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人間はどこまで人間でいられるのだろう?音大であらゆる芸術表現を模索する大学生【長内椛香・19歳】

人間はどこまで人間でいられるのだろう?音大であらゆる芸術表現を模索する大学生【長内椛香・19歳】

気になる10代名鑑」の1206人目は長内椛香おさないかおるこさん(19)。東京藝術大学音楽学部の音楽環境創造科に所属しながら、音楽制作にとどまらず、映像表現から身体表現まで、多岐にわたる創作活動をおこなっています。都会と自然のはざまで暮らした経験が、創作にも影響を与えていると話す長内さんに、表現との向き合いかたから、現在の創作活動におけるマインドまでを聞きました。

長内椛香を知る5つの質問

Q1.いま、いちばん力を入れている活動は?

音から映像、身体表現まで、自然を重要なモチーフに置いて創作活動をしています。ごく身近に自然がある環境で育ってきたこともあり、人間と生物、無生物の境界が揺らぐ状態や、身体に関心があります。

昨年の4月から、東京藝術大学音楽学部の音楽環境創造科に所属しているのですが、学校でやっていることはかなり幅が広くて。たとえば、アナログシンセサイザーの使い方を学んで、実際に音楽を制作する、撮影技術を持っている友人と協力して映像を制作する、自分自身がパフォーマーとしてダンスをする、そしてそれらを展示する空間を制作するなど、本当にさまざまなんです」

 

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Q2.活動をしようと思ったきっかけは?

中学生のとき、コロナ禍で自分の時間が増え、表現と自分との向き合い方を見直したことが大きな転機だと思います。

幼少期から長年クラシックピアノを学んでいたのですが、楽譜通りの決まった音を奏でることに違和感を覚えて。もともと、絶対音感を生かして自分の好きなポップスの曲を再現する、いわゆる耳コピはしていたのですが、次第に単なるコピーではなく、自ら選択し、音を構成する表現がしたいと思うようになりました。

そこからパソコンをつかった音楽制作を始めました。パソコンで制作するのは、ポップスのようにメインのメロディーがあるわけではなく、クラシックのように譜面があるわけでもなくて。気ままに録音した環境音を使ったり、自分の声を重ねたりして、つくっていきます。つまりは、音という素材の切り貼りであり、コラージュという表現が近いかもしれません。

この音楽制作を通して、音を素材として扱う感覚と出会ったことから、音楽にとどまらず、映像や身体表現など、あらゆる創作活動へと、自分の関心が広がっていきました

Q3.どんなことをテーマに活動をおこなっていますか?

自然とそのなかで育った自身の身体を起点に、人間性の揺らぎをテーマにすることが多いです。

 『人間のからだがどこまで人間でいられるのか』という問いを軸におき、生物と無生物の境界や、進化・変態といった不可逆的な変化、そして、川や海、雨などの自然現象や水の循環に関心を持っています。また、自分自身の身体、とりわけ手の微細な動きや感覚そのものにも強い関心があり、これらのテーマを横断して制作をおこなっています。

わたしがいままで生きてきた場所は、豊かな自然に身を置きながら、東京にもすぐに行くことができるところで。ずっと自然、ずっと都会なのではなくその両方の要素を感じられる場所にいたからこそ、境界というテーマに惹かれるのかもしれません」

Q4.活動の中で、悩みがあれば教えてください。

自分が考えていることや感じていることを、正確な言葉として編み出すことに難しさを感じます。

 正直に言うと、作品や自分の感覚の全てを言葉で伝えたいとはあまり思っていないのですが、学校という場所で作品を作っている限り、伝えるという作業は必要で、重要なものだと考えています。一方で、伝える必要があるからこそ、言葉に置き換える過程で表現の核がずれてしまうのは嫌だなという気持ちが強くありますね。

大学に入ってから、思考の組み方がしっかりとしている人、そしてそれを言葉にして話すことができる人にたくさん出会いました。ご飯を食べていても、遊んでいても、やっぱり表現や創作の話に転じることが多くて。周囲の人を尊敬しているからこそ、自分の言葉の拙さが悩みです」

 

 

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Q5.将来の展望は?

これがしたい、こうなりたいから創作をするというものは明確に決まっていません。ただ、いま一番面白いと感じるのは、表現に取り組む前と後で、自分自身の意識やその表現に対する認識の変化を実感したときです。

たとえば、自分と他者の境界について考えているうちに、顔を隠すという行為に興味が湧いていって。それはつまり、自分と他者の境界を溶かす行為ではないかという発想が生まれていって、最近、仮面を用いた創作をはじめました。

そのうち、進化系統樹というものにも興味がでてきて。これは生き物の進化を樹形図で表したものなのですが、現代においても、一番下の根っこになった原核生物がわかっていないんです。それを知ったとき、他の生物と人間の間に大きな差はあるのだろうかと疑問に思うようになりました。こういった発想の系譜をたどり、原核生物を予想するという意味のパフォーマンスにも挑戦しました。

このような感じで、表現に取り組んでいるうちに、はじめは想定していなかった発想や感覚が立ち上がり、引きずられるように思考や意識が少しずつ更新されます。作品が完成したとき、出来上がったもの以上に、自分の内側が変化していることを実感して、それがとても面白いです。

いまはやりたいことをやりたいように自由にやらせてくれる場所にいるので、自分の感覚を大切に創作活動を続けていきたいと思います」

長内椛香のプロフィール

年齢:19歳
出身地:茨城県
所属:東京藝術大学音楽学部音楽環境創造科
趣味:散歩、長風呂
特技:ポジティブ思考
大切にしている言葉:なし

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Photo:Nanako Araie
Text:Manami Tanaka

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Manami Tanaka

ライター

2003年生まれ。千葉県出身。立教大学文学部日本文学専修に在学中。「エモい」という言葉に違和感を持ったことをきっかけに、古きを懐かしみ、新しきに出会うためのZINE『Kaico』の制作を始める。大学では菊池寛が描いた少女小説を研究中。2024年より、ライターとして「気になる10代名鑑」のコンテンツ制作を担当。

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