
世の中にあふれる情報から、10代が知っておくべき話題をお届けする「Steenz Breaking News」。今日は、能登半島地震から2年を迎えようとしているいま、被災地でおこなわれているアップサイクルの取り組みについてご紹介します。
能登ではじまるアップサイクルの取り組み
2026年の元旦で、能登半島地震から丸2年が経過します。ライフラインの復旧や住居の公費解体が進み、復興への道のりを着実に歩む一方、いまもおよそ2万人の被災者が仮設住宅に入居するなど、課題も多く残っています。
能登半島は輪島塗や珠洲焼など、多くの伝統工芸が息づく地域ですが、震災で貴重な品々も被害を受けました。そんな中、石川県の企業CACL(カクル)は、アップサイクルを通じて能登の伝統を未来へつなぐ取り組みをしています。今回は、同社がおこなうアップサイクルプロジェクトの中から、3つの事例にフォーカスを当てていきます。
九谷焼と珠洲焼の陶磁器片が輪島塗によってアート作品へ
ひとつ目は、能登半島地震で破損した陶磁器や九谷焼を輪島塗の技術によりアート作品へ昇華した「Rediscover Project」。当初は、輪島塗の職人の仮設工房の設置と仕事創出を目的としてスタートしたプロジェクトでした。
2024年11月から2025年3月にかけて金沢21世紀美術館で開催された「開館20周年記念 すべてのものと ダンスを踊って ―共感のエコロジー」に出展されたRediscover Projectの作品たち。
九谷焼の白磁に、輪島塗の技法で金継ぎされた壺や、破損した複数の九谷焼の壺を輪島塗の漆でつないだものなど、ユニークな作品たちが展示されました。

無数のかけらが、変幻自在に表現をなす。その姿から真の多様性を見出すことや、完璧でないと弾かれる社会の縮図に一石を投じることを狙いとしているそうです。

さまざまな背景を持つ陶磁器片でつくられたオブジェ
ふたつ目は、能登半島地震で破損した九谷焼や、製造工程で規格外となった白磁など、さまざまな背景を持つ陶磁器片を使用してつくられたと言うオブジェ「KAKERA 5」。
赤・青・黄・紫・紺青の九谷五彩と呼ばれる色合いが特徴的な九谷焼のかけらを、ひとつひとつのピースを生かすことを意識して制作されたそう。

石川県のホテル「ハイアット金沢」が2025年8月に開業を5周年を迎えたことを記念して制作されたもので、現在もホテルのロビーに展示されています。
割れた黒瓦の風合いを生かし混ぜ込んだ建材
能登地方の伝統的な住宅には、海沿いかつ豪雪地帯の風土に適した屋根瓦である「黒瓦」が用いられています。
能登半島地震で全壊・半壊の被害を受けた住宅のがれき類には、この黒瓦も含まれており、廃棄の道筋をたどる予定だったそう。
2025年9月、CACLと、住宅設備・建材メーカーのLIXIL、大阪関西万博でパビリオン設計を手がけた建築家の永山裕子さんがタッグを組み、粉末状に加工した黒瓦の一部をアップサイクルした建材が誕生しました。

黒瓦の表面からは想像がつかない、鮮やかなオレンジ色を生かしたマテリアルは、今後さまざまな建築物に使用される予定となっています。
アップサイクルから能登に想いを馳せて
多くの尊い命が震災によって失われ、豊かな伝統や文化も被害を受けました。その後、度重なる豪雨による複合的な被害も発生しており、復興は道半ばです。ボランティアなど直接的な支援だけでなく、農産物や工芸品を買うこと、観光など、被災地の支援には多様な方法があります。まだまだ知られていない地元企業の取り組みを知ることもまた、能登の復興応援につながるでしょう。
Text:kagari






