きる女の子はこう言う。「過去の思い出っていうのは、なくなってしまったものの思い出なの。」「幸福な生活をなくして、それはほんとうにつらいことだったと思うけど、代わりに思い出を手に入れたんだもの」幸せな思い出は、わたしたちを縛り付けると同時に、大切な思い出として支えてくれる。変わりたくないと願うほどの思い出があるから、ここまでわたしは生きてこられたのかもしれない。
変わっていくわたしと変わらない本の世界

主人公は、数年に一度隙間に落ちるように突然と小さな女の子のいる世界に旅をしてまた突然現実に戻るようになる。女の子は小さな女の子のまま変わらない世界で生きて、主人公は結婚、出産と歳を重ねていった。小さな女の子は主人公との旅を通して「手に入れたものがあるの」とこう言う、「過去の思い出よ」と。本の世界は、小さな女の子がいる世界のように変わることのない世界だ。だから、私は変わっていくかもしれないけど、本を開けば変わらない世界にまた出会える。好きって何だろうって悩んだこと、チグハグな感情にモヤモヤしたこと、今度同じ本を読んだ時にわたしは何を思うのだろう。これからどんな気持ちでどんな本を読んでいくのだろう。

今回紹介した本
『すきまのおともだちたち』/江國香織/集英社文庫

あとがき
わたしは、自分の気持ちを人に伝えることがあまり得意ではありません。だからこそ、書店に足を運び、つらいときや言葉がうまく出てこないときには、自分の気持ちに寄り添ってくれそうな一冊を探します。そうして出会った本を、ゆっくりと読み進めていくのです。この連載では、そんな一冊を毎月選んで、そのときどきのわたしの悩みや気づき、友だちの悩みに答えるような気持ちで綴ってきました。
自分の気持ちをうまく言葉にできないぶん、わたしは本を通して感情を整理してきました。そして、この連載もそんな自分なりの方法で、少しずつ自分の気持ちを未熟ながらも言葉にしていく時間だったように思います。本を読むことで、「わたしはひとりではない」と感じたり、「こんな考え方もあるのか」と気づいたり、「わたしはこういうことを思っていたんだ」と改めて知ることができます。とても狭かったわたしの世界が、本と一緒に少しずつ広がっていくように感じるのです。そんな本のすてきなところや言葉が誰かに少しでも届いてれば嬉しいです。
最後に、読んでくださった皆さま、そしてこの連載に携わってくださった全ての方々に、心より御礼申し上げます。約一年間、本当にありがとうございました。







