Teen's Snapshots

心に触れる光と時間を求める、旅の途中。岩井俊二作品にあこがれ、映画監督を志す高校生【さきょう・17歳】

心に触れる光と時間を求める、旅の途中。岩井俊二作品にあこがれ、映画監督を志す高校生【さきょう・17歳】

「気になる10代名鑑」の1159人目は、さきょうさ(17)。映画監督を志し、映画のような光を追いかけて、写真と映像で世界の輪郭をすくいとっています。夏目漱石の『こころ』に登場する“自然の自分”を探し続けながら、心に触れる瞬間を作品づくりに心がけるさきょうさんに、活動を始めたきっかけや将来の展望などあれこれ聞いてみました。

さきょうを知る5つの質問

Q1. いま、力を入れていることは?

映画監督を志していて、いまは写真や映像制作を中心に、文章や詩を編むこともあります。

まだ多くはないものの、作品を少しずつかたちにしていて。制作というより、いつも『映画的な時間や空間』そのものを追いかけて走り回っている感覚に近いです。

映画監督は、衝動買いして観た岩井俊二監督の作品がきっかけで。DVDを再生した瞬間から、画面に映る空気そのものに心をつかまれました。物語でも技巧でもなく、時間が滲み出すような映像に触れ、自分もこんな世界を撮りたいと思ったんです。

その気持ちを確かめるように、いまもカメラを片手に撮影を重ね、創作の種を集め続けています」

 

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Q2. 活動を始めたきっかけは?

クリエイティブスクール・Gaku の写真の授業『自分の見方をみつける』です。

富士フイルムの X100V を使ったとき、ファインダー越しに見える世界が驚くほど心地よく感じられて。三日坊主のわたしでもシャッターを切るだけで理想の景色が生まれるその仕組みは、まるでドラえもんの便利道具のようでした。

当時中学2年生のころは、毎日が全部グレーに感じられていて。実は幼いころにイギリスや上海に住んでいたこともあって、長くひとつの場所に留まる日々は息苦しく感じられたのだと思います。

そんなとき、学校で名前の似ている女の子に出会い、彼女が Gaku を紹介してくれました。そこで出会った同世代の創作意欲に触発され、『わたしもなにか生み出したい』という気持ちがじゅわーっと湧き上がってきて、気づけば創作活動に踏み出していました」

Q3.活動するうえで、大切にしていることは?

まだ具体的なテーマを定めずに『ピュアネス』を追い求めています。夏目漱石の『こころ』に出てくる“自然の自分”という言葉がしっくりきていて、まるで玉ねぎの皮を一枚ずつむくように、自分の内側にある本質を探り続けています。

日々の中で、文学的な、つまりは科学では説明できないような“奇跡めいた時間”に注目するようにしています。法則性のないふっと現れる感情や景色、そこに宿る小さな違和感や煌めきを拾い集めることで、自分の“自然”にぴたっとつながる思考を選び取りたいんです。

また、自分のビジュアル表現を一度ほどき、伝えたい本質がそのまま映像として立ち上がる状態を目指しています。カメラとは、操作する道具ではなく、感覚を預け合える相棒でありたい。日常に紛れた小さな違和感に気づくことで、世界の中にある奇跡や神秘を感じてもらえるような作品を届けたいと思っています。そしていつかは、チームで一本の映画をつくりたくて。その日に向けて、“自然の自分”を探しながら、考え続けています」

Q4. 活動をする中でつらかったことは?

『どれだけ奇抜で目立って好まれるアイデアを出せるのか』と、ついかっこつけてしまう自分がいて、そのたびに違和感を覚えます。喉に釣り針が引っかかっていて、時間ごと引っ張られるような、感覚が閉じていくような感覚です。

見えていたものが見えなくなり、話せていた言葉が急に話せなくなってしまって。写真を撮っていても、つい構図ばかり気にしてしまって。

だから最近は『自分のテンポ』を取り戻すことを意識しています。鼻歌を歌うみたいに、ゆったりとファインダーを覗いてシャッターを切る。被写体がふっといい顔をする瞬間や、光が寄り添う瞬間──そのとき、自分の中にずっと浮かんでいた映像が重なり、『あ、これだ』と思えます」

Q5. 将来の展望は?

将来は映画監督になりたいです。『黄色いレインコートと赤い長靴がよく似合う監督』、そんな存在になれたらいいなと思っています。

わたしがつくりたいのは『時間』です。『歪でも、不器用でも、たしかにここにある愛くるしい世界の記録を残したい』という気持ちはずっとあって、それを共有したいという思いが原動力になっています。 わたし自身、映画を観て衝撃を受けた瞬間に、『あ、生きている』と強く実感したことがあって、その感覚をほかの人にも味わってほしいと思っています。

そしてわたしは、これまでいろんな場所に住んだり旅をしたりしてきましたが、その土地の文化をつくっている人たちの『DNAのようなものを吸収している』感覚があります。全部を取り込むというより、『育ってきた環境で形づくられた自分のフィルターを通して呼吸する』ように、それらが作品に染みこんでいけばいいなと思っています」

さきょうのプロフィール

年齢:17歳
出身地:東京都
所属:Gaku
趣味:散歩道開拓
特技:餃子包み
大切にしている言葉:I went to this temple today… and there were these monks and they were chanting. And I didn’t feel anything, you know? 

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Photo:Nanako Araie
Text:Honori Kukimoto

 

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Honori Kukimoto

ライター

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